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百三十六

 貴族の人達から総スカンを食ったフォワール卿は、顔を真っ赤にさせて握った拳を震わせていた。なんか可哀想になってきた。


「パパ……ボク悔しいよ」

「今は耐えろヨルヴよ。そのうち奴等の笑みを凍らせてくれる」


 ボソリ。と呟いた反逆とも取れる言葉が耳に届いた。


「まあ、そういう事は後で糾弾して貰って、取り敢えずは始めるわよ。『リブラ』も『サヒタリオ』も準備は良いかしら?」

「勿論で御座います王女殿下」


 フォワール卿が息子と一緒に深々とお辞儀をする。


「『リブラ』?」


 すぐに返事を返さなかったリリーカさんに、貴族の人達の視線が注がれる。当のリリーカさんは視線をやや下に落とし、その目が揺らいでいた。


「リリーカ?」


 彼女の肩に手を置くと、その身が微かに震えているのが分かる。不安そうな表情を向けるリリーカさんに、私は『大丈夫だから』と意味を込めて微笑み頷く。


「王女殿下、こちらも準備は整っております。どうぞ、お始め下さいませ」

「分かった。では、フォワール。お前のお宝から見せて貰おうか」

「畏まりました。おい、アレを」


 フォワール卿に言われて壁の側で控えていた執事が一礼すると、私達が入って来たドアとは別の、控え室であろうドアを開いて台車の様なモノを押して来る。その荷台には布が被されていて中は見えない。


「私が王女殿下に捧げますのは、こちらの品に御座います」


 バサリ。と掛けられていた布を取り払うと、場がザワリ。と騒がしくなった――




「ホウ。これは中々……」


 仙人さんが、蓄えた顎鬚を撫で下ろしながら、フォワール卿が出したお宝に釘付けになっていた。そのお宝とは、微かに湾曲した刃に美しい刃文が刻まれた片刃の剣。あれってもしかして日本刀!?


「北方海に浮かぶ島国、『ヤパン』にて作られし逸品で御座います」


 私の方を見て口角を吊り上げるフォワール卿に、嫌な汗が湧き出した。予想外……まさかこんなモノを用意しているとは思わなかった。


 貴族の人達がフォワール卿のお宝に群がる最中、表情を強張らせて絨毯を見つめていた。マズい。完全な勝ち戦だったはずが、日本刀を持ち出してきた事で勝敗が分からなくなってしまった。


「それではカーン=アシュフォード殿。そなたのお宝を見せて貰おう」


 勝ち誇った表情でフォワール卿が言うと、王女を含め貴族の人達の視線が私へと注がれる。最早逃げられない。


「カーン様。(わたくし)はどの様な結果になろうとも、あなた様をお恨み申し上げたりは致しませんわ。ですから、心置き無く戦って下さいまし」


 私の腕を掴む彼女の腕が震えていた――

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