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百四十

 フォワールの物言いにメアリーさんが再考してしまった事で、勝負の行方に暗雲が漂い始めた。くっそー余計な事を……


「それを踏まえた上で、もう一度お考え下さい!」

「……確かに。オマエの言う通りだな」


 メアリーさんの言葉に、顔が強張り嫌な汗が大量に流れ始めた。ウソ……負ける?! リリーカさんが取られてしまうの!?


「そうで御座いましょう?」

「ああ、そうだな。だが、オレの答えは変わらんよ」

「なっ!? 何故ですか!?」

「分からないのか? フォワール、オマエは言ったな? これはS級職人が作り出した武器(もの)である、と」

「左様です」

「人の手にて作り出せし物は、幾らでも生み出せる。今現在では最高傑作だが、いずれはコレを超えるモノを生み出す事が出来るだろう。対してこの鉱物は自然が作りしモノ。生成する為には長い時が必要となる。それこそ人知を超越した時がな。コレが稀に見る鉱物だったのならフォワール。オマエの勝ちだ。しかしコレは、自然が齎らしたたった一つの鉱物。故に希少価値が高いのはこちらだ」


 フォワール卿は再びガクリ。と膝をついた。この時点で私達の完全勝利が決まった。良かったぁ、どうなる事かとヒヤヒヤしたよ。……まあ、そこまで絶賛されてもソレはアレなんだけど。


「んで? 誰だ、こんモン持ち込んだのは……」

「私で御座いますメアリー様」


 右手の平を肩に添え、メアリーさんに一礼をする。


「見た事の無い奴だが、誰だオマエ」

「私はカーン=アシュフォードと申す者。リリーカ=リブラ=ユーリウス様の婚約者(フィアンセ)で御座います」

婚約者(フィアンセ)だぁ? 女だろオマエ」

「めっ! メアリーっ!」


 メアリーさんの言葉に、マリエッタ王女が慌てて立ち上がる。


「何だよ姫サン。そんなでっかい声出さなくても聞こえてるゼ?」

「り、『リブラ』っ! そなたの勝ちだ。ここはもう良い、下がって休めっ!」


 王女に一礼し、私達は大広間を後にする。内心では平静では無かったが、それを表に出さない様、細心の注意を払っていた。チラリ。と目をフォワールへとやると、突然の事で思考が停止している様子だった。


「姫! コレは一体どういう――」


 扉が閉じられる間際、フォワールの声が耳に届き、閉じられた事でその声が途絶えた。




「だ、大丈夫かな……」


 馬車に揺られオジサマのお店に戻る途中で、大広間で繰り広げられているであろう問答に、マリエッタ王女が慌てふためいて言い繕っている姿が脳裏に過ぎる。


「分かりません……」


 メアリーさんの最後の一言が無ければ、抱き合って喜び、勝利の余韻に浸る事が出来たのだが、今やその気は失せ、冷や汗すら出る始末。事態は再び暗雲が漂う事になったのだった――

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