百四十四
「「「さんおくっ?!」」」
リリーカさんとルリさん。そして、受付嬢の声がハモった。
「そ、それ本当なの?!」
「ええ、鑑定機で他のモノを鑑定中にあのコが光に触れちゃって、出た結果が三億だった」
「道理で飼い主と主張する輩が多い筈ですわ。それだけあれば町が買えますもの」
ただ純粋に飼い主に返したいってだけなのに、町買えちゃうレベルなんだ……
「そうなると、現れた飼い主全員がブラフって可能性が高いわね……」
「じ、じゃあ、どうすれんくっ」
言い掛けた私の唇に、ルリさんの指が当てられる。
「待った。ここじゃマズイわ」
ルリさんは腕を取って引き寄せ、私を抱き止める。
「聞き耳立てているヤツが居る」
耳元で囁くルリさんの言葉も、身体の震えが邪魔をする。耳、弱いんだけど……
「悠久の空。温和なる風纏しもの。その力以て、この地に森閑を築け。静寂なる銀幕!」
ギルドの個室に移動した私達。入室して即、ルリさんが室内に魔法を掛けた。
「オーケー。これで外に声が漏れる事も無いわ」
「遮音魔術……ルリお姉様は黒魔術士でしたのね」
「リリーカさんと同じよね」
リリーカさんも何度か魔法を使っているのを見た事がある。
「いえ、私の魔法とは別系統ですわ」
「え……そうなの?」
「はい。私が使っているのは精霊魔法。ルリお姉様が使うのは黒魔術ですわ」
うん。正直違いが分からない。
「でも、同じ『魔法』でしょ?」
「前にも言ったけど、言葉にすれば一緒でも細分化すると違うのよ」
「はい。精霊の力を引き出す。という点では同じですが、精霊魔法は精霊と契約を交わす。というリスクが生じます」
「黒魔術はそのリスク無しで精霊の力を引き出す事が出来るわ」
「それだと、黒魔術の方が楽に使えるんじゃない?」
ルリさんは人差し指を立て、チッチッチ。と舌打ちしながら指を左右に動かす。
「ところが、世の中そう上手くは出来てないんだな」
「はい。精霊魔法は精霊の力を全て引き出せますが、黒魔術はその半分くらいの力しか出せないのです」
「無理矢理使っている弊害よね」
なるほど。リスクに見合った力を行使できるのか。
「……あの、皆さん」
魔法について色々と教えて貰っていると、受付嬢が口を挟んだ。
「今はその様な魔術の講義をしている場合では無いと思いますが……」
「「「あ……」」」
そうだった。飼い主を名乗る六人の人の事を話し合う為に来たんだった。