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百六十五

 屋敷の主人が謎の死を遂げた執務室で、私達の目の前にポッカリと姿を見せた隠し階段。謎に一歩近付いた。と、身震いする程の高揚感に包まれている最中に、リリーカさんから怒涛の三連続でお叱りを受けた。


「危ない事には首を突っ込まない。(わたくし)とお約束致しましたわよね?」


 睨むリリーカさんに思わずたじろぐ。


「いや、だけどね――」

「ダメですわ。ここから先はフレッド様にお任せするべきです」


 答えがすぐソコにあるかもしれないってのに、お預けは非道い……。ここは一つアノ手を使うか。


「いいえリリーカさん。あなたが居るんだから全然危なくなんて無いわ。リリーカさんの事、頼りにしているんだから」


 ニコッと微笑み、優しく抱き締める。


「ほんのちょっとだけ。い、い、よ、ね?」


 リリーカさんの小さな耳に息を吹き掛ける様にして囁くと、その身がブルリ。と僅かに震えた。


「んっ……わ、分かりましたわお姉様」


 いよっしゃあ!


「ですが、少々お待ち下さい」


 私の抱擁から抜け出したリリーカさんは、そのまま隠し扉の方へと歩いて行ってしゃがみ込む。一体何をするのだろう? とそう思った直後、ズズズ。と音を立てて隠し扉が閉められた。


「り、リリーカさん?!」

「これはフレッド様にお渡し致しますわ」


 リリーカさんは抜き取った鍵をポケットに仕舞い込みながら言う。そんなぁ……


「男爵夫人、鍵はこの『リブラ』が責任を持って(かん)八位、フレッド=アクラブ=ウォルハイマーにお渡し致します。今日はもう遅いですし、内部の捜索は明日以降になるかと思います。それで宜しいでしょうか?」

「は、はい。どうか宜しくお願い致します」


 深々とお辞儀をする男爵夫人とシンシアさん。そして、使用人さんに見送られて私達は屋敷を後にした。




 陽は既に落ち、街には魔法の明かりが灯されていた。豊穣祭の時とは違って『魔法の明かり』もそれ程明るくもなく、足元がぼんやりと見えるくらい。その所為もあってか、通りを歩く人はほぼ居ない。


「あーあ。もう少しで謎が解けたのになぁ……」

「ホント、お姉様は余計な事に首を突っ込みたがるのですね」

「別に余計じゃないわ。男爵夫人の為にやった事よ。つまりは人助けってヤツ」

「お姉様、趣旨がズレておりますわよ。元々、(わたくし)達の目的は『飼い主探し』でしょう? それなのにお姉様は――」


 リリーカさんのお小言が始まって少し過ぎた頃、視界の端、闇の中で何かが動いた。闇に身を隠していたソレは私達へと真っ直ぐに近付き、振り上げた何かが魔法の明かりを僅かながら反射する。私がリリーカさんを前へと押し出したのは、ほぼ条件反射。直後に鈍い痛みが私の腕を襲った――

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