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百五十五

 続いて入って来たのは、四人の中でも最高齢のお爺ちゃんだ。


「お名前を教えて頂いて良いですか?」

「わしゃあ、ハーン=バーグというもんじゃ」


 ハンバーグ?! 鳴らないって事は本名か!


「で、ではお聞きします。この獣はあなたが飼っているのですか……?」

「見れば見る程、良く似ておるわい」


 良く似てる? じゃあ、この人が……?


「いつの間にか居なくなってしもうた婆さんにソックリじゃ。なあアンタ、婆さんに会わせてくれんかのう」


 ダメだ。このお爺ちゃんボケちゃってる……次っ!




 三人目は女性だ。髪を縦ロールに纏め、服装も今までとは違う。何処かの貴族夫人。といった所か。


「お名前をお聞きして宜しいですか?」

(わたくし)、アン=コマイアーと言いますのよ?」


 知らないの? 的なニュアンスで言わないで貰えるかな。知らないんだから。


「では、お聞きします。あの――」

「アレは(わたくし)が飼っている『エリザベス』ちゃんに間違いありませんわ」


 私の質問を遮り、夫人の話が始まった。


「そもそも、『エリザベス』ちゃんとの出会いは、十年前になりますのよ。あれは寒い寒い冬の朝。『エリザベス』ちゃんはそれはそれは――」


 私が口挟む暇もなく、夫人の話はどんどん進んでゆく。所々で呼び出しベルが鳴っている事から、話はほぼ捏造している様だ。にしても……饒舌(じょうぜつ)過ぎるだろうアンタ。近所のご婦人方から嫌われるタイプだな。


「も、もう大丈夫です。お帰りになって下さい……」


 いい加減疲れた。話を聞いていてこれ程疲れたのは初めてだ。


「まだまだコレからが良い所ですのに……そういえば、先程から五月蝿いこの装置って一体何ですの?」


 今更っ?! ハア……つ、次の方……


 最後は幼女を絵に描いた様な小さな子供だった。くりっくりな目をキラキラと輝かせ、物珍しく周りに気を取られている。子供らしく落ち着かない様子だ。うん、アレの後だけに余計にホッとする。


「お嬢ちゃん。お名前は?」

「ナツはね、ナツって言うのぉ」


 マリエッタ王女と初めて会った時の事を思い出す。実年齢十一歳のクセに、幼女のフリして何食わぬ顔でサーカスを見に行った。でも、この子はそうじゃない。と、いいな。


「そうなんだぁ。ねぇね、ナッちゃん。苗字は何て言うの?」

「んとぉ……んとねぇ……へーぜるぅ」


 ううっ可愛い……ギュッと抱き締めたい。そっかぁ、ナツ=ヘーゼルちゃんかぁ。……ん? ナツヘーゼル? ヘーゼルナッツ!?


 人の名前が馴染みの食べ物に聞こえるなんて、もしかして私……元の世界(ホーム)シックになってるの?!

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