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百五十八

 おばさまがお店の奥へと引っんで行き、待つ事暫く。戻って来たおばさまは、幾層にも積み重なった紙切れを抱えていた。


「待たせてごめんなさいね」


 ドサリ。とテーブルに置かれた紙束からは、ムワリ。とホコリが吐き出される。ちょ、まだ食事中なんですがっ!?


「おばさんが知っている貴族は、残念ながら誰一人としてくたばってないからコレで探すしか無いわね」


 くたばったて言い方が乱暴だなぁ……


「あら? 一体何をされているのですかお姉様」


 お店の奥からやって来たリリーカさんが、私が眺める新聞を覗き込む。


「うん。本当の飼い主さんが希少動物を探してもいないのって、何らかの事故に巻き込まれて死んでるんじゃないかと思ったのよ。だから貴族の人の死亡欄を探していたの」

「それで新聞を見てらしたのですね」


 テーブル上に置かれた新聞の一枚を手に取り、表紙を眺めるリリーカさん。


「確か、最近亡くなられたのはお一人だけだったと思いますけど……」


 ボソリ。と呟いて新聞を見ているリリーカさんに目を見張る。


「え……覚えているの?!」

「はい。奇妙な事件だと報じられていましたのでよく覚えております」


 被害者はノーザン=カルトフォル男爵で歳は五十二。夫人から聴取した話によると、男爵は自身の執務室で眠る様に息を引き取っていたのだという。


 当局は始め、毒殺の可能性が有るとして捜査をしていたが、現場及び屋敷内からは毒性の反応は一切出なかったそうだ。


「それは確かに奇妙だね……」

「はい。交友関係は良好で、誰からも怨みを買う様な人では無いそうです。最近は寝付けない事があったそうで、寝不足による過労では無いか? というのが、当局の見解の様ですわ」


 寝不足で頑張り過ぎたのか。


「ねえリリーカさん。今から案内して貰える事って出来る?」

「え、今からですか?」

「うん。貴族さんだから中層に住んでいるんでしょ? 私なんかじゃ門を通れないから、リリーカさんの力添えが必要なの」


 自由に往き来出来れば良いんだけど、目的が無ければ通して貰えない。かといって、カルトフォル邸に弔問に行くって言ってもダメなのは目に見えている。


「でも、リリーカさんも出発の準備で忙しいでしょうし、無理強いはしなけいど……」

「良いですわ。お姉様が(わたくし)を頼ってくださるのでしたら、リリーは何処までもお供致しますわ」

「有難う。それじゃ早速行こう」


 はい。と笑顔を返すリリーカさんと共に、私達はカルトフォル邸へと向かったのだった。

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