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百八十九

 食事が美味しいと、ヒトは笑顔になるんだ。それを実感出来る美味しさだった。


 もっちりとした食感の中にシャキシャキとした歯応えがあり、淡白なお肉に甘辛のソースがよく合う。中層で食べた食事よりは素材の違いから劣るが、下層では恐らく最高の組み合わせ。キンキンに冷えたエールともベストマッチだ。


「どう? 美味しいっしょ?」


 リスの様に頬を膨らませ、コクコク。と頷く。出された時はコレ食べきれるの? と思っていた量だったが、気付けばペロリと完食してしまっていた。


「ふー、美味しかったぁ……」


 少し物足りない気がしないでもないが……


「ルリ姉様、こんな美味しいお店を教えて頂き有難う御座います」


 どうやら、こんなお店が在ったのはリリーカさんも知らなかったらしい。かくいう私も、外食は基本的にオジサマのお店だけで、後は自炊だから他のお店は知らない。


べふにほれいはんて(別にお礼なんて)ひらないへ(要らないって)


 呂律がおかしくなっている事に気付き、視線を向ける。いつの間にそんなに飲んだのか、ルリさんは既に四杯目のエール酒を手にしていた。


 四杯目をグイッと流し込んだ所で、そのままバタリ。とテーブルに突っ伏した。飲んだ限りでは、アルコール度数はビールと大差無い。それがたった四杯で夢の国へと旅立つとは……酒弱っ!


「ルリ姉様!? ルリ姉様っ!」


 リリーカさんが身体を揺する度に、ニヘラ。と表情が緩むルリさん。


 何事かと向けられる視線の中には、ルリさんの身を案じているモノもあれば、迷惑そうに見つめるモノもある。ニヤける一部の視線は、飲ませれば簡単にヤれる。とでも思っているのだろう。


「リリーカさん。申し訳ないけど、お会計お願い出来る? 私はこの酔っ払いを連れていくから」


 二十歳になってから、サークルや飲み友などに連れ回されて介抱するのには慣れている。リリーカさんは『分かりました』と席を立ち、私はルリさんを連れて店を出た。




 空の、遥か高い所を雲が流れる。その様子は日本もこの世界も変わらない様で、涼やかな風も相まって、秋らしさを感じられる。


 しかし、視線を高高度から低高度へと移せば、秋らしくない熱い視線が注がれていた。それもそうだろう、酩酊状態の美女を美少女と美女が連れているのだ。これが目立たない筈はない。


「ごめ……んね……」


 私の肩に腕を回し、やっとの事で歩いているルリさんが呟いた。


「お酒弱いのに、どうして無理をしたんですか?」

「だって……また会えて嬉しかったんだもん……」


 その答えに、私とリリーカさんは見つめ合って微笑んだ。

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