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打撃高騰チーム、シールズ・シールバック!  作者: 孤独
キャンプ+オープン戦編
5/45

阪東視察

プロ野球のキャンプは盛り上がる。

東西合わせて12球団によるキャンプ情報は常にスポーツニュースの先頭を走っている。



その中で唐突に現れる新鋭監督、阪東孝介にもスポットが当たった。


「阪東監督はどのような経歴の持ち主なんですか!?」

「初日で河合達と対戦したのにはどーいった事実が!?」

「津甲斐監督は本当にクビなんですか!?」



激しいリポーター攻めであるが、阪東はメディアに一言。


「このチームを優勝させる以外、言葉を出すな。野球の邪魔だ」


面倒ごとは御免である。彼は野球人間と言うべき、カリスマ。頭の中で野球をすることのみを考えている。やってくるメディアを対応するのは別の男。



「はいはーい!質問はもうそこまで!阪東監督への取材も一切なしです!」

「津甲斐監督!?」

「津甲斐監督!あなたはお辞めになられてしまったんですか!?」

「なってない、なってない!いいか!私はメディア対応顧問に代わりました!質問とかは私が答えます!監督はいちお、辞めてないつもりです!」




阪東はキャンプ地を視察。

監督という名目をもらいながら、まだデータでしか選手達を知らない。また、昨年のデータなんてアテにならないものだ。向上する者、慢心する者、腐る者、様々である。

今日も快調な音を鳴らしているフリー打撃。



「フンッ!」

「おりゃーー!」



右打席に入っているのは一塁手の嵐出琉ランデル。右の大砲であり、外国でも活躍していた選手だそうだ。守備も上手く、攻守に置いて重要な選手だ。

ちなみに日本名の登録なのは日本に馴染んでいる事をアピールしているようだ。(阪東のいた地球の日本とは若干違う)


一方、左打席に入っているのは尾波おなみ ひで

まだ24歳と若き大砲であり、俊足の持ち主。守備もいちおであるが、ファースト、サード、外野全般を守れる。左利きである。

一昨年はトレードによって別チームにいたが、昨年また呼び戻されたそうだ。



「嵐出琉は五番、六番。尾波は三番、二番か」


右には新藤が、左には河合がいるわけだが。嵐出琉は河合と同じく、剛打と勝負センスを光らせる打撃。尾波は新藤と同じく、綺麗な打ち分けをこなす技術溢れることを魅せてくれる。

打のチームだけあって、良い部分がある。


両打ちの友田。

左に河合、尾波。右に新藤、嵐出琉。よく大砲を左右に2つずつ揃えられたものだ。ある意味、凄いGMなのか?


「お前、意外と有能なのか?」

「当たり前だ!優勝させることに必死だったわけです!」


いつの間にか隣にいるGMの和光。彼とスカウト達が必死に勧誘していた選手達なのだ。


「嵐出琉は2億プレイヤーですから!河合と新藤は3億!尾波と友田はもうすぐ1億!」

「5人にそこまでの価値はないな。お前、やっぱり無能だ」

「うぐっ」

「打者としてなら、安いかもしれないがな」



ほぼ打撃特化。

とりあえず、主軸の五人を間近で知れてある程度の実力を把握した阪東。次はブルペンに向かった。どうやら、ほとんどの投手が投げ込みをしているようだ。



パァァンッ



「!良い音だ」


表で尾波達がやっている打撃に負けない痛快なミット音が阪東にも届いた。

球を受けているのは旗野上。一方で投げているのは3番手投手の戸田。

エースの神里は河合が、大ベテランの川北は2番手捕手、栗田が受けている。

阪東がまず歩み寄ったのは投手ではなく、捕手を務めている旗野上であった。この旗野上、シールバックの守備固め要員であり、投手以外の全ポジションを守れる優れた適応力を備えていた。



「お前、本格的に捕手もやっていたのか?」

「高校時代は捕手でしたよ。今は試合に出られるならどこでも良いですけど」


キャッチングの仕方が投手の気持ちを引き出す良い捕り方だ。

そういえば、新藤との直接対決の時もこの男が捕手だった。

こいつが三番手の捕手らしいが、どう考えても捕手としてはこの旗野上が数歩リードしている。



「ナイスボールです!」

「当たり前だ、バカヤロー。何十年投げてきた球だと思ってやがる」


川北の球を受ける栗田。こいつは自分なりの型に持ち込もうとするタイプの捕手。一方で、川北は自分の投げたい球を投げるタイプ。相性が悪い。



「おい!今のボール!俺だったらホームランだぞ!もっとスピード出るだろ!」

「出るか!148キロくらいは出てるんだぞ!いい加減、変化球投げさせろ!」


河合に気の利いたリードなんてない。打撃同様に力で押していくリード。変化球を主体とするエースの神里は、捕手によって力が変わってくるタイプ。相性が悪すぎる。


「他の投手も見たいな」

「ならこっちに来てください」


先発陣で使えるのはこの3人だけ。また別のところで投球練習を行なっている投手達を見に行く阪東。

やはり、捕手で使えそうなのは先発陣の球を受けていた3人だけ。こっち側にいる二軍の捕手は使えそうにもない。一方で、先発陣と違って中継ぎ陣はかなりの実力派。和光がまた鼻を高くして阪東に紹介する。


「鉄腕の吉沢。右殺しのアンダースロー植木。左殺しのサイドスロー沼田。巨人投手、ケント。巧みな投球をする安藤。剛速球の井梁。中継ぎ陣は豊富で個性に溢れていますよ」

「うむ。こんなに種類がある中継ぎ陣は見た事ないな」

「彼等を獲得するのは大変でしたよ。6人で8億は……」

「お前、本当に金銭感覚は大丈夫か?」



回跨ぎが可能な吉沢。リーグでも珍しいアンダースローの植木。制球力はチーム一の沼田。155キロの直球と縦にキレるドロップカーブを中心とした変化球を投げられるケント。多彩な変化球に、150キロの直球、それらを低めに決められる安藤。日本人最速、165キロの速球に150キロのシュートとSFFを投げ込められる守護神、井梁。

個性がある中継ぎに少しの希望が見えてくる。


「個性があるのは分かった。しかし、欠点も見えてくるものだ」



中継ぎ陣のデータを再確認する阪東。

吉沢は先発から中継ぎに降格した形で芽が出てきた投手。敗戦処理としては素晴らしいが、勝負所では弱さも見える。植木はピンチの際に球が甘くなる傾向があり、クイックも苦手。沼田は一回こそ、確実に抑えているが回跨ぎをすればほとんど失点。ケントはノーコンで回跨ぎもできない、球数制限まであるおまけ付き。安藤はなんでもこなすが、年齢もあって連投がかさんでいくと大量失点も見える。シーズン終盤での敗北数は目立つ。井梁は典型的なノーコン剛速球投手。奪三振率と四死球率は同じくらいと酷い。


「他にできそうな投手はいないか?全員ではないだろう?」

「あとは清水や海槻くらいでしょうか。今、打撃投手をしていると思います」


昨年の大補強で、打者と投手が強化されたのはよく分かった。

しかし、守備がまったく期待できない。和光の金銭感覚はアレであるが、引き抜いてくる謎の豪腕を信じて阪東はお願いをした。



「今から中継ぎでも先発でもいいから投手を集めろ」

「え?」

「エース級を捜さなくてもいい、とにかく数だ。二軍の野手とのトレードでもいい。シーズン前に5人は集めてこい」



打撃の補強はポジションの関係もあってこれ以上はできないだろう。だが、投手ならまだ間に合う。

守備でアウトの一つをとることが大変なこのチームにおいて、理想的なアウトは三振だと阪東は答えを出していた。しかし、三振は球数が最低でも3球必要だ。また、長いペナントレースでは投手がどう考えても足りなくなる。ボロボロな守備陣によって、崩れる投手陣の絵図を描いていた。

多少、投手としての能力が低くても、こちらの打力を信じれば二流の投手でも勝ちが転がるかもしれないし、この6人の肩を休ませられることもできる。守備はボロボロだが、さすがに正面のゴロや内野フライを捕球できないというわけでもないだろう。相手が打ち損じた打球を確実に処理していくしかない。


「先発のコマも足りてないしな。早く捜しに行け、他球団に獲られる前にな」

「りょ、了解!必ずや、優良な選手を獲って来ます!」


おそらくだが、今年も神里、川北、戸田の3人を中心とした柱になる。また、神里と戸田は良くて7回。中継ぎの負担は見えている。

川北以外に完投ができる投手が欲しい。というか、先発が少なすぎる。



「じゃあ、最後にその他の連中を見に行くとするか」



守備は投手の厚さと数でカバーする。それに生じる失点を上回る得点を考慮するには、注目される五人の四番以外の野手の力が必要だ。


「阪東さーん!メディアを追い返しました!」

「津甲斐監督。丁度良い、和光を追い払ったから案内が欲しかった」




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