the end of the sky 天side-8
伊東から大磯に戻ると結構な時間になっていた。
遥さんとは駅で別れ、タクシーで姉の家まで帰宅すると、咲さんが笑顔で迎えてくれた。
私は咲さんにしばらくお世話になる旨を伝えると、咲さんは優しく私を抱きしめてくれる。
「天ちゃん可愛いわ〜。ウチの空もこれっくらい可愛かったら良かったんだけどね〜。」
そんな事を姉に向かって発言。
「大変申し訳ございません〜。なんせワタクシ母さんの子ですからね!そんな可愛げ求められたって私には無理よ〜。」
ちょっと空気が悪くなってきたので、私は慌てて咲さんと姉の間に立つ。
私がお世話になる事で2人の関係がおかしくなるのは嫌だ。私は思いつく言葉で必死に2人をなだめる。
「あ、いえ、お姉ちゃんはとても可愛げがある人だと思います。遥さんの言動、私や咲さんに対してすぐ焼きもち焼くとことか、みてて可愛いなって。でも見た目は美人で性格はとても優しく。知的な感じがするとこなんかは凄く理想な姉だと思ってます!咲さんは逆に何事にも動じず、お茶目な面も多々ありますが、落ち着いた素敵な大人の女性って感じで、咲さんもまた私にとっては理想な女性であり、理想な母です。だから私は2人とも大好きです。」
そんな事を勢いで話すと、咲さんも姉も笑い出す。
姉は私の頭を撫でながら笑顔で答える。
「大丈夫よ天ちゃん。私達ケンカとかしないから。こんなのは日常茶飯事で、言うなれば青山家のコミュニケーションみたいなものよ。天ちゃんも早いとこ慣れてね!これから一緒に暮らすんだから。ただそんな優しい姉に対して焼きもち焼きとかお姉ちゃんどうかと思うゾ〜。」
頬っぺたを軽く左右に引っ張られた。
取り敢えずケンカじゃない事を知り一安心。
物心付いた頃には母がいなかった事もあり、娘と母親のあり方、接し方って言うのがサッパリぽんな私なので、若干戸惑いはあるものの、これが青山家独特のコミュニケーションの取り方というなら私も学ぶべきだろう。
郷に入っては郷に従えとも言うし。
私は2人に改めてご厄介になる旨を伝えつつ、一日も早く青山家になれる様努めたいと思った。
それから居間でお茶などを頂きながら、昨日は話せなかったこれまでの事などを話した。
姉が先にお風呂に入ると言ったので、私は咲さんとその間も色々話した。姉の小さい頃の話や私の小さい頃の事、初めて来た神奈川県の印象とかご飯の話。咲さんは私の話を優しい目で聞いてくれた。
私はそれがとても嬉しくて、娘の様に私と接してくれる咲さんがますます好きになった。
そんな事を思っていると、咲さんは急に思い立ち私を二階の姉の隣の部屋に案内してくれる。
「さっき伊東にいる時に空が電話くれたでしょ?だから慌てて用意したんだけど、この部屋天ちゃん使っていいからね。何かあれば遠慮なく言って。私はね、天ちゃんをお客様としてこの家に招いたつもりはないの。家族として、娘として天ちゃんと接するつもりよ。天ちゃんは小さい頃の空にそっくりなの。私はなんだか天ちゃんを他人だって思えなくてね。だから出来たらあなたにもね、私の事を本当の母親だと思って接して貰えたらとても嬉しいわ。」
私はその場で泣いてしまった。
そんな私を黙って抱きしめてくれる。
これが親子のあり方なのだろうか?
そうであるならば、私はとても無知だ。
しかし青山家の人々は私を泣かせるツボでも知っているのだろうか?
昨日は姉にも泣かされている。
何故他人である私にこんなによくしてくれるのか?私には正直理解出来ない。
だけど2人がとても優しい人達だって事だけは身をもって理解した。
咲さんが言う通り、私も2人を家族として接しようと思う。距離感なんかはまだ掴めないけど、受け身ではなく積極的に2人との距離を縮めていこう。
だから私はまず咲さんに向かってこう言うんだ。
「ありがとうお母さん」




