表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
142/235

百四十二

 リリーカさんの手に引かれ、人混み溢れる大通りを掻き分ける様にしながら一路冒険者ギルドへと進んでいた。


「ど、どうしてそんなに急がせるの?」

「最終日の今日は、何処の店も夕方までしか営業しておりませんの」


 夕方というのは何時までかは分からないが、空を見上げるとお日様はやや西に傾き掛けていた。


「今日は随分早くに店仕舞いするのね」

「ええ、夜には国王陛下と(かん)十二位の演説がありますので」


 なるほど。それを聞くために早仕舞いするのか。だけど、あれ……?


「リリーカさんは行かなくても良いの?」

「はい。(わたくし)はまだ未成年ですしそれに、お父様が出席しているので問題ありません」


 あ、だからお店にオジサマが居なかったのか。


「オジサマも大変ね」

「ええ。でも、(わたくし)が成人した暁には、全てを(わたくし)に任せ、お父様は何もしない腹積もりの様ですわ」


 オジサマ、あの渋い顔の下ではそんな事を考えていたのか……。リリーカさんも大変だな。




「あら? カナさんじゃない」


 冒険者ギルドに着くなり、見知った顔にバッタリと会った。その人物とは、『契約の石』の件で相談しに行った冒険者のルリさんだ。


「どうかした?」

「え、あ。いやぁ、シッカリと別れの挨拶をしたのに、また会っちゃったから。気不味いなぁって」


 私の言葉に、ルリさんは拳を唇に当ててクスリ。と笑った。


「確かにそうね。でも、そんなの気にしてたら出歩けないわよ」


 確かに。


「で、そちらのお嬢さんは? カナさんのお子さん?」


 アンタ。私がそんな歳に見えるのか?


「そういえば初めて会うんだっけ。こちらはリリーカさん。彼女は私の――」


 ふと。リリーカさんって私の何だろう? という考えが過ぎった。借金を肩代わりしてくれたから……ご主人様?


「恋人?」


 何でそうなる。


「妙な妄想しないで下さい。彼女は私の大親友です」


 タダの親友とは言わないのが私クオリティ。ご主人様なんて言おうものなら勘違いされまくるだろうし、コレが無難かな。リリーカさんは何故か寂しそうな顔になっているけど……


「初めましてリリーカちゃん。私はルリ=ブランシェ、こう見えても冒険者よ」

「お初にお目に掛かりますルリお姉様」


 リリーカさんはスカートを僅かに持ち上げてカーテシーを行う。


「へぇ、中々礼節がサマになっているわね。まるで貴族みたい」

「まるで。じゃなくて、まんま貴族様ですよ」

「え……?」

「はい。国王陛下より(かん)七位の(くらい)を頂戴致しております」

「かんなない……? へっ? えっ、ええっ!」


 ルリさんが上げた声に、私達は周囲から熱い眼差しを注がれる事となった――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ