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百七十八

 自身のご先祖様の秘密に不安を覚えたのか、はたまた私への気遣いなのかは知らないが、一緒に寝ようと言い出したリリーカさん。別に断る理由も無いので一緒に寝る運びとなった。


「あれ、そういえば『にぃちゃん』が居ないな……」


 兄ちゃん。ではなく、にぃ。と鳴くから『にぃちゃん』なのだ。私が寝る時間帯になると、ベッドの何処かで丸くなって寝息を立てているのだが、今日に限ってその何処にも居ない。


「『にぃちゃん』。でしたらお姉様の部屋に来る時に、お母様と戯れていましたが……」


 既にベッドに入り横になっているリリーカさんがそう言う。なんか今、『にぃちゃん』の後にクスッ。と含み笑いが聞こえた気がしたが? ペットの名前なんて、普通安直に付けられるモンでしょうが。


「そう、なら問題無いか。それじゃ、明かりを消すね」

「はい、お姉様」


 リリーカさんの返事を待って、獣油で灯されたランタンを吹き消す。瞬時に訪れる闇。しかしそれも月の明かりによって徐々に薄れる。ベッドに入ると、先に寝ていたリリーカさんが即座に抱き着いて来た。ちょ、当たってるってば。


「お姉様はずっとこの街にいらっしゃるのですか?」


 リリーカさんからの質問に少しの間思慮を巡らす。そして出した答えが――


「ずっとは居ないかな」


 だった。


「どうしてですのっ?!」


 リリーカさんは驚いて身を起こし、私を見下ろす。


「不老不死である事を隠す為にも一定の期間で他へ移らないと。歳は誤魔化せても見た目が……ね」


 若返りの魔法とかあるのならともかく、何十年も今の姿のままでは流石にバレるだろう。住み慣れた街を離れるのは寂しいが致し方ない。


「大丈夫、リリーカさんにはちゃんと居場所を教えるわ」


 そんな顔をされてちゃ、そう言わない訳にはいかない。言われて安心した様で、リリーカさんの表情が柔らかくなった。


「それなら安心致しました。それではお姉様、お休みなさいませ」


 リリーカさんにお休み。と応え、夜中に襲わないでよ。と祈りつつ目を閉じた。




 石畳が続く廊下を走っていた。この夢を見るのも三度目。自分が何をすべきなのか? 何となく分かっていた。それは、牢に据え付けられた柱時計が十二時を指す前に、囚われている人物を確認しなければならない。何故かそう思ったからだ。


 以前よりも長く感じる廊下をひたすら走り、牢屋へと辿り着く。牢内に置かれた柱時計にチラリ。と目をやれば、針は三分前を指していた。椅子に拘束されている人物の、項垂れた頭から垂れ下がる前髪をゆっくりと掻き分ける。(あら)わになったその顔に、目を大きく見開いた。


 ボーン、ボーン……。柱時計が時を告げる。見た時から一分程度しか時間は経っていないのにも(かか)わらず、十二時を告げ始めた。同時に、ガシュリ。とした、何かの作動音が背後より聞こえた――

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