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百九

 お宝が在るか聞く為にオジサマのお店に移動した私達。ソレを聞いた本人は現在、床に落とした視線をゆらゆら。と揺らせながら、顔を真っ赤に染めている。耳も真っ赤っか。


 家に価値のあるお宝ない? って聞いて、それはお前だ。なんて答えが面と向かって返って来た日にゃぁ、誰も彼もが赤面してしまうだろう。オジサマもオジサマで、恥ずかし気もなく良く言えたな。


「お父さんの言う通りよ。ウチの宝はリリーカなのよ」

「お、お母様まで……」


 子は宝。その姿勢立派だね。


「でもそうね。倉庫を漁れば何かあるかもしれないわね」

「倉庫……?」

「そうよ。もう十七年にもなるかしら。この街に腰を落ち着けた時、ちょっとバタバタしててね、要らなさそうな物を適当に箱に詰めて預けちゃったのよ」


 今はロマンスグレーのオジサマ達が、世界を股にかける冒険者だった頃に集めていた物か。在るかも、価値の高いお宝がっ!


「これが倉庫の鍵だ」


 オジサマが差し出したモノは、手首から薬指の先まで届く程の長さを持った、直径二センチ程の四角柱。全体にヒビ割れの様な模様が彫られていて、そのヒビ割れから淡い緑色の光を放っている不思議な鍵だった。


「これが鍵……ですか?」


 珍しそうに眺める私に、オジサマはそうだ。と応えた。


「そして、倉庫の場所は――」


 オジサマに教えられた倉庫に、私達は(はや)る気持ちをなるべく抑えて向かったのだった――




 お宝があるかもしれない。そんな高揚感は目の前に居る人物を見て吹き飛んでいた。ほんの一瞬だったが私は見た、あのルレイルさんがアルカイックスマイルを崩している所をっ!


「いやはや、まさか殿下がいらっしゃるとは思いもしませんでしたな……ところでアユザワさん。どうかされたのですか?」

「いやぁ、ルレイルさんもあんな表情するんだなぁ……って」

「私も人の子ですからね。驚く事もありますよ」


 アルカイックスマイルが崩れた所なんて滅多に無いから驚いているんじゃない。一時期、そういうお面なんじゃないかって思ってた時もあったくらいだし。


「ルレイル、ユーリウス家所有の倉庫を見たいの。コレ鍵ね」


 王女がオジサマから預かった鍵をコトリ。と置くと、ルレイルさんの表情も元のアルカイックスマイルに戻る。


「ふむ……確かにユーリウスさんの鍵ですね。畏まりました。では、ご案内致しましょう」


 ルレイルさんはアルカイックスマイルを輝かせてそう言った――

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