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打撃高騰チーム、シールズ・シールバック!  作者: 孤独
VS徳島インディーズ編
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35/45

下位打線

試合は延長10回裏。


「ピッチャー、泉に代わりまして、北田」



本来、先発の北田がマウンドに上がる状態。中継ぎの駒が足りなくなり、急遽登板させる野際。北田は先発だけでなく、中継ぎの経験もある。



「9回裏で決められなかったのは辛いですねー」

「河合、嵐出琉、尾波の並びに泉をぶつけるのは当然だろ」


とはいえ、あの3人が簡単に打ち捕られた。次にあの3人に打席が回るのは早くて、12回裏。

向こうの投手は、泉と肝須和が退いたが……。蛇屋とマイケル。10回の楽なイニングの穴埋めに北田を持ってきたか。


シールバックの下位打線。



7番、サード、林

8番、ショート、東海林

9番、レフト、千野



シールバックの上位打線。



1番、セカンド、旗野上

2番、ピッチャー、吉沢

3番、センター、滝




代打には地花と、福岡、岡島。それから日向。

本城と木野内は代打や途中交替で使ってもういない。代打の勝負を仕掛けたいが……。ミスったときは危険。それに旗野上と林をベンチに戻したら、守備がボロボロだ。

しかし、決めなければやられる。

安藤と井梁を崩してきて延長に持ち込まれた以上、流れは向こうにある。

モタモタせず、サヨナラで………



「むーっ」


だからといって、何か手があるわけじゃない。

そもそも……



「ストライク!バッターアウト!」

「北田!久々の中継ぎ登板ながら、アウトコースギリギリに決まったストレートをみせます!」


北田を相手に出塁するのは難しい。あっけなく、林が空振り三振に倒れた。

地花の一発を期待するか?だったら、林のところで使うべきだろ!



阪東、熟考。そうしている間にもゲームは進んでいく。この回で代打を出しても決定打を放てるキーマンがいない。

この回は捨てるしかない。1番から始まれば代打を上手く使って、河合の前にランナーを溜められる。


そーした作戦を立てたとき。想定外のラッキー?が起こった。



「東海林!センター前ヒット!カーブを上手く捉えました!」



ここまでパッとした成績は残していないが、コンスタントに出塁を記録する東海林にヒットが生まれる。ラッキーと表現するのもなかなか酷い。


「甘く入った。修正しないと」

「キレてはいたがコースが真ん中に近かったな。足もある奴だ(盗塁技術は高くないが)。牽制はしっかりいれておけ」


北田と名神達も、そこまで警戒はしていない。友田と新藤がいるのならやばかったが、後の奴等に走者を返せる力量はない。


「ここは手堅く送りバントですよね!?東海林の走塁は上手いですよ!」

「センターが別の奴ならそーするが」


友田でも本塁への突入ができない、センターのバナザードがいる。外野の鉄壁っぷりが勝負を決めさせてくれない。

2アウト2塁で長打を考えれば……地花。次点で岡島。

送りバントに最適な9番、千野が打席に立つ。

相手側も8割送りバントと読んでいる。相手とは違うことをここでやるか……



「ボール!!2ボール!」


1ストライク2ボール。まだ仕掛けられるタイミングだ。


色々あるだろ?送りバント、バスター、エンドラン、盗塁、プッシュバント、右打ち。様々な戦略があるはずだ。



「ストライク!」



打席を外し千野も、阪東を見た。何かサインがでると思っていた。悩む阪東に声を掛ける本当の監督、津甲斐。


「阪東さん。強行でいいんですか?」

「………粘れ」

「は?」


阪東はいろんな手があると思っている。強行もその手段の一つ。

だが、延長戦になってもインディーズの守備陣に穴がない。揺さぶりが通じるような選手がどこにもいない。セオリー通りの送りバントは織り込み済み。

むしろ、セカンドに旗野上が消えるとなれば得点のチャンスは増える。


「ファール!」


7球目もファールで粘る千野。



「おいおい。普通は送りバントだろ?」

「フォアボール狙いにしても、2-2だしな」

「ゲッツーになったら最悪だよ!」


観客もこの勝負場面で動かない首脳陣に渇染みた檄を飛ばした。普通はそうするべきだ。裏の攻撃であるなら1点あればいい。


「しつこいな!本当に!!」


北田は粘る千野にトドメを刺そうと、ストレートがアウトローに決まった。


「ストライク!バッターアウト!!」


進塁すらできずに空振り三振に終わる千野。打てる手がなくなった



「代打だ」



ここで動いた阪東。今の千野打席で得たのは手を打つための時間。旗野上を代えるのは大きなリスクも伴うが、


「日向!」

「え?」


ここで長打がある地花や、巧打を見せる岡島ではなく。あえて日向を旗野上の代打に送る阪東。確かに彼には一発があるが、安定した打撃ではない。地花達と比べれば格下。

そんな彼を選び、策を授ける阪東。



「北田はストレートに自信がある」

「はぁ……」

「だが、名神が上手くリードをするから、そう簡単には読み通りに来ない」



揺さぶりとかではなく。純粋な読み。



「4球目、膝元に140後半のストレートが必ず来る」

「!!」

「そこまで粘れ。4球目のストレートを狙い打て。どこでも良いから遠くに飛ばすんだ」


未来予知?本当の監督の指示がそうなら待ってみるのもアリだが……。ともかく、自分の力で北田を打つとしたら1割も確率はないだろう。

狙い球を絞って打席に立つ、代打の日向。



「ど、どーして日向を代打に?地花の方が一発がありますよ」

「出しても8割方、逃げられてしまう」

「その前に送りバントで得点圏に進めたほうが……」

「だから、逃げられるんだよ」


インディーズの策。微妙な気配を感じた阪東が、あえて日向を推したのは一発があることと、打率が地花や岡島よりも悪い事だ。

この回でシールバックの攻撃が終われば集中して代打を投入できる。

なんとしても、河合の前に走者を置きたい。


しかし、置けずに出番がくれば。3者連続四球(敬遠)をやってきてもおかしくない。一発でサヨナラとなるこの場面。絶対の信頼がある泉がいない状況で、真っ当に勝負できる中継ぎは、インディーズにはいない。

そして、下位打線は対照的な貧打。満塁という好機、1アウトではサヨナラにするのも難しい。



人の嫌がることをする上で、最上級な嫌な奴が指揮をとっている。



反面。


「自分達の思い通りに敵が動けば、ついていく奴等だ」


そー発言するが。実質手詰まり。

しかし、それは野際のような相手を攪乱させたり、意表を突くといった。いわゆる虚を突く戦いを繰り広げた場合だ。

そもそも、シールバックとインディーズでは選手達に違いがある。大技が得意なシールバック打線に対し、小技や指示をしっかり全うするインディーズ打線。

合わせる必要はない。むしろ、こっちの野球を迷いなくやること。


日向に4球目の球種とコースを伝えたのも自分達らしい野球をするため。


「ま、日向に期待しようじゃないか」



阪東は人の嫌がる手を打たず。あえて、人が好むところを狙っていた。

北田は多彩な変化球を持っているが、速球派。ストレートで河合も打ち取っている。追い込んだらストレートを使いたがるのは目に見えている。



ただ、ストレートが先発時と同様に走っているとは思えない。三振を2つとっているが、どれもコースが良かったことと打者に恵まれたこと。

その球自体の威力は少ない。尻上りに伸びるストレートに達していない。



「ストライク!」



追い込んだ。日向も必死にストレートにタイミングを合わせているようだが、まだ合っていない。次が勝負球で問題ないか。

中継ぎできたからか。ストレートより、カーブがキレている。名神は受けていてそれを決め球にしたいと思っていた。

しかし、四球目。北田は名神のサインに首を振った。



『格下相手になんで変化球?ズバッといきたいよ』


北田からすればストレートで2つの三振を奪っている。一方でカーブは、東海林に打たれている。

投手の気持ちが出た瞬間。


『……分かったよ。なら、内だ。膝元に入れろ。打たれてもファールだ』



コントロールだけが頼り。林、千野と、追い込んでから外のストレートを振らせてきた名神。当然、決め球が外一辺倒であれば読まれている危険もある。そこまでの段階もまだ済んでいない。

変化球を挟んでからならストレート勝負も悪くないが。少しの気の逸り。それを許した名神にもなんらかの奢りがあったのは事実。


北田のストレートがそれほど走っていないこと。もう一度それを理解していれば結果は変わっていただろう



「!!」


ホントに4球目にストレートがインローに来た!?しかも、甘い!



阪東の大予言が的中!!この球を必死に打ちに行った日向の打撃は高々と上がってレフトへ。


「おっ?」

「いや……」



北田も名神も一瞬焦った。ホームランになるんじゃねぇかと?

だが、上がり過ぎている。


「面白いところへいった!」

「そのまま伸びればホームランだろ!!」


大飛球とは面白い。ドームで上がり過ぎれば天井に当たってツーベースなんてこともあり、広い球場ならば外野フライにも変わってしまう。荒れ狂う暴風が吹いていれば球の軌道は変幻自在。


「伊倉!捕れ!!」


レフト、伊倉もフェンスに張り付いてボールを捕ろうとしていた。

この打球がセンターなら捕れたボールだ。しかし、扇状の野球場では捕れないボールに変わってしまう。



「俺はバナザードじゃねぇーんだぞ!これは捕れるわけねぇーだろ!」


最大限ジャンプして、フェンスに直撃する前に大飛球を捕ろうとしたが失敗した伊倉。積極果敢な守備の代償による痛恨の記録されないエラーだった。打球は伊倉から離れるように前へと転がっていく。

クッションボールの処理はセンターのバナザードが行なった。



「走れーー!東海林!!」



滞空時間が長いフライだったため、東海林はすでに三塁を蹴っていた。

いくらバナザードでも本塁突入を阻止するには遠すぎる距離だった。



「ホームイン!劇的であり、あっけない幕切れ!!日向のタイムリーツーベースでシールバック!連勝を続けます!!」



思わぬ伏兵の一発で勝利を手にしたシールバック。どんちゃん騒ぎを始める選手達に対し、津甲斐はとても気になって楽しい顔で阪東に尋ねた。


「凄い采配です!代打が完璧に決まって、4球目は阪東さんの言った通り!インローのストレート!!凄い!どうして分かったんですか!?」


サヨナラ勝ちの興奮をよく現している顔だった。

そんな期待に応えられない阪東の解答。


「別に分かっていなかった」

「え?」

「テキトーがたまたま当たっただけだ。簡単に言えば、俺の狙いは日向にしっかりとスイングしてもらうためだ。フルスイングしろよりサインらしいだろ?」



などと言うが、それでも色々な考慮で絞った答えなのだが……。



「津甲斐監督。敵が何を投げてきて、どのコースに来るか分かっていたら打ちやすい」

「そ、そうですね!打つ姿勢が大分変わってきますね!」

「バントや盗塁、エンドランといった野球は野際達の野球だ。俺達は小細工なんかより、力で押す。こーいった指示の方が嵌る」



阪東がなぜ、ストレートと読み。そのコースがインローと読んだか。

林と千野。それから東海林の打席を考えれば、決め球はストレートにしたい。北田としては……。ただ、名神からすれば打たれてもキレのあったカーブで勝負するのが安牌だと感じていた。

北田は追い込んだらストレートで決めたかった。内心、ストレートが思うように走らなかったと感じていたはず。注意する必要がない下位打線を早めに切りたかった。

普通ならドンっと構えて。じっくり攻めれば四凡は確実。



北田の気持ちを考慮することと、配球のパターンが同じように続いたこと。

そして、日向のタイミングがまだストレートにあっていなかったこと。


名神は無理せず。インローのボール球で内野ゴロをとらせようとした。見送られても、カウントは2-2と投手に余裕がある。林と千野からとった三振も、内を突いてからの外のセオリーだった。ストレートの勝負はまだいけたのだ。



「え!?じゃあ、実際は日向にボール球を打てとかになったと!?」

「そうなるな」

「無責任過ぎ!結果が全てじゃないですか!?」

「配球は基本、無責任で結果重視だ」



肝心なところで北田のコントロールミス。打たれた直後も、本塁打ではないと安堵のような顔を作っていた。投手としての力量では素晴らしいが、性格にその隙があった。


「もし、打者が地花や友田といった強打者じゃなければ結果は違っていただろ」

「え?」

「名神のサインをちゃんと守って、しっかり外していた。北田は今日のストレートの勢いでも日向を殺せると、侮ってストライクゾーンに通した。結果、あの様だ。人の嫌がることをするのも常套だが、自分が優位に立ったと思っちゃいけないんだ」



むしろ、人の嫌がる戦法は自分達が弱い。または劣勢と認めていることだ。

嫌いじゃないが、得意だと勘違いするのは良くない。




阪東は口にしなかったが。今日の試合のヒーローは、大鳥から3ランを放った尾波。それから10回裏でヒットを放った東海林の2人だと思っていた。

東海林が上手くカーブを打ってくれたものだから、北田が少し動揺していた。日向の打球を引き出したのは東海林のおかげ。




ま、彼は地味だから。そんなことは一切報道されないんだけど……。


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