表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
101/235

百一

 王女を連れ戻す為に近付いた衛兵の一人が宙を舞い、倒れ伏す。衝撃で脱げた兜が、唖然としている私とリリーカさんの間を転がり抜けた。…………へ?


「姫! 御抵抗はなさらないで下さっ?!」


 今度は別の衛兵が壁際までスッ飛ばされる。鎧の胸当てに左手を添えただけで!? 一体どんなカラクリなんだ?!


 王女が玉座に近付くにつれて王様は一歩また一歩と後退り、ガタリッと玉座をひっくり返しそうな勢いで座り込んだ。いや、王女の気迫に座らされた。と言った方が正しいか。先程の威厳など何処にもなく顔面蒼白になっていた。


「お父様」

「ひゃ、ひゃいっ!」


 情けない声を上げる王様。周りの文官達は一言も発せず、私とリリーカさんも唖然としたまま室内は静寂に包まれた。


「私の友人であるこの者等を、何の罪もなしに処断しようとはどういうおつもりですか?」

「いいいいや、違う! それは違うぞマリエッタ!」

「何が違うのですか? 現にお父様は彼女を切り捨てようとしたではありませんか。その剣でっ!」


 王女は王様が持っている剣をビシリッと指差した。…………ん? 彼女(・・)


「ごごご誤解だっ」

「ミミズもゴカイもありませんわ」


 ミミズ? ゴカイ? ……ハッ! それって釣りエサだっ!


「でしたら、何を以って誤解と解くのです? 今スグ見せて頂きましょうか」


 ハァッ。と長いため息を吐いて玉座から立ち上がる王様。


「これは、その者を切る為のモノでは無くだな……こうするモノだったのだ」


 王様が床に剣を突き立てる。すると、玉座の後ろにある壁が揺らめき出した。揺らめく壁が徐々に薄くなって完全に消え去ると、別な空間が姿を見せる。ソコには、奥へと真っ直ぐに伸びる長テーブル。真っ白なテーブルクロスの上には、(しろがね)に輝くお皿や白磁の器に盛られた見た事もない料理の数々が、ホカホカと湯気を上げている。その様子に、私もリリーカさんもだらし無く口を開け……は語弊があるな。ポカンと口を開けていた。


「な……」

「なに……コレ」

「ぶわははは。どうだ? 驚いたであろうっ!」


 両手を腰に当てて豪快な笑い声を飛ばす王様に、私達の思考が追い付かない。


「娘が世話になった礼だ。存分に楽しんでゆくが良いっ!」

「お父様っ、こんな素晴らしい企みをしておられたのですねっ!」


 企みって……


 歓喜のあまり駆け寄る王女を王様は腕を大きく広げて向かい入れ、親娘の包容が熱く交わされる。直後、王様の身体がビクンと震えたと思うとその場に蹲った。お腹を抱えて床を転がる王様。そんな王様をよそに、マリエッタ王女は正拳突きの構えを取っていた。


「全く……それならそうと私にも教えてくれても良いではありませんか」

「ご、ごべんなざい……」

「さ、お姉様方。冷めないうちに頂きましょう」


 ニッコリと微笑むその笑顔は、あの時に見たマリーちゃんの笑顔だった――


 とんでもメーワクなサプライズだな、オイ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ