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百二十四

 解放してみなけりゃ分からない。そう言われてガックリと肩を落とす。中に強力な精霊が封じられているのなら相当な値が付くだろうが、ショボイ精霊だったりした時が怖いし、『強力な精霊』というのも街の存亡に関わりそうで怖い。流石にコレを切り札とするにはギャンブルが過ぎるか……


「ね、ねぇカナさん……」

「はい?」


 見ればルリさんは、両手の平を口に当てて身体がふるふる。と震えている。……つわりかな?


「そ、そのコなに……?」

「え……?」


 震えながらもビシッと指し示す指の先には、ネコの様な獣『リンクス』がひょっこりと顔を出していた。


「いやぁん。カワイイッ! ね、抱っこ。抱っこさせてぇ」

「ああはい。いいですよ」


 カゴからヒョイと持ち上げてそのままルリさんに渡すと、ルリさんは頭を撫でたり背中を撫でたりと、忙しなく手を動かしていた。


「このコ。いつの間にか部屋に上がり込んでて、この後サーカスに――」

「売るつもりっ!?」

「違いますって!」


 どうして『サーカス』イコール『売る』になるんだコイツ等は。


「サーカス一座の誰かが飼っているだろうと、飼い主を探す為に行くんです。って聞いてます?」

「んーカワイイでちゅねぇ……え? 何?」


 この世界にも居るんだ。溺愛しているペットに話し掛ける時、赤ちゃん言葉になる人。


「ですから、そのコの飼い主を探す為にサーカスに行くんですって」

「いやぁん、舌ザラザラして擽ったいよぉ。え? 何か言った?」


 ハイ二回目。


「もし、サーカスでも飼ってなかったらどうするの?」


 あ、聞いてた。


「そ、その時は私が飼うしかなくなりますね」

「私が欲しいな。コレ頂戴」


 そんな、モノを買うみたいに。


「でも、そのコ。『ワルドキャット』より大きくなるみたいですよ」

「え……それホント?」

「ええ、港の通商ギルド『アルカイック』のルレイルさんが言ってました」

「ええっ。オマエ、そんなに大きくなるの?!」


 ルリさんの驚きに、『リンクス』はそうだよ。と言わんばかりに、にぃ。と鳴いた。


「それだけ大きくなるって事は、背中に乗れるわね」


 問題はソコじゃぁ無いだろう?


「食費がトンでもない事になりますよ」


 この小さい体で、お皿一杯のご飯を平らげたのだ。大きくなったら一回の食事にどれだけの量を与えねばならんのか想像が付かない。


「流石に旅に連れて行く訳もいなかないでしょう?」

「それもそっかぁ……残念」


 連れていけるなら行くつもりだったなこの人。


「ところで、決意は固まった?」

「え……? 決意?」

「うん、そう」


 『リンクス』を頬ずりしながら、ルリさんは私をジッと見つめていた――

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