六十三 駅前キャンパス、交通至便
「本日は朝早くからお集まりいただき誠にありがとうございます。このたび我が学園は神の恵み事業の…」
キノーワ南駅前の空き地で、嵐学園理事長の挨拶が始まる。小さな踏み台の上で、例によって長々としゃべる姿は、まるでどこかのリサイタル大好き小学生のようで微笑ましい。一応、恐らくリサイタルよりはマシだろうし。
これからいよいよ、嵐学園第二キャンパスを建設する。
建設にかかる時間は、箱だけなら十分程度。内装をすべて完成させるのに半日を見込んでいる。冗談のような数字だが、神が創造するのだからこれでも遅いのだ。
「なぁコーイチ、イズミお嬢様はお越しになられてないのか?」
「イズミは授業中だ。というかカワモは配置に戻れよ」
「まだいいだろ。ただの空き地で騒ぐ奴はいねーぞ」
同僚の衛兵たちも駆り出されている。高速鉄道の時は不意打ちで建設したので、ワースさんが大慌てで人員を派遣し、後で俺は叱られた。
ちなみに、既に馬車鉄道開業で城門も完成していたわけで、掘っ立て小屋の衛兵詰所も当然存在している。ただし人員不足につき、西門と南門からシフトを組んで派遣している状態。そんな場所で大騒ぎとなれば、対応できるはずもなかった。
ということで、制服姿も凛々しいカワモ大先生は、野次馬整理のために臨時に派遣された。内部の公開はしないので、箱が完成して一時間もすれば騒ぎも落ちつくはず。
「イズミには、お嬢様と呼ばないよう念を押されていた気がするが」
「い、いや、それは確かにそうだがなぁコーイチ、本物なんだ、イズミ様は本物のお嬢様なんだからなぁ」
「カワモの口から、今度は本物だったと何度聞かされたことか。数々の思い出が走馬灯のように蘇る…」
「うるせぇコーイチ、だいたい走馬灯って何だ? 何かすごいのか?」
「ラヒータの雑貨屋でたまに見かける程度にすごいし、そろそろ客が騒ぎ出したから頼む」
俺の記憶回復の場で、カワモはイズミと対面した。そしてその後、二人は隠れて逢瀬を続け…るはずはなかったが、何度かすれ違って挨拶は交わしたらしい。箱入り娘のイズミが学生になって、外を出歩くようになった成果と言うべきか、悪い虫に捕まる予兆と考えるかは難しい判断だな。
ついでなので最新情報を記しておくと、カワモは昨日も新たな女性開拓のため戦っていたらしい。日本でいうところの合コンというやつだ。その成果についてはあえて言うまい。
カワモはこれでも将来の幹部候補だし、そんなに悪い物件でもないと思う。ただし宵越しの金は持たぬ主義、その上女漁りで悪名を轟かせているので、そろそろ余所の町で探した方がいいんじゃないかな。余計なお世話か。
「弘一、数字の読み上げよろしく。間違ったら建物に反映されるから気をつけてよ」
「いくら何でも責任重大過ぎるだろ、それ」
第二キャンパスは、鉄筋コンクリート造、地上五階地下一階の建造物が二棟で構成される。他に三階建地下書庫付きの図書館棟を建設。奥には公園を造成予定だが、そっちはまた後日。
神の恵み事業がいろいろ動き出して、とにかく教室も研究室も足りない。なので建設後すぐに利用可能となるよう、一日で中身も作る。
あり得ない計画だが、それこそが神の恵みというもの。なお、鉄道と違ってこの建築物を他国に造る予定はない。なのでこの場には一応、各国の技術者も集まっている。
設計には約一ヶ月を要している。
ここに造ろうとしているのは、日本で最近増えた駅前キャンパスのビルと、一般的な大学の折衷みたいなもの。それらのイメージは美由紀と俺しか持ち合わせていないので、大雑把なデザインは二人で考えた。
一方で、利用する学園側は、必要な教室や研究室の数、広さ、設備などを検討した。それは新キャンパスの設計だけではなく、現学園のどこを移転させ、移転後はどう活用するかという問題も含む。
そして新キャンパスは、現状では交通至便どころか町外れの不便な立地だが、設備はこの世界で圧倒的な最先端になる。教職員たちは、自分の管轄を新キャンパスに移すよう働きかけをしたので、一時は収拾がつかない状況になったという。
「縄張りは読み上げなくとも問題ないんだよな? 美由紀」
「まぁ、そこは図面があればできるから」
俺が手にしているのは、図面とメモ書き。
図面は、管理者と美由紀が共同で作った世界地図の上に記されている。この世界に人工衛星を打ち上げる技術はないが、管理者の能力という超常の力を活用すれば、正確な地図をあっという間に作成できる。
余りに正確なので、仮に人々に見せても地図だと認識されない可能性が高い。何せこの星には伊能忠敬はいないし、日本列島が芋虫みたいな空間認識レベルだからな。
「じゃあ…、神さま、お願いしまーす」
やる気のない声でお願いした美由紀。あくまで美由紀は神の代行者という表向きなので、頼んで働いてもらわなければならない。
俺は横で図面を広げながら、こんな大根役者でごまかせるものか…としかめっ面になったが、集まった観衆――野次馬――からは大歓声が起きた。無茶苦茶だ。
真後ろから聞き慣れた声の叫びも聞こえたから、余計に腹が立つ。カワモ、貴様はこれが神を敬う者に見えるのか。
見えるんだろうなぁ。
普段なら結界で遮断する魅了の気を、代行者の時の美由紀は少しだけ漏らしている。役目を果たすためには仕方がないけど、これでは催眠で操っているのと変わりないぞ。
「弘一。おかしな箇所があったらすぐに言ってね」
「あ、ああ」
急に真剣な表情に戻るなよ。まぁ美由紀だって、自分が人類の常識に反することをするのは分かっているし、違和感はあるんだろう。
俺はその違和感だけは共有できるから、すぐ側にいなければならない。
美由紀は図面を頭に入れて、目の前の空き地に位置を確定させる。そして地中に基礎を造り、次いで地上部の箱を造る。
無声映画を逆再生でもしたかのように、鉄筋コンクリートが地面から生えていく。
そしてわずか一分で、何の飾りもなく、それどころか窓も出入り口もない文字通りの箱が出来上がった。
「すげぇ……」
隣でカワモが漏らした言葉。野次馬も一斉にどよめくが、大騒ぎという感じはない。余りに常軌を逸しているためだろう。
既に何度も側で目撃している俺でも、この超常の力には慣れない。というより、これに慣れるのはまずい気がする。
「じゃあ頼むぜカワモ。何かが落ちて来ることはないけど、触ると危険だと伝えてくれ」
「危険なのか!?」
「いや…、たぶん問題ないが、急に壁が壁じゃなくなったりするからな」
「うへぇ。神さまはすごいな」
「すごいぞ。その辺に転がっているだろうから拝んでおけよ。食堂のおばちゃんのような女性が欲しいと」
「コーイチ、貴様って奴は!」
あの世間知らずの管理者にお願いなんて恐ろしいことはやめておけ、と思うが。
だいたい、カワモはちょっとだけ関係者だし、管理者を知らないわけじゃない。だから、本当に願いが聞き届けられてしまう可能性がある。そして、あのおばちゃんはカワモのように何でもオープンな男にふさわしい。噂をまき散らすのが趣味だからなぁ。
ともあれ、美由紀は神にお願いするスタイルをとっているので、皆が目撃しているのは神の奇跡ということになる。
ただし、目の前で音頭を取っているのは美由紀だから、その姿を拝み出す観衆もいる。
残念ながら、既にキノーワで「女神」と言えば美由紀なのだ。神の代行者という「事実」を知っていても、これだけの奇跡を目の当りにすれば拝んでしまうのは仕方ないし、本人も諦めているようだ。
「正面入口はこの辺。幅は300」
「はーい。神さまよろしくー」
「もっとそれっぽく言えよ」
「貴方にしか聞こえてないしー」
出入り口はないと作業ができないので、図面に従って扉を造っていく。
第一棟の正面玄関は、高速鉄道の駅入口と向かい合う形。現時点ではかなり離れていて、間は空き地になっている。
高速鉄道の駅は階段があるだけで、高架下はただの空き地になっている。公団A線の無人駅そのものだ。駅舎が必要だったら自分たちで用意しろという神の思し召しで、現状は試運転しかしていないから、大半は馬車鉄道の荷物置き場に活用されている。屋根があるのでいろいろ使い勝手は良いらしい。
駅前広場、広い道路、学園の門塀。門塀は今日のうちに作るが、他は今作っても仕方がない。
そんな状況だが、駅舎正面の一等地を学校が占めていいのだろうかという疑念がないわけではない。というより、図面がリアルになるに連れて、その思いは強まっている。早い者勝ちなんだけどさ。
「俺はもう中に入るから、後は頼んだぜ、カワモ」
「おう任せとけ!」
外側ができたので、後は学園関係者と俺たちが内部で作業することになる。
扉は内側から鍵をかけるが、外観は見学自由。昼ぐらいまではカワモたちに人員整理をやってもらう。
まぁ今のところは、思ったほどの混乱は起きていない。
その瞬間は奇跡でも、出来上がってしまえばただの箱。動き出したり火や水を噴いたりはしないので、集まった野次馬の大半は撤収したようだ。
もちろん、建築の瞬間に立ち会えなかった観衆もやって来る。人が減った空き地をよく見ると、ちゃんと屋台が並んで営業していた。ああ、ゴーシの超特急焼きも平然と売られていたさ。
建物内部は、図面に従って壁が造られている。
一応、図面の作成にはイデワの建築専門家も関わっている。それに加えて、書店の入口に並べてあった日本の大学案内のパンフなども参考にした。俺たちのわずかな大学生時代の記憶も、もちろんフル活用だ。
俺たちは一階から順番に、図面を確認しながら壁に出入り口の扉を開けていく。窓も付けていく。この辺の作業は、図面に書いてあったわけだから箱と同時に出来たのだが、慎重を期して一応は現物を確認してから行っている。
……………。
「学校だな、まるで」
「そうね」
「どうせなら通いたかったな」
「そうね…」
学園関係者のどよめきを背中で聞きながら、俺たちは俺たちで感慨に浸る。
一年半で強制退学となった俺と、病気で休学した美由紀。二人でキャンパスに通った記憶は半年しかないから、お気楽な学生生活への憧れはある。
いや、この世界でそんな憧れを感じる機会はなかった。これからもないと思っていたけれど、キャンパスが用意され、親しいイズミは学生となり、俺たちはまさかの教員側。いろいろ複雑な思いはある。
「貴方と一緒にキャンパスを歩けるんだから、それで十分よ。弘一」
「お、おう」
………いきなり言われても、気のきいた返しなんて出来ないぞ。眩暈がするほどの女神の笑顔も。今は仕事中じゃないか。
一時間ほどかけて、第一棟の内装を造った。
机や椅子などの備品は、建物の一部という扱いで用意したが、引っ越し作業は学園にやってもらう。神さまの担当はここまでだ。
なお、この星で初の冷暖房完備。全館一括管理で各教室には吹き出し口を設けた。ボイラーと旧式クーラーという一昔前の組み合わせだが、この星では非常識な設備と言っていい。
ちなみに電気は、高速鉄道用に設けた変電施設から引いた。変電施設と言っても、現状は美由紀の魔力を電力に転換しているだけのダミーだけど。
上下水道はもちろん完備で、男女別の水洗トイレもあるが、シャワー洗浄はなし。理由は簡単で、付けると近隣からトイレを借りに殺到するため。
第二キャンパスは、一応は入口で立ち入りをチェックするが、図書館には一般住民の入室も認める方向になっている。恐らく、完全に出入りをコントロールするのは無理だろう。
まぁ、一般人が立ち入れる学校というのが、この星では前代未聞。たぶん、トラブル続出になると思うけど、それも含めて経験ってやつだ。
「おうコーイチ、終わったのか?」
「一応聞くが、まだ仕事中だよな、カワモ」
「当たり前だろ?」
正面玄関の前で、警備役が堂々と食事中。世界初の開放型キャンパスの行方は前途多難だな。
なお、衛兵が門番をしながら飯を食うことは認められていない。上司がいない上に、ほぼ何もやることがなかったカワモは、周辺視察と称して屋台を廻り、毒味と称して食べまくっていた。それだけの話である。
「そろそろ時間か。コーイチは後で事務所に顔出すのか?」
「夕方にな。お前の素晴らしい勤務態度を報告しといてやるよ」
「ちょちょ、ちょっと待てコーイチ、よし、太っ腹なお兄さんがおごってやる!」
「カワモさん、私はあの超特急焼きが欲しいわー」
「め、女神様! 今すぐお持ちします!」
…………嫌がらせかよ。
結局、俺たちはカワモから安い賄賂を受け取って、不正を握りつぶした。というか、俺にとってはむしろ正義の心が奮い立つような賄賂だったが、美由紀がうまそうに食べてしまったので有耶無耶に。
0系新幹線のデフォルメせんべいは、今日の売上も上々だったそうだ。そして、誤った金型を用意した当人は、ボリボリ音を立てながら何も感じていなかった。何だろうな、将来これが二人のすれ違いに発展したりするかも知れないな。
たぶん、しないけど。
インチキせんべいを食べる美由紀の姿が、悲しいことに可愛いのだ。毎日見ているのに見惚れてしまうぐらい。
午後。
午前中に第二棟の内装も終わり、キャンパスを囲む塀も造った。塀はモンスター除けを兼ねているので、それなりの高さにしたが、半分はコンクリート、残りは鉄格子で中が見える形にした。
この世界の学校は、背丈を超える石積みの上に有刺鉄線ぐらいが普通だから、かなり緩い。学園関係者からは、泥棒が心配との声も上がったが、神の意向だと美由紀が告げたので一応はこの形になった。
実際には開放型キャンパスにした時点で、泥棒なんて入り放題。というか、壁の上に有刺鉄線を引いたところで、防犯上のメリットはどれほどあるのだろうか。
少なくとも、イデワの学校で起きる盗難事件は、大半が内部犯行か出入り業者によるもの。牢獄のような見た目を多少緩和してもいいじゃないか。
「こんな感じですが、ボネツさん」
「ひ、広いですね…」
「最初ですから」
嵐学園図書室のボネツさんを呼んで、出来たばかりの図書館を見学する。髪の長い白衣の女性で、背丈はケサキさんと同じぐらい。四十歳既婚だと、なぜか美由紀に教えられた。浮気しないように釘を差したのだろう。するかよ。
「地下もあるのですか? 明かりは…」
「まさかの照明付きですよ。神さまは太っ腹ですねー」
「ええ………」
ちなみに、照明はすべて白熱球なので、決して明るいとは言いがたい。どうせオーパーツになるんだからLEDにしてしまおうと美由紀は言ったけど、持ち帰った書籍のどこかには書かれている以上、オーパーツとは呼べないわけで。
普通に絶句するボネツさんを、時間もないのでさっさと案内する。
なお、嵐学園には女性の教職員がそれなりにいるが、これは異例のことだと一応断わっておく。縁故採用で娘を働かせる話はあるけど、学園の女性陣は能力で選ばれている。たぶん創立者の太郎兵衛さんは、無意識に転移前の価値観を持ち込んだのだろう。
図書館は、本当にバカでかい。土地は余っているし、建設費用がかからないから、ケチケチしなかったわけだが、この星ではあり得ない大きさだ。
十万冊以上の蔵書が可能。うち、開架だけで二万冊。さらに閲覧用のスペースもたっぷりとってある。まさしく前代未聞なので、ボネツさんはほとんど声も出なかった。
「お、収める本がありませんが」
「それは仕方ないです」
「神さまからは…」
「専用の閉架書庫にまとめます。五千冊ぐらいはあるそうです」
「は、はぁ」
嵐学園の図書室の蔵書も五千冊ほど。まだまだ紙が貴重な世界では、これでも決して少ない方ではない。
で、その五千冊がここに移るかと言えば、実際に移せるのは三千冊程度。向こうで必要な本は移すわけにもいかないので、これがせいぜいだという。
しかも三千冊の大半は、向こうで必要とされていない本、つまり滅多に読む人もいない古びたものばかり。まぁそれは、人々が手軽に本を読む環境にないのだから、予想されたことだった。
「当面は一階だけを開ければいいと思います。あとはそちらで打ち合わせしていただければ…」
「神さまからいただいたものは、一切見せられないのでしょうか?」
「その辺は交渉してみます。お勉強ができるような何かは用意します」
「よ、よろしくお願いします。横代様」
俺たちが持ち帰った日本語書籍のうち、千冊程度は開架に並べる予定。もちろん、能力で複製を作った上でということになる。図書室から移す三千冊は、すべて複製を作って開架。十万冊所蔵可能な施設を、蔵書八千冊、開架四千冊で開くわけだ。
日本語書籍は、いずれエラン語に翻訳していくだろうが、その作業は当面始まらない。俺たちではなく、この世界の人にやって欲しいので、日本語の授業次第という形。日本語書籍は、とりあえず日本語の自主学習をする人向けに公開する。
ついでに、簡単なエラン語と日本語の学習プリントを用意する。こちらは持ち帰り自由で、あえて質の悪い藁半紙を使う。
あ。マンガは公開しないぞ。
それは低俗だとかいう理由ではない。異世界の文化がダイレクトに伝わるような文献を、広めて良いのか判断がつかないからだ。
―――――と。
そんな程度で図書館がうまく行くはずはない。
日本語以前に、この町の半数はエラン語の読み書きが全くできない。一部の特権階級以外は、まともに文字を学ぶ機会もないのだから当然だ。だから、この世界で作られた書籍だろうと日本から持ち帰ったものだろうと、等しく読めないことになる。
そんな状況を打破してもらうために、神の恵み事業に小学校開設をねじ込んだ。
小学校の建物は、第二キャンパスのような目新しさはなく、この世界の建築水準で作られた。そして、教える内容はイズミが家庭教師から習ったものを元にした。つまり、神の恵みと言いつつ日本の要素は乏しい。
唯一の日本由来は、同じ年齢なら身分を問わず入学できるという制度だ。「子ども」という身分が明確に存在せず、五歳ぐらいから親の手伝いをするこの世界では画期的…なのだが、画期的過ぎて町の評価はイマイチらしい。
学校に通うとどんなメリットがあるのか。それを今すぐ提示することは難しいわけで。無茶な実験なのは分かっているし、きっと失敗するだろう。
始めて失敗したという実績の中で、何か役に立つことが起こればいい。どうせ箱モノはただで造らせたんだし。
「一週間後には開校式だそうよ。もう夕方には引っ越し第一弾がやって来るし、衛兵さんには周囲の警戒をしてほしいわ」
「護衛はつくんだろ? この世界で、まさか貴重品を護衛なしで運ぶなんてことは」
「もちろんアラカ所長に手配済みよ。残念ながらゴーシさんは選ばれなかったようだけど」
「これ以上ない朗報だ」
そういえば、冒険職の名称変更が検討されているらしい。はっきり言って、冒険と呼べることをしている人はいないのだから当然なのだが、かつて未開の地に分け入った歴史を残したいという主張もあって、すぐに決まる感じではなさそうだ。
そして開校式は、神の恵み事業参加国の関係者も集まって派手にやるようだ。第一棟の正面玄関の鍵を開ける式をやったり、各国一本ずつの植樹をするそうだ。どうせなら餅播きでもすればいいのに。まぁ餅という食べ物がないけど。
※なろうの異世界モノの多くが、家父長制の男女不平等な社会なのは周知の通り。その社会構造を素直に適用すれば、社会進出している女性など数えるほどしかいない上に、女性の仕事という固定化もつきまとうはずだが、なぜか女性役員の登用だけは進んでいるのも周知の通り。
その辺のご都合主義とは一線を画したいけど、道のりは厳しいなぁ。




