九十一
今私の膝には、デザートを夢中で頬張る美少女が座っていた。触れたら気持ち良さそうなサラサラのストロベリーブロンドが、一噛み毎にゆらゆら。と揺れている。髪をツインテールに束ねた子供で歳は六歳くらい。背丈はフレッドさんの腰くらい。この娘が彼が探していた子供で間違いないだろう。リリーカさんは見掛けたら衛兵詰所に連れてゆく。と言っていたが、さてどうしたものか。
一心不乱にデザートを口に運んでいる少女からリリーカさんに視線を移すと、そのリリーカさんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔で少女を見ていた。
「どうかしたの? リリーカさん」
「あ、あなたは――」
そう言い掛けて、リリーカさんは口を噤む。一瞬だけ少女の動きが止まった様に思えたけれど、気の所為だろうか?
「何? どうかしたの?」
「い、いえ。何でもありませんわ」
視線を逸しながら言われても、何かあるとしか思えないんだけど?
「んはぁ、美味しかったぁ」
デザートを完食した少女は私のお腹を背凭れ代わりにしながら、満足そうにお腹を擦っていた。
「ああ、ホラ。口の周りがクリームだらけだよ」
テーブルナプキンを手に取って少女の口を拭いてやると、満面の笑顔を私に向けた。
「有難う。お兄ちゃん」
向日葵の様な笑顔のリリーカさんもそうだけど、この娘の笑顔も破壊力が半端ない。さっきからギュッと抱き締めたい衝動を必死に抑えている自分がいる。
「ね、ねえお嬢ちゃん。アナタのお名前は?」
「マリーはねぇ、マリーって言うの」
「何処から来たの?」
「んーと、あっちぃ」
その一挙手一投足毎に、ギュッとしたい衝動が湧き上がる。可愛い、可愛過ぎるっ。
「ねぇリリーカさん、フレッドさんが探していたのはこの娘だよね?」
「え? え、ええ。そうかもしれませんわね」
かもって。どう足掻いてもこの娘でしょうに……
「マリーあの人きらぁい」
「え、そうなの? すっごく良い人だよ? カッコイイし」
「だぁってぇ、すぐにうちに帰ろーって言うんだもん。マリーもっと遊びたぁい」
遊びたいって言われてもな……
「どうしようかリリーカさん」
「どうって私に言われましても……」
なんだなんだ。一体どうしたんだ。この娘が来てからリリーカさんの様子がおかしい……
「お兄ちゃん、お姉ちゃんにお願いがあるのぉ」
「お願い……?」
「うん。マリーね、お祭りが見たいの。連れてってぇ」
その笑顔に抗う気力は、最早残されてはいなかった――




