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六十八

「姓名とカードを拝見致します」


 借金を返済し晴れて自由の身となった(全くの自由という訳ではないけど)私は、リリーカさんと共に貴族と一般民とを別つ城壁の門まで来ていた。


 見上げる程の大きな門には、鉄製の格子が引き上げられていて、外堀には綺麗な水が湛えられている。何か問題が発生した折には門戸を閉じて跳ね橋を上げるのだろう。それと矢張り、遠くからも見えていた垂れ幕はかなりの大きさだった。


「リリーカ=リブラ=ユーリウス。こちらはカーン=アシュフォード様」


 カーン=アシュフォード。それが私に与えられた名だった。


「失礼ですが、そちらの御人もカードの提出をお願い致します」

「いえ、それは不要です。(かん)七位リブラがこの者の身分を保証致しますわ」

「了解致しました。それで、どの様なご用件でしょうかユーリウス様」

「いえね、遠い地より来て下さった(わたくし)の『婚約者(フィアンセ)』に、この街を案内して差し上げておりますの」


 リリーカさんは殊更『フィアンセ』を強調する。そんなやり取りをしている門番とは別の門番が、頭の先から足元まで何度も視線を往復させて私を視姦していた。


「どうぞお通り下さい。そしてアシュフォード様、ようこそキュアノス中層へ」


 通行の許可を得て門を潜る。ここから先は私の知らない世界だ。門を出てすぐの所は何の材質かは分からないが、白い石で作られた建物が立ち並ぶ。下層の様に露店などは無く、皆その建物の中にお店がある。そのお店も色々で、お肉屋さん八百屋さん魚屋さんなど、日本でもよく見かけるお店ばかりだ。この辺には貴族らしい人は居らず、執事やメイドの格好をした人達が出入りしていた。


「はぁ……心臓が飛び出るかと思った」

「ふふ。堂々としていればバレる様な事はありませんわ。良くお似合いでしてよ、お姉様。どこから見ても貴族の殿方にしか見えませんわ」


 リリーカさんが言った通り、今私は男の人の格好……つまりは男装している。長い髪を後ろで縛り、オジサマからこっそり借りた服を身に纏っていた。胸に巻いた(さら)しが苦しくて仕方が無い。


「それではお姉様。今日一日恋人役をお願い致します」


 恋人役とは言っても別にナニをする訳でも無く、ただこうして仲睦まじく通りを歩いているだけだ。だから今現在、リリーカさんの胸が私の腕に押し当てられていた。


「あ、お姉様……っと、カーン様。アレを頂きましょう」


 腕に触れる柔らかいアレを感じながら、リリーカさんに引かれるままに目の前のパン屋さんに入店した。

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