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打撃高騰チーム、シールズ・シールバック!  作者: 孤独
キャンプ+オープン戦編
7/45

監督始動

キャンプ期間。この時間で選手達は長いペナントを戦えるだけの身体に仕上げた。

また、この間に成長した選手も多くいることだろう。


しかし、阪東が率いるシールズ・シールバックは違った。




「翌日からオープン戦だ」


ちゃんとした監督ユニフォームに袖を通し、スコアブックを片手にみんなに言葉を伝える阪東。


「分かっているが、練習試合や調整試合だ。各自の出来が開幕に繫がると思っていて欲しい」


阪東が監督になった以外では特別な練習をしていない。それは阪東の指示でもあった。特訓などをして怪我人が出ることを恐れていた。阪東はこのチームを初めて率いる。目を付けた選手達が離脱でもすれば、計算は一からやり直し。最悪であった。



「俺は特別なサインを出すつもりはない。好きなように打者が動き、走者が動き、投手が動けばいい。また、勝つ事が重要ではなく、中身を重視するつもりだ。全員の中身が良ければ自然に勝つ。当たり前だ」



監督としての熱を感じさせない。

選手の自主性に任せる戦い方。気楽な采配とも思える。



「ただ、怪我や病気などでの欠場を除き、こちらですでにスタメンを決めている。和光GM、津甲斐監督。選手達にオーダーを配布してくれ」

「分かった」

「どんな事情であろうと、この通りにやってもらう。変更はない」



1試合目、


1番.指名打者、友田

2番.ライト、本城

3番.セカンド、新藤

4番.キャッチャー、河合

5番.ファースト、尾波

6番.センター、地花

7番.サード、木野内

8番.レフト、マルセド

9番.ショート、旗野上


先発、神里

中継ぎ1、川北

中継ぎ2、井梁

抑え、安藤



2試合目、


1番.センター、友田

2番.レフト、千野

3番.ファースト、嵐出琉

4番.指名打者、コールドバーク

5番.ライト、尾波

6番.セカンド、新藤

7番.サード、林

8番.ショート、日向

9番.キャッチャー、栗田



先発、戸田

中継ぎ1、沼田

中継ぎ2、吉沢

中継ぎ3、ケント

抑え、植木



3試合目、


1番.センター、友田

2番.サード、尾波

3番.セカンド、新藤

4番.キャッチャー、河合

5番.ファースト、嵐出琉

6番.ピッチャー、久慈

7番.ショート、東海林

8番.レフト、地花

9番.ライト、千野


(この試合は指名打者制を捨てる)

先発、久慈

中継ぎ1、海槻

中継ぎ2、井野沢

抑え、井梁




4試合目、


1番.ライト、尾波

2番.レフト、本城

3番.ファースト、嵐出琉

4番.キャッチャー、河合

5番.指名打者、コールドバーク

6番.センター、木野内

7番.セカンド、岡島

8番.ショート、東海林

9番.サード、林



先発、川北

中継ぎ1、井梁

中継ぎ2、神里 (捕手は栗田)

抑え、安藤 (捕手は栗田)



一軍、もしくはそれに準ずる主力勢は最低一回でもチャンスがあるオーダー。

4試合あるオープン戦で阪東は何かを確かめようとしている。

それを感じ取っているのは数人。勘の良いベテラン達とか……。


「この中にベストオーダーがあるのか?」


河合はその意図が読めず、阪東に確認する。オープン戦だから出ない試合があるのは仕方がないことだが、それにしては勝つ形が見えてこない。


「ない!」

「マジか?」

「ともかく、オープン戦の出来でベストオーダーを作る。開幕投手もまだ決めていないからな」



阪東はあえて河合達に伏せている。

選手達の力量を測る時間はもう終わっている。このオープン戦でもっともやりたいのは、



"阪東自身による采配と決断であった。"



150試合もある中で常に同じ人間が出続けることが最良とは限らない。河合と栗田ではかなりの実力差があるが、体調や精神面、相手との相性によっては栗田の方が良い出来を生むことも有りえる。



1試合目はキャンプ中、動きの良かった連中を偏らせた。そのせいで、新藤を除いた選手が左打ちになってしまったのは仕方ない。

2試合目はキャンプ中、動きの悪かった連中が中心となっている。特に5番、6番が尾波と新藤となっているのは単純な嫌がらせ。本来なら、嵐出琉とコールドバークで入れ替えるべきなのだ。

自分の目でこいつは活躍できないと分かる眼力が、確かなものか。その自信を阪東自身に根強くさせたいのだ。




3試合目は打力重視。投手の久慈、海槻、井野沢は打力にも期待できる。そんな彼等を活かすためのオーダー。現時点では最強の攻撃力。同時に最弱の防御力。ジグザグ打線にしたのは阪東の理であった。


4試合目は阪東の頭の中にある理想の得点パターンである、1番友田と3番新藤を欠いた時のオーダーだ。効率が良い得点ばかり続くとは限らない。

この場で試し、どのように点が獲れるかを模索したい。阪東のその気持ちが溢れたオーダーだ。



結論。阪東は阪東しか、このオープン戦では試さない。自分を信じなければ選手達を信じられない。それが監督だ。





そして、オープン戦は始まった。相手の選手を計りながら、自分の決めたオーダーを見守っている阪東。

打線は評判通りと阪東の構想通りの状態になるだろうか……。



コンッ


「やる気でねぇー」



否!初っ端から友田、オープン戦なためやる気0!チームプレイも皆無!勝つ闘志も0!1試合目から6打数0安打と、一番打者としての役割を果たさない!

だが、これは想定内とも言える。友田は絶対にやる気がないと、メンバーの大半は感じていた。逆に足枷がいながらも、勝てる方が自信にもなってくる。



「やはり、友田はやる気がないんですね。やる気がでれば凄いのに……」

「どうかな?」



この天才は案外、手の内を見せたくないだけかもな。


「だり~、帰って彼女とデートしてぇー」

「ベンチで寝そべっているな!!プロ野球選手だろ!!」


そうでもないか。こいつ、単に早く帰りたいだけか。


「凡退しちまえ、新藤さん。河合さん。さっさと試合を終わらせましょう」

「俺達、負けることになるじゃねぇか!しっかり応援しろ!」

「頑張れー。地花ー。試合に出ろよー」

「俺はここにいる!お前の隣にいるだろ!スタメンだし!」


不真面目と生真面目が良い具合になっている。


「地花と友田って仲が良いよな?」


チームの雰囲気も大事だ。グラウンド以外にも目を向けなければならない。友田が寛容な扱いになっているのはライバルともいえる地花と、選手会長である新藤のおかげが大きい。


「やる気のねぇ、一番打者だな」

「まぁ、オープン戦なんだ。友田のことは甘く見てやれ、河合」

「お前がいなければ俺が友田をボコっているんだがな。打てよ、新藤」



この試合のキモはやはり、3番と4番。



カーーーーーンッ



「おーっし」



パカーーーーーーンッ



「はっははは、調整不足も良いとこだな!5月まで2軍で眠ってろや!」



1回表、友田と本城の凡退後。新藤と河合の2者連続ソロホームランで勢いづくシールバック。

友田がダメでも、完璧な調整をしてきた新藤と河合を中心とした打線は4回で7得点と凄まじい攻撃力を見せつける。友田以外、全員安打。バントや盗塁、エンドランなどといった小細工をなしにこの攻撃力はやはり警戒すべきものだ。



打撃陣の奮起によって、11-3という大差で勝利する。

オープン戦、初戦は見事に白星スタート。



「いやー。阪東監督のオーダー通り、攻撃的な展開で勝利しましたね」

「津甲斐監督。友田は例外だ」

「おっと、すみません」



とはいえ、監督の初陣を白星にしたのは阪東自身も嬉しいことだ。嬉しいと感じ終えたら、明日の戦いに備えた。


「問題は明日だ。とりあえず、どう負けるかがポイントだ」

「ま、負ける!?」

「90%負ける。負けることが逆に良いんだがな」



翌日のオープン戦。阪東の言葉通り、昨日とは違った試合展開であった。

友田は予想通りの無安打。そして、打線も湿りっぱなし。

3番、嵐出琉。



「シット!」


鈍い当たりが連発。全打席が内野フライという3番打者としては苦しい内容。



「HAAAAーーー!!」


凄まじい気迫と共に唸るスイング。突き抜ける風と、キャッチャーミットに収まるボール。


「オーノー!」


コールドバーク、なんと3三振という扇風機。4番打者としては恥ずかしい内容だった。この試合の打撃陣はボロボロ、2点をとるのがやっとだった。

また、守備面でもミスが発生する。日向と尾波の悪送球、新藤の守備範囲の狭さも現れて、序盤で5失点。後半もズルズルと失点していき、終わってみれば2-8と大敗してしまった。



足取りが若干重い選手達に対し、阪東は仕方のない負けだと理解しつつ、収穫があったことを確信した。そんなことを知らない津甲斐監督は尋ねた。


「今日は負けましたねー。やっぱり、河合がいないと打線はダメなんでしょうか?」

「負けても良いのさ。収穫はちゃんとあった」

「!な、なんですか!あまり良いところがなかった試合でしたけど!」

「尾波と新藤に下位打線だ。コールドバークまでの凡退は計算に入っていた。俺達の2点の内、1点は尾波を返した新藤のタイムリーツーベース。さらにもう一点は続いて林の進塁打から、日向の犠牲フライ。下位打線らしい仕事をしてくれた」


友田と新藤の両方の不在は考えたくもない最悪事態。その中で友田のバックアップを考えると、尾波がベスト。今日は1番、尾波。3番、新藤はコンビとして成立するかどうかの確認だった。


「でも、新藤ならどんな打者とも相性が良いんじゃないですか?尾波だってチームバッティングができる打者ですし」

「それはないな。尾波は繋ぐ打撃が多すぎるあまり、長打が減ることがある。一方で新藤は状況を強く理解するから、尾波を返せない可能性がある」

「強く理解するから?……ど、どーゆうことですか?」

「足の速さと相手の守備まで計算してしまう。二塁ランナーが友田なら単打で十分と判断できるが、尾波じゃ少し欲張らないと返せないといけない癖が出る事。今日は結果上手くいったが、次回は分からないな」



でも、合格点。保険の準備もできた。



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