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百十七

 オジサマのお店を後にして部屋に戻ると、ダダダッ。と何かが駆け寄って来る。薄暗い室内で白い軌跡を生みながら走って来たのは、(くだん)のネコの様な獣だった。


「そういや、オマエも居たんだっけね」


 ネコの様な獣は私の足首に纏わり付き、その小さな身体を(しき)りに擦り付けている。


「オナカ減ったの?」


 食事を入れておいた器を見ると、中身がカラになっているのが見える。


「じゃあ、ご飯にしようか」


 私の言葉に答えるかの様に、ネコの様な獣はにぃ。と鳴いた。


 ベッドに仰向けに寝転がり、契約の石を指で挟んで眺めていた。オジサマもおばさまも魔術の勉強をしているリリーカさんすらも、この正体は分からず仕舞い。この街には『魔術師ギルド』と呼ばれる施設もあるそうだけれど、そっちにはおばさまが当たってくれるらしいのでお任せするとして、ただ情報を待っているだけ。というのも気が引ける。


「魔法が使える人かぁ……」


 それも、明かりを灯したり店の中を涼しくしたりする様な日常的に使う魔法ではなく、魔物を相手にしている様な人が望ましい。


「そうなると、冒険者の人達か。知り合いって居たっけかなぁ……あ」


 居た。魔法を扱う冒険者。彼女なら、もしかしたらコレの中身が分かるかもしれない。お祭りが終わるまでは滞在するって言ってたから行って聞いてみよう。宿は確か……『タイヤキ船』だったっけ。ネコの様な獣の飼い主探しも含め、明日も忙しくなりそうだと床に就いた。




 にょろ。毎日の日課がグッドモーニングとばかりに顔を出す。アレ特有の香りも個室に広がる事もなく、間もなく巣離れをしたアレがゴトリ。と落ちた。尻を上げて恐る恐る振り返ると、白磁の器に盛られていたのは金色の物体。月イチと週イチが重なっていただけに、少々……いや、相当不安になっていたのだが、生まれたのは金鉱であった事にホッと胸を撫で下ろす。どうやら、月イチと週イチが重なった場合は、月イチ。つまりは高額な方が優先されるらしい。


「ふぅ……異常は無いみたいね」


 良かった。金と銀の混合物なんか出てきたらどうしようかと思ってた……




 ネコの様な獣と、生まれたばかりの我が子(アレ)をカゴに入れてお出掛けをする。取り敢えずは、ルレイルさんの所で換金をして貰い、その後にサーカス一座に足を伸ばそうと思っている。カゴからヒョッコリと顔を出して戦ぐ風をヒゲ一杯に受けながら、ネコの様な獣は気持ち良さそうに目を細めていた――

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