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女神は俺を奪還する  作者: UDG
特別編:美由紀の過去
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二 私はミユキ

 プレイヤー「ミユキ」。それは基本無料のスマホアプリ「願いの楽園」で、小牧弘一が操っていたプレイヤーキャラだ。

 ステイタスは、レベルが上限の300。武技と魔法のスキルはすべて解放済みで、これもレベルは最大。ついでに必要のない装備も沢山持っている。

 そう。何もかも不要で、ただのオーバースペック。


 「願いの楽園」は、まるで本物のようにリアルな異世界をぶらぶらするのが目的で、通常の遊び方ではバトルそのものの機会がない。

 にも関わらず、他のゲームのようなレベルやスキルの要素が存在している。だからモンスターのいる洞窟なんかも用意されている。

 ただし、モンスターに出くわしても戦いは回避できるし、はっきり言ってものすごく弱い。何もしないでぶらぶら歩いていると、いつの間にかレベル30ぐらいにはなるけど、それで何の問題もなく勝てる。レベル100を超えるプレイヤーは、よほどの物好き。ましてカンストさせるなんて正気の沙汰じゃないよ、弘一。


 ちなみに、このアプリでは最初はマップの一部しか開放されていない。それ以外の場所に行くためには、ある程度の期間ログインすればいい。また、たまに開催されるイベントでも、マップを拡げるためのアイテムが配布される。もちろん、課金すれば時間短縮できるので、恐らく課金者の大半はマップ開放を目的としていた。

 ところが、弘一はなんと、装備にも課金していた。またスキル開放にも使っていた。

 ……なんの役にも立たない装備やスキルに、有料のものは確かにあった。普通のゲームなら、そこに課金しても不思議ではないけど、これは戦闘自体があってないようなものだから、手に入れても使う機会がない。

 そして、さらに致命的な欠陥は、このアプリにはアバターというものが事実上存在しなかったこと。せっかく手に入れた武器を装備しても、装備一覧に名前が載るだけ。使っている様子すら見ることができなかった。


 プレイヤーのミユキは、弘一がそのように名前を入力したから、常に画面の左上に表示されていた。しかし、それだけだ。レベルは表示されないし、顔アイコンすらなし。いつの時代のアプリだと呆れるしかない。

 設定画面では、プロフィールを文字で記すことができた。字数制限はなく、書き放題。ただし、それを書いても書かなくても、ゲームには何の影響もない。他のプレイヤーがそれを読む機会も皆無。

 実際、大半のプレイヤーのプロフィールは「ここにプロフィールを書こう」のままだったらしい。


 いったい小牧弘一は、そんな課金しがいのない、育てがいのないゲームで何をしようと考えたのか? 私と同じ名前をつけたキャラに、何をさせたかったのか?

 本人にそれを問い詰めたいけれど、今の私にその術はない。

 彼が育てたキャラに間借りしている今の私は、自分が置かれた状況すら何も理解できていないから。


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