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天と空  作者: 東京澪音
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the end of the sky 天side-5

姉に言わせると、大磯駅から徒歩13分で目的のスーパーに着くとの事。


大した距離ではないので、目的のスーパーまで徒歩で行き、買い物が終わったら荷物もあるので、バスで姉の家に帰る事となった。


国道1号線を3人で歩く。


途中、またもやチェリオの自販機を見つけ立ち止まる私。スィートキッスが…ある‼︎


私が自販機を見ていると、遥さんが声を掛けてくれる。


「天ちゃん喉乾いた?僕も少し喉乾いたからジュース買おうっか!あ、天ちゃん何にする?僕はね、うーんスィートキッスだな!空はブルースカフェオレで、えーと天ちゃんはどうする?」


私も遥さんと同じものを!

…とは言えず、女の子らしくママの手作り風ココアを買ってもらった。


歩きながら飲むのはお行儀悪いからって事で、私達はその場でジュースを飲む。


気になってるのはやっぱ遥さんが買ったスィートキッスな訳で。

ココアを飲みつつ、遥さんが飲むそればかりに目がいってしまう。


「キッスってどんなだろう?」

私は小声で独り言の様にボソっと呟く。


「そうだね〜例えるなら柑橘系な爽やかな感じかな?でもそれだけじゃないんだよね。甘酸っぱさの残る、青春の味かも」


この人はとても大人だ!

キッスについてこんなにも爽やかに語れるなんて。


と言う事は、姉と遥さんは付き合ってる訳だから、姉もそれを知っている。


二人ともなんて大人なんだ!

「キッスて凄いんだね!遥さんは大人だね!」


すると遥さんが自分の飲んでるスィートキッスを私に差し出す。


「飲みかけで悪いんだけど、飲んでみる?言葉にするより体験してみるのが一番だよ。」


なんとなくそんなボケだとは思ってたけどさ、やっぱり。

でも気になってたのは間違いないし、ここはご厚意に甘える事にする。


「あ、じゃあ少し頂きます。」

遥さんからスィートキッスを受け取ると、私はそれを一口飲んでみる事にした。


うーん、確かに柑橘系な甘酸っぱい感じがする。キッスってのはこんな味がするのかね?よく甘酸っぱいって言うけどさ。って事はやっぱこのスィートキッスってのはキッスの味なのかもしれない。


もう一口。

そんな事を考えながらスィートキッスを飲んでいると、隣から素っ頓狂な声を上げる姉。


「あー‼︎ちょっとなんで⁉︎なんで遥君のジュースを天ちゃんが飲んでる訳⁉︎意味わかんない!それって間接キッスじゃない‼︎私だってそんな事した事ないのに‼︎なに遥君、私の前で堂々と浮気ですか⁉︎」


全然意識してなかったんだけど、間接キッスって言われて始めて気づく。


しかし今時間接キッスでそれだけ騒げるとか、最近の高校生は小学生よりウブなんですか?


見ると姉さんが遥さんの首を絞めてる。

私は慌ててそれを止めると、姉さんを落ち着かせる。


「お姉ちゃん今時間接キッスとか意識する人あまりいないよ。別に唇と唇が触れ合った訳じゃないんだし。それに遥さんがそんな深く考えて私にジュースを渡したと思う?ほら遥さんもなんか言ってよ。」


遥さんは何故こうなったかが分からない様子。私はそんな遥さんに一から説明する。


ようやく事の流れがわかったのか、遥さんは姉に謝罪を始める。


「ゴメンね空。僕はそう言うつもりで天ちゃんにペットボトルを差し出した訳じゃないんだ。どんな味がする?って聞かれたから、説明するより飲んでもらった方が早いかな〜って。軽率だったゴメンね。あ、でもこれだけは言わせて。僕がキッスしたいなって思うのは空だけだからね。」


最後の言葉が聞いたのか、姉は照れて下を向いてしまう。


「もういいわよ。私もちょっと騒ぎすぎたわ。天ちゃんが言うように、今時間接キッスで騒いじゃうなんてどうかしてたかも。私はそう言うと事に疎いから、少し過敏になってたかも。」


一件落着と言ったところだろうか。

しかし姉がここまで免疫のない人だと、将来が不安になる。遥さんも疎そうだし、これは私が一肌脱ぐしかない。


「あのねお姉ちゃん、お姉ちゃんて漫画とか全然読まないでしょ?今時の少女漫画はキッスなんて当たり前だからね。明日伊東行ったら家に寄って!私の漫画貸すから、しっかり読んで免疫つけてね。」


そんな話をしながら目的のスーパーにたどり着くと、一通りの買い物を済ませ姉の家に。全部の荷物を遥さんに持たせた所をみると、まだ若干ご立腹な様子。


私達は近くのバス亭からバスに乗り、白岩神社東で降りた。


お邪魔すると咲さんが帰ってきており、若干、いやかなり緊張したが、私の事を笑顔で迎えてくれた。


咲さんはとても優しい人で、母を知らない私にはその存在がとても羨ましく見えた。


「さ、じゃあご飯の支度するから、遥君と天ちゃんはあっちで待ってて。」


そう言われたが、私も料理はそれなりに出来るので、無理を言って手伝わせてもらう事にした。


私、姉さん、咲さん。

遥さんも手伝うって言ったけど、それを良しとしなかったのは咲さんで。


「青山家の台所は男子禁制です。遥君はそこで見てればいいの。今私が美味しいご飯作ってあげるからね。期待してて!」


そう言うとウインクして遥さんを台所から追い出す咲さん。


「ちょっと母さん〜!それ私のセリフ!なんで母さんがそう言う事言う訳⁉︎遥君は私の遥君なの!って遥君!今少しデレってしたでしょ⁉︎ひょっとしてやっぱ熟女好きなの⁉︎」


遥さんは咲さんに完全に遊ばれてるっぽい。咲さんは咲さんで完全に姉さんをからかって楽しんでる。


八つ当たりする姉さんと、少し困り顔の遥さん。でも少し羨ましいな。私はこんな賑やかだった事なんて一度もなかったから。


そんな事を考えていると咲さんは私に話しかけてくれる。


「ダメよ。そんなつまらなそうな顔しちゃ。いい女ってのはいつも笑顔を絶やさないものよ。そうすれば素敵な事ってのはあっちから自然と寄ってくるものなの。だから天ちゃんも笑顔でいなさい。そしたらあなたの人生はもっともっと素敵になるから。」


母とはこういうものなのだろうか?


母を知らない私にはとても新鮮で、その言葉に私の小さな胸は少しだけ踊った。

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