九十
「一体どの様な理由からかは存じませんが、この事は内密に致しますよ。アユザワさん」
フレッドさんの囁きに、汗がどっと吹き出る。正体モロバレじゃん。まあ、髪を後ろに束ねてオジサマから借りた服を着ているだけだから、顔見知りならば分かっちゃうよね。
「……? フレッド様、どうかされたのですか?」
「ああ、いえね。リリーカ様を幸せにしてあげて下さい。とお伝え申しただけです。それではこれで失礼致します」
肩に手を添えて軽くお辞儀をすると、マントを翻して街の中に消えていった。
「……お姉様。ダメですわよ」
「へっ?! な、何が!?」
「フレッド様には奥様がいらっしゃいますわ。お二人の間に入る様な隙間はありませんことよ」
既に席に座っているリリーカさんが、ティーカップを手に取りながらそう言った。
「べ、別にそういう風には見てないからっ」
「そうですか。フレッド様の後ろ姿を惚けて見ていらしたもので、もしやと思っただけです」
確かにちょっとカッコイイなぁ。とは思って見てたけどっ。リリーカさんのカン。恐るべし。
席に座り直した直後、何かが私の脛に触れた。何だろう? と思って見てみるも、ソコには別に何も無い。顔をリリーカさんの方に向けると、絶妙なタイミングで脛に再び何かが触れた。これってまさか……
「あの、リリーカさん。怒っていらっしゃいます?」
「……? いえ、全然怒ってなどおりませんわ」
「え……。だってさっきから私の脚、蹴ってません?」
「お姉様。私の足はそこまで長くはありませんわよ?」
言われてみれば確かに……。リリーカさんの位置から足を届かすには、ほぼテーブルの下に潜り込まなければならない。
「じ、じゃあ、さっきから私の足に触れているのって……?」
テーブルクロスを捲り上げると、その中から何かが飛び出した。中から飛び出て来たのは、サラサラなストロベリーブロンドをサイドで束ねたツインテールの美少女だった。
「こんにちわ。カッコイイお兄ちゃん」
思わず抱き締めたくなる程の笑顔で少女はそう言った。そして、一旦テーブルの上に視線を向けてから満面の笑みを私に向ける。
「ねえお兄ちゃん。コレ食べて良い?」
「え……? ええ、いいよ。どうぞ」
「やったぁ」
大喜びした少女は私の膝の上にちょこん。と座り、テーブルに置かれた手付かずのデザートに食い付いたのだった――




