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百八十一

 代替と言うからには、該当位であるフォワールが、公務を続ける事が困難になった事を意味する。まさか、キノッピの言った通り毒殺された!?


「フォワールは死んでいない。が、生きているとも言えない」


 そんな禅問答は要りませんっ。


「どういう事ですの……?」

「息はしている。が、目に意思の光が宿っていない、いわば植物状態だ」


 植物状態……。内臓機能は正常だが、意思の疎通等が出来ない脳の障害。だったっけ。


「意思の光が……ですの?」

「ああ、明らかに術の影響を受けている」


 術って事は、魔法を扱える者の仕業……?


「でも、その様な術などあるのですか? 聞いた事もありませんが……」

「あるのよ。精神に作用する凶悪な魔術が」

「正確にはあった。だがな」

「あった……?」

「ええ。リリーが生まれるより前、その魔術を使った、ある事件があったの。あれはそうね、私達がまだ駆け出しの頃だったかしら……」


 その事件とは、とある村で起こったのだそうだ。


 ある日、冒険者ギルドに一枚の依頼が張り出された。その内容とは、連絡が途絶えた村の調査。村人の安否を確認し、ギルドに報告。そして依頼料はそこそこ。そんな簡単でオイシイ依頼を、駆け出しで文無しのオジサマ達が受けた。しかし――


「村は異様な雰囲気で満ちていたわ」


 表に出ている者はその場に立ち尽くし、屋内に居る者も一点を見つめたままであらゆる体液を流していた。男も女も老人も子供も。全ての村人が例外なく、死んではいないが生きてもいない、『生きる屍』と化していたのだそうだ。


「私達は他に無事な者が居ないか村中を探し回った。そして、木陰から様子を伺っている一人の男を見つけたの」


 その男に事情を訪ねた所、男はすぐに口を割った。神代の頃より在るとされる塔、『ホルロージュ』内の遺跡から持ち帰った石板を解読し、森の中で実験を行なっていたのだという。


 異変に気付いたのは一週間前。男が食料の買い出しに里に降りた際、呆けたようにその場に佇み、あらゆる体液を流している村人を目撃した時だった。


 男はあらゆる手段を使い、村人を正気に戻そうとした。声を掛け、怒鳴り、頬を叩き、解呪の術まで使用した。しかし、どの様な事をしても村人は正気を取り戻す事は無かった。それこそ、その身を野鳥に(つい)ばまれようが、獣に(かじ)られようが、その場に呆け続けた。


 男は怖くなって村から逃げ出した。そして、ギルドに調査依頼が出されたと聞き、気になってオジサマ達の後を付けて来たのだという。


「その石板に書かれていたのは、ロストマジックの一つだったそうよ」

「ロストマジック……?」

「ええ、何らかの理由で失った。もしくは、危険過ぎて封印された呪文群の事。この場合は後者ね」


 その後男は獄中で自らの命を断ち、男が持ち帰った石板は王城の地下深くに封印されているのだという話だった。


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