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百五十九

 キュアノス中層域。見上げる程高い城壁で囲まれたこの区は、貴族の人達が住まう区画で、一般人の立ち入りは基本的に許可されていない。そんな場所にタダの一般市民である私が入れるのは、一緒に来てくれた(かん)七位の称号を持つ大貴族。リリーカさんの力添えがあったからに他ならない。


 昼間はゆったりとした時間が流れているこの区画も、夕食の買い出しであろう使用人の格好をした人達が、忙しなく動いているのが伺える。


「えっと……コッチですわね」


 衛兵さんから手渡された地図を見ながら、リリーカさんは先行して歩いていた。


「ねえリリーカさん。アノ人達は居ないわよね?」


 アノ人達とは、フォワール卿の使用人であろう人達の事。豊穣祭の最中、私とリリーカさんがこの区画に立ち入ってすぐに、いつの間にか後を付けて来ていた。


「はい、今の所は居ない様ですわ」

「完全に終わった。とみて良いのかな……?」


 (かん)八位であるフレッドさんの話では、お宝勝負が終わった後も王女に食い下がっていた。という話だったが……


「それは何とも言えませんわ。お姉様が女性である事がフォワールにバレてしまったのですから、アレの性格上再び執拗に求婚を迫って来る事でしょう。メアリー様が余計な事を言わなければ、丸く収まったのですが……」


 (かん)四位のメアリーさんのお陰で勝負には勝てたが、同じくメアリーさんによって男装していた私が女だとバレてしまった。有難い様なそうで無い様な。


「でも、王女が何とか言い繕ってくれれば……」

「王女殿下に期待をなさらない方が宜しいですわ。あの御方は散らかすだけ散らかして、後片付けは他人にやらせる様な御方ですから」


 十一歳にもなって他人(ひと)任せなのもどうかと思う。


「お姉様、どうやらここの様ですわ」


 リリーカさんの視線の先には、立派な洋館がひっそりと佇んでいた。




 表札でもあれば分かりやすいのに。そんな事を思いつつ、門を潜って良く手入れが成された庭を通り玄関へと辿り着く。


 玄関のドアには、意匠を凝らして彫ったであろう獅子の頭が付いていて、その口に鉄製の輪が咥えられている。その輪を動かして、ゴンゴン。と扉を叩いた。


 ギギィーと雰囲気のある音を立て、扉が開かれる。その扉を開けた人物は、燕尾服の様なスーツを着た白髪の使用人さんだった。


「何方様で御座いますでしょうか?」

(わたくし)、リリーカ=リブラ=ユーリウスと申します。少しお伺いしたい事が御座いまして、参りました」

「えっ!? 『リブラ』様?!」


 白髪の使用人を押し退ける様にして、一人の女性が姿を現した。

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