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百十六

「いや、知らんな」


 簡潔な答え、有難う御座います。


「お母様は如何ですか?」

「母さんもこんなの知らないわ。一体いつ紛れ込んだのかしら……」


 木箱にモノを詰め込んだのはアンタじゃなかったっけ?


「まあ、良ければカナちゃんにあげるわよ」

「お母様、そんな危険なモノをお姉様に与えないで下さいませ」


 与えるて。私犬じゃないんだけど?


「まあ、大丈夫じゃない? 見た所大したモノじゃないみたいだし。だけどカナちゃん。これだけは覚えておいて。中に何が入っているか分からない以上、契約の儀式は必ず高位の魔術師が居る場所で行い、一人でやろうとしない事。もしそれを破れば……」


 おばさまは人差し指を立てて、暑苦しい顔でズイッと迫る。


「破れば……『死』ですか?」


 私の言葉におばさまは首を横に振る。……え?


「もし契約に失敗する様な事があれば、カナちゃんの魂は精霊界に囚われる事になるわよ。未来永劫……ね」


 鬼気迫る暑苦しい顔に、ゴクリ。と嚥下する。


「『魔法』というのは確かに便利なモノよ。現にこうして私達の生活が豊かになってる。だけどね、未熟な知識で以って使えばそれなりのリスクが生じるの。下位精霊ならまだ精神力が尽きるだけで済むけれど、それ以上の精霊ともなれば身体に影響を及ぼす可能性も出てくるわ。だから十分に注意してね。分かった?」

「はい。お母様」


 リリーカさんは真剣な面持ちで答える。


「カナちゃんも気を付けてね」

「は、はい。でも、これはお返ししますね」


 そんな話を聞いてしまっては怖くて貰えない。


「アラ。遠慮しないで」

「いやいやいや! こんな、いつ開放されるか分からないモノを持って歩けませんって!」


 だって、爆弾を持ち歩いているのと何ら変わらないし。


「大丈夫よ。開封の儀式を行わない限り、精霊が開放される様な事態にはならないから」


 ああ、そうですか。しかしなぁ……


「お守りとして持っていたら良いんじゃないかしら。鎖を付けてネックレスにでもすればオシャレだし」


 黒い塊が揺蕩うクリスタルを親指と人差指で挟み、チェーンやチョーカーに付いている姿を想像する。…………オシャレかもしんない。


「ソレに関して何か分かったらカナちゃんに教えるわ」

「……分かりました。じゃあ、これ。頂きますね」

「大事にしてね。それよりリリー。何か対策は見つかったの?」


 おばさまの言葉にリリーカさんは首を大きく横に振る。


「いいえ、全く。ですが、お姉様に秘策があるそうですので、(わたくし)はそれを信じるだけですわ」

「秘策……? カナちゃん、それってどんな作戦なの?」


 おばさまも興味津々な様子で暑苦しい顔をズイッと寄せて来る。私は王女の時と同じく、人差し指を唇に当ててこう言った。『ナイショです』と――

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