表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/235

百七十九

 ボーン、ボーン、ボーン……。柱時計が十二時の時を告げ始める。時計に目をやった時より一分程度しか経過していないにも(かか)わらず、時を告げ始めたのだ。


 ガシュリ。と何かが作動した音が背後より聞こえると同時に、拘束された人物の口角が僅かに上がる。背後より迫り来る音に振り返った所で目が覚めた。


「大丈夫ですかお姉様? だいぶ(うな)されておいででしたが……」

「え、ええ。大丈夫よ」


 とは言ったものの、秋も始まって夜風が肌寒くなり始めたこの時期で、隣でふわふわでぽかぽかなリリーカさんが添い寝していたとはいえ、かいた汗の量はハンパない。鼓動も早鐘の様に打ち付けている。


「本当に大丈夫なのですか? お顔色が優れない様ですが……」

「ちょっと変な夢を見ちゃってね」

「変な夢、ですか……?」


 内容的には悪夢と言っていい夢だ。牢に囚われていたのは私。鉄製の拘束具で椅子に座らされ、衣服は所々が破けている。それ等を話して聞かせると、リリーカさんはニッコリと微笑んだ。


「気にする事はありませんわ。ただの夢です」


 リリーカさんはそう言うが、私はそうは思えない。振り返った時に視界の端で捉えたアレは一体何なのか? 鋭く尖った何かとしか見えなかったが……。と、コツリ。と腕に何かが当たり驚いて視線を移すと、ネコの様な獣が私の事をジッと見つめていた。


「あれ……? にぃちゃん?」


 名前を呼ばれて、にぃちゃんは目を細めてにぃ。と鳴いた。


「おばさまの所に居たはずじゃ……?」

「ええ、(わたくし)が目を覚ました時には、お姉様のお腹の上に()りましたわ」

「部屋の中に……?」


 ドアはちゃんと閉めておいた筈。おばさまがそっとドアを開けて入れたのだろうか……?


「それよりも、汗をかいたままでは風邪をひいてしまいます。お湯とタオルを用意しますので、身体をお拭きになられた方が宜しいですわ」


 時間も二時を過ぎた深夜帯。入浴の音でおばさま達を(わずら)わせる訳にはいかないと判断し、リリーカさんに甘える事とした。




 リリーカさんが用意してくれたお湯で身体を拭き終え、汗で濡れてしまった寝間着の代わりにと渡された服は、かなりセクシーな物だった。


「リリーカさん。これ……」

「ごめんなさいお姉様。ソレしか無かったものですから。でも、とても良くそそり……いえ、お似合いですわ」


 おい今何を言い掛けた?! 本当にコレしか無かったの?! いいか着せちゃえ的な軽いノリで着せてない!?


「さ、お姉様。朝までもう一眠り致しましょう」


 掛け布団を捲り上げ、ベッドへと誘うリリーカさんに、貞操の危機を感じながら床に就いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ