表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/235

九十二

 中層と下層とを隔てる城壁を抜けた途端に、人の数が桁違いに増える。豊穣祭も半分を過ぎたが、噂を聞き付けた吟遊詩人や商人達等が続々と集まる頃で、これからがピークを迎えるのだという。


「わぁ、ひとがいっぱぁい」


 目をキラキラと輝かせ、マリーちゃんは右へ左へと忙しそうに首を振っている。一瞬動きが止まるその先に、食べ物屋さんがあるのは気の所為では無いだろう。


「さて、何処へ行きたい?」

「んーとねぇ……マリー、サーカスみたいっ」

「サーカス……?」

「サーカス一座は、ここからですと東側の方になると思います」

「東側……ね。じゃあ、マリーちゃん――」


 柔らかくて仄かに温かい小さな手の平が、私の右手をギュッと握り締める。迷子にならない様に……と言うつもりだったけれど、この()はちゃんと分かっている。賢い子だなぁ。


「お姉ちゃんも」

「え……? あ、はい」


 一瞬躊躇いをみせたリリーカさんも、差し伸べられたマリーちゃんの手を握る。こうして私達はサーカス一座へと向かった――




「なんかさ、こうしていると夫婦の様に見えるよね」

「え? ええ、そうですわね」


 午前中とはまるで別人と思える程、リリーカさんの反応は鈍い。鈍いというか、何かを警戒している? でも、一体何を……?


「ふーふ? お兄ちゃん、お姉ちゃんとふーふなの?」

「んーん、まだだよ。でも、将来はふーふになるんだ。ね、リリーカ」

「カーン様。矢張り(わたくし)はマリーさんをお帰しになる方が宜しいと思いますわ」

「えーっ、マリー嫌ぁ」


 リリーカさんの言葉に、マリーちゃんは頬をぷっくりと膨らませてソッポを向いた。


「まあまあ、折角ここまで来たんだし、サーカスくらいは見ていこうよ」

「……仕方ありませんわね」

「やったぁっ、お姉ちゃん大好きぃ」

「良いですか。サーカスだけで御座いますからね。それを見られたらお戻りになられて下さいまし」

「うんっ」


 リリーカさんの言葉遣いが気にはなったが、マリーちゃんが見せた過去最大級の破壊力を持った笑顔で、そんな考えは吹き飛んだ――




 広い敷地に設営された大きなテント。周囲に置かれた引き手の居ない荷馬車。身の丈程の大きな球に乗り、何本もの短剣を宙に舞わせているジャグラー。そして、ポッカリ開いた入り口に向かうヒトの群れ。私の知っているサーカスの風景がここにあった――


 ってか、人多っ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ