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九十七

「じゃあ、やくそくっ」

「うん。約束ね」


 小指を立てて手を差し出すと、マリーちゃんは不思議そうに頭を僅かに傾ける。


「なに?」

「これはね、ボクの国で約束をする時の儀式なんだ」


 マリーちゃんの小さな手の平を取って、小指と小指を組み合わせた。


「こうして小指同士を合わせて、呪文を唱える。ゆーびきりげんまん、嘘吐いたら針千本のーます。指きった」


 幼い頃、誰しもがやった事があるであろう約束の歌。歌を終えると同時に、小指同士が離れる。マリーちゃんは小指を立てたまま、不思議そうにソレを見ていた。


「これが約束の儀式だよ」

「うんっ!」


 ちっちゃな手の平をギュッと握り締めて、マリーちゃんは最高の笑顔で頷いた。


「さ、それでは戻りましょう」

「うんっ」


 時折振り返って手を振るマリーちゃん。姿が見えなくなるまでそれに応えていた。


「ふう。子供って元気だからちょっと疲れたね」

「宜しかったのですか? あの様な約束をしてしまって」

「んまあ、お屋敷から出なければ問題は無いでしょ」

「それはまあ、そうですが……」

「そういえば、マリーちゃんってどなたのご息女さんなの?」

「……あの御方の本当の名前は、マリエッタ=アリエス=ティアリム様。(かん)一位……つまりは国王陛下の御息女であらせられます」


 …………へ?


「お、じょ?」


 リリーカさんがコクリ。と頷くと同時に、オジサマ達へのお土産がドサリ。と地に落ちた――




 『あ』。それは、五十音の一番最初の文字であり、現代語の五母音の一つ。そして今現在、私の頭の中を埋め尽くしている文字でもある。ソコに入りきれなかったモノは、今もなお口から漏れ出していた。


「リリー、カナちゃんどうかしたの? 今日はちょっと壊れているみたいだけど」

「お姉様は、マリエッタ王女を王族と知らずに接してしまったのですわお母様」

「あらあらまあまあ、それは大変ねぇ」


 おばさまは完全に他人事だ。


「ね、ねぇリリーカさんっ! 私、どうなっちゃうのっ!? 市中引き回しっ? ハラキリっ? スシゲイシャっ?!」


 リリーカさんの肩を掴んでカックンカックンと揺さぶる。


「お、落ち着いてくださいましお姉様っ。仰っている意味が分かりませんわっ」

「そんな、声が認識出来なかった時の様な事言わないでっ」

「と、取り敢えず落ち着いて下さい。話はそれからですっ」

「リリーカさん知ってたのに、何で教えてくれなかったのっ」

「そ、それは。その……」


 リリーカさんは私からスッと目を逸らした。


「あの時口止めされてしまいましたから……」

「あの時……?」


 食後のデザートを頬張る王女と共に、何かを言いかけて視線を逸らしたリリーカさんの姿が思い浮かんだ。

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