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百十五

「え? ちょ、ちょっと待って下さい。送っちゃったんですか?!」


 私の言葉に王女様はコクリ。と頷く。


「うん、今朝ね。今頃はフォワールも慌てふためいているんじゃないかなぁ……」


 なんつー傍迷惑な王女様だ。


「英雄殿の事だからお宝くらいは持っていると思ってたんだけど……こりゃ負け確定だね」


 アンタから持ち掛けておいて、他人事!? そもそも、質素倹約のユーリウス家にお宝を求めるのが間違いだろう? 何でそんな勝負にしたんだ。


 勝利が絶望的だと知るや、リリーカさんがスックと立ち上がる。


「リリーカさん?!」

「もう良いですわお姉様。(わたくし)がフォワール家の嫡男と一緒になれば済む事です」

「そ、そんな事言わないで。取り敢えず決闘はキャンセルして、何か他の案を考えよ。ね?」


 私の言葉にリリーカさんは首を大きく横に振る。その際、私の手にポタリ。と雫が落ちた。


「一度決闘を申し出た以上、退く事は出来ません。しかもそれがお宝勝負ともなれば、勝利の女神はフォワール卿に微笑みます。それを逃す筈はありませんわ。彼も下克上とばかりに嬉々として迎え撃つ事でしょう」

「じ、じゃあ。言い出しっぺの王女様にお金を出して貰って、街でお宝を探しましょうよ」

「いいえお姉様。その辺で売っているモノでは、万が一つにも勝てる見込みはありませんわ。市場に出回らない様な希少なモノでない限り……」


 市場に出回る事の無い、希少価値が高いお宝なんてある訳が……あ。


「……ある」


 ある。世界中何処を探しても見つからなさそうなモノ。この世にたった一つしか無い。というより、二度と世に出したくは無い希少なお宝が。ある!


「お姉様……?」


 瞳一杯に涙を湛えながら、リリーカさんは不思議そうに私を見ていた。私は不敵に微笑んでそれに応える。


「安心してリリーカさん。あなたの貞操は私が守るわ。必ず」

「オーケー、宜しいでしょう。決闘は今より二日後の豊穣祭最終日。場所は、迎えを寄越すからリリーカと一緒に来てね。……ところで、お宝ってどんなの?」

「それは、ヒミツです」


 唇に人差し指を当て、ウィンクで応えた。




 その後王女様は、大慌ててやって来たフレッドさんと一緒に……いや、半ば強制連行されて屋敷へと戻って行き、その場に私とリリーカさんが残された。


「本当に大丈夫なのですか? お姉様」

「あれ? リリーカさんは私の事が信じられない?」

「いえ、そういう意味では……」


 不安が拭いきれないのだろう。胸に当てた手をギュッと握り締めている。


「とにかく、一度オジサマのお店に戻って、この『契約の石』事を聞きましょう」


 もしもこの石に高位の精霊が封じ込められているとしたら、それはそれで希少価値の高いモノになるかもしれない。そう期待しつつ、私とリリーカさんはオジサマのお店に向かって歩き出した。

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