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百七十

 魔王。それは、闇の眷属を束ねる諸悪の根源。軍勢を率い、世界を滅ぼそうとする人類の敵。と、元の世界ではそう位置付けられている。


「そうね。カナちゃんの言う通り、魔王さんはそういう人だったわ」


 何故にさん付け? しかも過去形……?


「だけど魔王さんってね、とっても面白い人なのよ」

「面白い……?」

「そう。だって、自分を殺しに来た人に恋しちゃったんだもの」


 ……は? こ、恋ぃっ?!


「信じられないでしょ? 人知を超えているわ」

「そ、それでその魔王さんはどうしたんですか……?」


 き、気になる。その恋の行方。


「初めはね、全く受け入れて貰えなかった。だけど彼女は、剣で突かれようが魔法で焼かれようが、諦める事なく相手にアプローチを繰り返したの」


 全身焦げ焦げで、交際を迫って来る光景って中々の恐怖なんだが……


「……やがて魔王さんは力尽き、地に膝をついた」


 物語のクライマックスに、ゴクリ。と唾を飲み込んだ。


「そこで奇跡が起きたの。滅ぼす為にやって来たその相手は、突き付けた剣を投げ捨てて、魔王さんを抱き締めたのよ」


 おおっ! 魔王さんの熱意が届いたんだ!


「その後間もなく、周囲の反対を押し切って二人は結ばれ、生まれた女の子と三人で幸せに暮らしたのよ」

「おおっ、想いが届いて良かったですねっ」

「ええ、本当に届いて良かったわ……」


 え……? 何でおばさまがシミジミしているの……?


「あのまま永遠に切り刻まれるかと思ったもの」


 ……え、なに? 見てきた様なそのセリフ。それに、産まれたのが女の子で三人暮らしって……


「んまっ、まままさか。その魔王さんって……おばさまっ!?」


 震える手でおばさまを指差すと、おばさまはやれやれバレちゃった。と言わんばかりにふぅ。とため息を吐いた。


「ううん、違うわよ」


 思わせぶりな態度取らないで貰えるかなっ!


「子供の頃、そんな話を聞かされたらそう思うじゃない?」


 そう思ったのは多分、おばさまだけですよ。


「でもまあ、殺しに来た人を好きになっちゃうって、理解を超えてはいますね」


 おばさまは、そうでしょう、そうでしょう。と頷いた。


「それで、その魔王さんと私にどんな関係性があるんです?」

「え? カナちゃんが言いたい事ってそういう事なんでしょ?」


 なんかビミョーに論点がズレている様な……


「他とは違う、他人には絶対に受け入れられない程の異常性。カナちゃんはそれを持っていて、リリーカに知られたくないのね」

「え? あ、いや。例えば、の話ですよ」

「ふーん。でも、大丈夫よ。例えばカナちゃんが男の子と女の子、両方持っていても驚かないわ」


 どうしてソッチに話を持っていくのかなっ?!


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