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 突如としてざわめき出した文官達。その視線はある一点に注がれていた。すなわち、私に。


「お姉様!?」


 スックと立ち上がった私を見て、リリーカさんは驚き思わず声を上げた。


「なんだ? お前は。謁見のしきたり、知らぬ訳ではあるまい? 無礼とは思わんのか?」

「無礼を承知で申し上げます。リリーカ=リブラ=ユーリウス様は何一つ悪い事はいたしておりません。王女様と知らずとはいえ、マリエッタ王女を連れ出したのは彼女では無く私で御座います。故に、処断するのならば、私一人のみにして頂きたい」

「ほう……」


 王様の目がスッと細まった。途端、背筋に冷たいものが駆け抜ける。


「ならばお前は彼女の罪を全てその身に受ける。と、言うのだな?」

「左様で御座います陛下」

「なっ! 何を仰っているのですかお姉様っ! ち、違います陛下! この御方は関係ありませんっ! (わたくし)のみに罰をお与え下さいっ!」


 背後から衛兵に抑え付けられたリリーカさんの目に涙が浮かび、その(しがらみ)から抜け出そうとする度に宙に舞う。


「その覚悟に免じて、お前の言う通りリリーカ=リブラ=ユーリウスに此度の罪は問わぬ。と、我が『アリエス』の名に於いて約束しよう」

「有難き幸せ」

「そんなっ!」


 王様がゆっくりと左腕を水平に上げると、玉座の脇に控えていた侍従が手に持つ剣を差し出した。




 鞘から引き抜かれてゆく剣の音に私は震えていた。幾度となく振り下ろされた刃の記憶。それが私を震え上がらせていた。でも、こうでもしなければリリーカさんを救う事が出来ない。彼女の地位が剥奪される様な事があっては、あのいけ好かないタケノコおやじ(フォワール卿)に、いいように扱われるだけ。権力を失ってもリリーカさん可愛いから何をされるか分からない。私なら大丈夫。だって不老不死だから。またスグに生き返る事が出来る。だけど、その後は……


 オジサマやおばさま。そして、リリーカさんとの決別を覚悟した時、王様の剣が鞘から抜き放たれた。と同時に、背後で扉が壊れたのかと思うくらい大きな音がした。その音を立てたのは、ストロベリーブロンドをツインテールに纏めている女の子。つまり、マリエッタ王女だった。


「お止め下さいお父様っ!」

「な、マリエッタ。ここには来るなと言っておいた筈だぞ。衛兵! 王女を部屋に!」

「畏まりましたっ! さあっ姫! 大人しくお部屋にお戻りをっ?!」


 王女を連れ戻す為に近付いた衛兵が宙を舞い、脱げた兜が私とリリーカさんとの間を転がったのだった――

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