七十七
「うぐああぁぁっ!」
拷問が続けられていた。石畳の床の上で丸まって身を固め、或いは転がり回り、或いは頭を打ち付ける。頭の中では、早く殺して。を何度も何度も繰り返していた。
「ローザっ! 本当に死んじゃうっ!」
「良いのよ。この計画を思い付いた時から覚悟は決めていたわ。言う気が無いなら殺す。とね」
「ダメだよっ! そんな事をしたらもう、あの場所に戻れなくなるよっ!」
浴びせられていた電撃がピタリ。と止んだ。
「戻れなくなる……?」
「そうだよっ! 人を殺しておいてどんな顔でタッくんに会うの!? タッくんだってローザが人を殺したと分かったら、もう会ってくれない……よ?」
一瞬、マリー先輩の身体がビクンッと震えた。
「アンタ。タッくんの事全然分かってない。あの人は何をしても私を迎えてくれるわ。そう約束したもの。それにね、コイツを監禁している時点で、もうアウトなのよ?」
「ロ……ザ……な、なん……で?」
マリー先輩はヨロヨロと数歩後退り、ガクリ。と膝を付いて仰向けに倒れる。彼女の胸には、柄の様なモノが生えていて、ソコを中心に赤いシミが広がっていた。
「ロ……ザ……」
赤に染まった震える腕を精一杯伸ばし、ゴフリ。と液体を吐き出した直後、その腕がパタリ。と力無く床に落ちた。
「信じられない。仲間を殺すなんて……」
「ん? ああ。こうすれば分け前で揉める事も無いでしょ? それに……良い加減鬱陶しかったからねぇ」
ローザ先輩は、マリー先輩の胸から生えている柄を手に取り引き抜く。ヌラリとした赤い液体が、獣油によって灯されたランタンの炎に照らされて、銀の刃を妖しく彩った。
「アンタも知ってるでしょ? あの人を小馬鹿にした様な間延びした声。生来のモノらしいけど……まあ、そんなのどうでも良いか。そんな事よりもコッチの方が驚きよ。アレだけの電撃を浴びていながらまだ動けるなんて……ねっ!」
「うぐぅっ!」
マリー先輩に突き立てられた刃が、今度は私の手の平を穿つ。
「どう? 言う気になった……?」
「こんな事をして逃げられるとでもおもっ!」
引き抜かれた短剣は、別の手の平に突き立てられる。
「んーん、違う違う。そういう事を聞きたいんじゃないの。金鉱の入手先を教えてくれれば良いのよ? それにね、ここはぜぇーったいにバレない場所。灯台下暗しとはよく言ったモノだわ」
灯台下……? じゃあ、ここは街の中にある地下牢って事……?
「さて、時間が惜しいわ。これが最後のチャンスよ。教えてくれるわね。入手先を……」
狂気を含んだ濁りきった二つの目が、凶器を振りかざして私を見下ろしていた――




