百九十五
『お宝対決』で私が出した赤い鉱石、通称『ブラッディ・ルビー』。あの場でも何処で手に入れたのか聞いていたが、まだ諦めて無かったのか。
「あれは自然が齎したモノだと、メアリー様も仰っていたではありませんか」
人為的か神為的かは分からないが、とにかく自然が産み出したモノじゃないよ。
「そう。その自然が齎したモノである以上、たった一つである筈はありません。銀や金、ミスリルに至るまで、必ず鉱脈。というモノが存在しているでしょう?」
確かにそうだ。人為的に作られたのならまだしも、自然物であるからには『鉱脈』が在るのが当然と言える。
「もし、鉱脈が存在しない。というのであれば、アレは人の手によって作り出された。と言えませんか?」
「それは、そうですが……」
リリーカさんは拳を握って顎に添え、視線を落として考え込んだ。彼女にはアレは森の中で拾ったのだと伝えている。もしそれがバレたのなら、コイツは森を更地にしてでも探し出すかもしれない。
「カナさんはどう思われますか?」
「へっ……?」
矛先が私へと変わる。上手い事誤魔化してこの場を乗り切らなくては……
「そ、そうですね。『へミニス』様の仰る通りだと思います」
私の答えに、ニタァッと笑みを作るタドガー。ゾワゾワっと産毛が逆立った気がした。
「では、教えて頂けませんかその場所を」
どうして私の目を見つめて言うんだこの人は。能面の様に無表情で、しかも瞬きもしないし……怖いだろ。
「わ、私に聞かれましても、分かりません」
「……ふむ。それもそうですね。ところで、お二人は何故この様な場所に?」
話題が他に移った事でホッと安堵する。あのまま続いていたらどうなった事やら……
「わ、私達は逃げ出したペットを探しているのですわ。『へミニス』様こそどうしてこの様な場所に……?」
「いえね、ちょっとした用事があって、実験もそこそこに家を出たのですよ。しかし、照り付ける日射しが厳しく――」
十月の日射しでもキツイんかあんた。
「なので、日陰のジメジメした所に避難をしに来たのですよ」
ナメクジみたいな人だな。
「ところで、ペットとはどの様な……?」
これです。とリリーカさんが『にぃちゃん』の似顔絵を見せる。まだ持ってたんだ。
「ホゥ。これは『リンクス』ですね」
その似顔絵を一目見て、タドガーはソレが何か言い当てた。
「ご存知なのですか?!」
「勿論、知っていますとも」
まさか、コイツが飼い主……とか言わないよね?