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七十九

 ガチャリ、ガチャリ、ガチャリ……。その身を甲冑に包む男達が通りを歩いていた。その数は五人。四人は頭一つ分程柄の長い槍を持ち、残りの一人は兜を被らずに素顔を晒して他の四人とはまた違った鎧を身に纏い、槍は持たずに腰に剣を帯刀していた。


 彼等が歩を進める毎に、お祭りでごった返す人の波は割れてゆく。それはまるでモーゼの十戒の様。その後を険しい顔で付いてゆく私が居た。一行が向かう先は、港にある通商ギルド『アルカイック』。私を殺し、そしてマリー先輩を殺しても尚、何食わぬ顔で仕事を続けているローザ=フリュエールを捕縛する為だった――




 あの後、辛うじて気力を取り戻した私は、開け放たれたままの牢を脱出して衛兵詰所に駆け込んだ。


「人が殺されている……? 何処でだ?」

「西の岬に在る灯台の地下牢です」


 私の言葉に衛兵さん達は顔を見合わせた。私が囚えられていた場所は灯台の地下牢。『灯台下暗し』とローザは言ったが、まんまその地下だった。


「あそこにそんなモノなど無かった筈だが……」

「でもあるんです。側面の壁に穴が開いていて、そこから入って行けるんです」

「側面に穴……? 隠し扉か!」

「どうした? 何事だ?」


 奥から姿を見せた人物に、対応に当たっていた兵士がガチャリ、ガチャリ。と姿勢を正し、この国の敬礼であろう仕草をする。その人物は、韓流ドラマの様な細かな細工が施された甲冑を身に纏い、黒髪の短髪。心做(こころな)しかその顔まで韓流俳優に見える。歳は二十代後半といった所だが、その歳で彼等が畏まる程の地位を持っているのだから、余程のやり手なのかもしれない。


「ハッ。この者からの通報で、西方岬の灯台に地下牢なる場所が在り、そこに若い女が死んでいた。との事でありますっ」 

「そうか。お嬢さん、もし良ければソコまで案内してくれないだろうか? 万が一何かがあってもこの私、フレッド=アクラブ=ウォルハイマーの名に掛けて貴女をお守りする」


 ミドルネーム持ち!? って事はこの人は貴族なのか。『アクラブ』とは一体何位の人なのか……


「わ、分かりました。ご案内します」

「有難う」


 彼が私に見せた少年の様な笑顔に、こんな状況下にも(かかわ)らず不覚にもトキメイた自分に嫌悪していた。


「よし、それではお嬢さんの案内で(くだん)の灯台を調査する。四人程私に付いてきてくれ。残りの者は警戒を怠らぬ様。いいな?」

『ハッ!』


 こうして私は、ウォルハイマーさんと共にあの忌まわしき地下牢へと再度赴く事になったのだった――

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