the end of the sky 天side-1
始めての一人旅は人探しだった。
私は今、神奈川県を目指して伊東駅から電車に乗った。
途中、熱海で乗り換え小田原へ。そこからまた小田急に乗り換えて大磯駅と言うところで降りる。
下調べは昨日のうちに済ませてきたとは言え、電車に乗るなんてあまりない事だから多少緊張している。
さて、何故そんな私が今大磯を目指しているのかと言うと、父が病気で倒れたからだ。
病気と言っても治らない病とかではない。このところ仕事ばかりで休みもなしで働いていた為、疲れが溜まりに溜まってしまい過労で倒れたのだ。
私には周りに頼れる親類がいない。母は身体が弱い人だったらしく、私を産むとしばらくして息を引き取ったと言う。祖父母は私が幼い時に他界している。親戚は少なく、皆関西で暮らしている。
父と二人暮らしの為、一通りの家事はできるんだけど、もしもの時には小学生の私一人ではどうする事も出来ない。
もしもの時の最後の手段として、父の兄妹を頼る事も視野に入れて、連絡先を探していた。
父兄妹の連絡先は幸い直ぐに見つかったのだが、それと一緒に見知らぬ連絡先も見つけた。
青山 咲・空。
あおやまさき・そら?
漢字は違うが私と同じ名前。
それと一緒に写真がある。若い頃の父とそこに寄り添う優しい目をした女性。これが咲さんと言う女性であろうか?
それと父に抱かれた幼い少女。この子が空ちゃんだろか?
何故こんな写真があるのだろうかと、多少疑問もあったが直ぐに答えに辿り着く。
それは以前にそれとなく父が話してくれた前の家族なのだろう。うん、多分そうだ!そっか、この人が前の奥さんと娘さんなんだ!何故直ぐそう思ったかと言うと、この子があまりにも私と似ているからなのだ。
と言う事は私にとっては姉と言うことになる訳だが…。
ふむふむ、うーん…。
気になり始めたらやっぱり会ってみたくなるもので、私は青山さん家の住所をメモすると、遠くからでもいい、ひと目会いに行こうと思いたち、現在に至る。
私と同じ名前の姉、空。一体どんな人なんだろうか?もしも私の名前も天だって知ったら驚くかな?それとも笑ってくれる?
そんな事を考えていると、電車は大磯駅に滑り込んだ。電車を降りると伊東と似た雰囲気がすると少しだけ感じた。
さて、ここからは冒険だ!
私はこの辺の地理は勿論の事、神奈川県はさっぱりぽん!辺りを見回し駅近くの交番に向かうと、メモしてきた住所を訪ねる事にした。
親切なお巡りさんに書いてもらった地図を受け取ると、ぐるっと辺りを見回してみる。
ここが姉、空が住む街なんだ!
素敵な街だな!そんな事を考えながらも、私は潮の匂いがする風に背中を押されて、大磯町を歩き出した。