百五十三
『ウソを見破る魔導具』の前で、『私は男です』と明らかにウソを言ったにもかかわらず、何の反応もしてくれないので、私男疑惑が持ち上がった。
「ちょ、どうなっているんですかコレ」
「おかしいですね……」
「ですよね? リリーカさんも、私は男じゃなくて女だからね?」
「はい、分かってますわお姉様」
チーン。呼び出しベルが予想通りの音を立てた。って、おいっ! 全然分かって無いじゃないかっ!
「ちょっ、何ですの? 失礼じゃないですかコレっ」
「フレッドさん。私女ですからね? 何なら今ここで証明しますっ」
「お止め下さいお姉様。こんな所で服をお脱ぎになられては、皆が迷惑をしますわ」
チーン。……え? 脱いで欲しいの?
「ふ、フレッド様も困惑なさっておいでではありませんか」
「はい。ここでの脱衣はお止め下さい」
チーン。……脱いで欲しいのね?
「し、少々お待ち下さい。どうやらコレは故障をしている様です」
「故障ですか……? では、お二人に質問します。私の裸、見たいですか?」
「い、いえ。同じ女ですもの見ても仕方ありませんわ」
チーン。
「わ、私には妻がおりますので、妻以外の裸など――」
チーン。呼び出しベルの音に二人の動きが止まる。コレ、地味に怖いな……
「どうやら、上手く作動する場合とそうでない場合があるみたいですね」
「そんなバカな……」
その差は一体何だろうか?
「リリーカさん。試しに何かウソを言って貰える?」
「え? ウソですか……?」
リリーカさんはうーん。と考え込んだ。
「わ、私はお姉様がキライですわ」
チーン。正常に動いたな。言った本人は異様に照れているが……
「分かった。コレ、私にだけ反応しないんだ」
「え……? そ、そんな筈はありません。これは如何なる人物のウソも見抜く筈です」
「そんな事を言っても、私は男。リリーカさんも男。フレッドさんは女。オジサマの淹れるコーヒーは不味い……ね?」
「た、確かに……」
どうして私には反応を示さないのだろう? 彼女達と私の違いって何かと考えたら、私が異世界人である事に辿り着いた。コレが一番可能性がありそうだな。
「ともかく、故障じゃ無いみたいだし問題は無さそうね。私が質問をする側だから大丈夫でしょ」
質問をされる側でも、反応しないのだからウソを吐き放題になるな。
「そうですわね。問題は無いと思いますわ。フレッド様、お話しした通りにお昼まで使わせて頂きます」
「わ、分かりました」
自身の本性を知って余程ショックだったのだろう。フレッドさんの元気が失われていた。