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百九十三

 おばさまから『にぃちゃん』が行方不明だと聞き、通りの露店に聞き込みをする為に、私とリリーカさんは大通りから少し離れた路地を『にぃちゃん』の姿を求めて歩いていた。置かれた木箱の裏を覗き、ゴミ箱の蓋を開ける。それ等をやりながら移動しているので歩みは遅い。


「あの……お姉様」

「ん? どうかした?」

「どうしてこの様な路地を歩かれるのですか?」


 露店で聞き込みをする。と言いつつも、通りから離れた路地を歩いているのを不思議に思った様だ。


 猫系の容姿をもち、三毛猫っぽい外見は非常に目立つ。大通りを歩いていれば多くの人の目に付いて情報を得られるだろうが、人気(ひとけ)の少ない路地に居たのでは、全くと言っていい程情報は出ない。勿論、帰りは露店に聞いて回るつもりだ。その辺を説明すると、リリーカさんは尊敬の眼差しを向けてきた。


「なるほど、流石はお姉様ですわ。ですが、大通りから一歩出れば治安が悪くなります。お気を付け下さいまし」


 そこは元の世界と変わらないのね。海外では命が惜しくば裏路地を歩くな。とか云われている様だし。


「おや? 奇遇ですね」


 聞き覚えのある声に、ハッとして注視する。歩く先の路地からひょっこりと顔を出している人物は、私もリリーカさんも見知っている人だった。


「何やら話し声が聞こえていたので覗いてみたのですが、あなたでしたか」

「た、タドガー=ヘミニス=ラインマイル……様」


 タドガー=ヘミニス=ラインマイル。(かん)三位を戴く、リリーカさんよりも上位の貴族。錬金術オタクで、安価な便秘解消薬をカンで混ぜ合わせて作っちゃう天才肌。二メートルはありそうな身長だが体格は細目。白衣を普段着で着る四十代であろう男。加えて――


「嗚呼……イイですねぇ、その表情。流石は『リブラ』です」 


 自身の肩を抱いてあらぬ方向に視線を向け、ブルリ。とその身を震わすタドガー。加えてマゾっ気有りの男である。


「ところで、そちらの……良い表情をしているお嬢さん。お名前を伺っても……?」

「あ……わ、私はカナ=アユザワと申します『ヘミニス』様。ご挨拶が遅れ申し訳御座いません」


 スカートを掴んで少し持ち上げ、膝を僅かに曲げて会釈する。会釈しながらイヤなヤツに会ったもんだと思っていた。ホント治安悪いなぁ……


「あなたがカナさん……ですか。それにしても、良く似ておいでですねぇ……」


 顔をズィッと近付けて、私の顔を覗き込む様に伺う。だから近いって。


「似てる……? だ、誰にですか……?」

「カーン=アシュフォードと名乗る『リブラ』の婚約者に。ですよ」


 タドガーの言葉に、ドキッと心臓が跳ね上がった。

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