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七十

「またのご来店をお持ち申し上げております」


 手の平を肩に添えて恭しくお辞儀をする店員に背を向けて、私達は歩き出した。向かう先はリリーカさんがオススメと言うデートスポット。そのリリーカさんは現在、チュロルなるパン菓子が入った袋を抱えている。初めはチュロルとはなんぞや? と思っていた私も、出て来た形状ですぐに分かった。チュロスじゃん、と。


 ここで『ただの』と付け加えなかったのは、リリーカさんの頭の上でゆらりゆらりと揺れていて、折れるのではないか? と、ヒヤヒヤしているソレが理由。なんとこのチュロスは一メートルはあろうかという長さがあったのだ。


「もう少しですわお姉様」

「え……? え、ええ」


 クルリ。と振り返って微笑むリリーカさん。その笑みはドキッとする程だったが、大きく揺らいだチュロスに逆の意味でドキッとする。にしても、それで折れないとはなんてしなやかなチュロスなんだ……




 白い石で出来た建物の間を通る。その先は小さな公園になっていた。中央には壷を担いだ女性の像が置かれた池があり、壷の中から水が流れ落ちている。よく手入れが成された草木に色取り取りの花が咲き、邸宅の庭の様な印象を受ける。


 そしてこの公園の最大の見所は、一望出来る大河と街並み。どうやらこの公園は城壁の上に作られているらしい。ちょっとした空中庭園だ。


「良い眺め……」


 陽の光で煌めく大河。白い煙を上げて滑る様に進む魔導船。霞掛かった対岸の山並み。そして、(うごめ)くヒトの頭。


「今日は少し天候が悪い様ですわね」

「そうなの……?」


 天候が良ければ、対岸に在る街のシンボルである塔も見えるのだという。


 その公園の一角に腰を落ち着け、改めて公園内に目を向ける。公園内には仲睦まじいカップルが多く居て、貴族風の若い人達や第二の人生を歩んでいる熟年のカップル。中には、貴族風の服装をした男性と、使用人風の格好をした女性。なんて変わったカップルも居る。と、私の眼前に遮断器が降りて来た。……あ、チュロスか。


「それではお姉様、そちらからお食べ下さい」

「え……?」


 た、食べるって……?


「恋人の間で流行っておりますの。出会った二人が距離を詰めて結ばれる事が出来るのか占うのですわ」


 つまり、両端から食べ進めてチュー出来れば結ばれる。って事か。……ソレ、ポッキーゲームじゃん。


「それでは、頂きましょう」

「え? ああ、うん。頂きます」


 ハムッ。と棒を咥えると、口から体全体に幸せが広がっていった――

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