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打撃高騰チーム、シールズ・シールバック!  作者: 孤独
VS十文字カイン編
13/45

戦力加入

和光GMからの連絡を受けて、今日。新戦力が2人加入する。



「シールバックに須見投手、パリッシュ投手が同時入団しました」


西リーグのチームにいた一軍半と言われる投手、須見。右のオーバースローでMAX155キロの快速のストレートと、110キロ台のカーブとチェンジアップを駆使する投手。

先発も中継ぎも、抑えも経験しているという中堅投手であった。将来有望の若手外野手とのトレードでの成立であった。



「今日からよろしくお願いします」



年齢と共に制球難に苦しめられ、四死球が多い。昨年は戦力外通告間近まで来たと言われている投手だ。


「パリッシュ・パウ!チームヲチャンピオンニスルネ!」


外国の独立リーグのストッパーとして在籍していた、豪腕投手パリッシュ・パウ。彼のストレートはなんと160キロを計測する。精度は低いがチェンジアップと、SFFを投げる。須見同様にノーコンであり、劇場型の抑え。

共通して、


「2人共、ノーコンじゃないか!」



どうやらスカウトや編成チームはストレートだけを見るようだ。ノーコンというのは阪東のような指揮官にとって扱いづらい部類。


「いやでも、二人も加入させたんですよ」

「それは認めるがな」


和光の首を絞めながら、阪東は彼に今度は無茶なお願いをする。



「できれば、コントロールの良い投手を連れて来い。まだ3ヶ月ある。探し出して来い」

「りょ、了解しました(布宮社長並に怖ぇっ)」



阪東が怒りを見せているのは当然であった。先日、カイン戦で登板した植木が肩に違和感があるようで、二軍に落として休ませる選択をとった。

そろそろ選手達の力ではなく、監督やその上のGMなどの編成チームの力、金の力が重要となる。植木はコントロールが良く、回跨ぎもやってくれる。自滅しにくい投手は、このボロボロな守備陣にとっては光でしかなかった。



「守備と打撃は両立できない。アウトは投手頼みが現状だ。言っておくが、アウトをとるのが投手の仕事。他球団よりも投手に求めるレベルは厳しいぞ」



須見、パリッシュはシールバックの希望の光となるのか!?

ともかく、2人共。まずは二軍での調整から始まった。



「あ、あんなになって和光を脅さなくてもいいのでは?」

「津甲斐監督は優勝したくないのか?」

「い、いや!優勝したいです!!」

「まだ手がつけられていない良い選手はいるはずだ。こっちは優勝しなきゃいけないんだから」


須見はやはり他球団からのトレードという事もあって、経験はちゃんと見えてくる。ストレートはまだまだいける。植木の代役は清水がしばらく務める。2人の一軍デビューは早くて来週だろう。


「怪我人も出てくるし、疲労も見えてくるだろう。そんな時、チーム全体で支えあわなきゃならない。人が少なくて困ることなんかありゃしない」


先発もいけそうか?

4月の時点では1位であるが、先発陣は神里と川北が3勝。久慈が2勝という。層の薄さが目立っている。敗戦処理担当の中継ぎ、吉沢がこの時期に3勝もしている状況だ。



ズパアァァンッ



「GREAT!」



一方で、自慢の剛速球を阪東に見せつけたいパリッシュ。

どう考えても打てそうにない。なぜならストライクゾーンから大きく離れているボールだからだ。



「ボールの圧力は凄いですね」

「あれでストライクをくれたらいいがな」



変化球も時折見せてくれたが、一流とは程遠いでき。

阪東はパリッシュの武器がもう一つあるか調べるため、自らレガースを装着して自ら捕手として座ってあげた。津甲斐などは、捕手もできるのかと、唖然とした口の開き方をしていた。

パリッシュのボールを受ける前に一つ話をしてみた。



「パリッシュ。ナックルという変化球を知っているか?」



ナックルとは。

指でボールを弾いて無回転状態のまま投げ、不規則な変化を生み出す魔球とされている。日本人で習得している投手はほぼ存在しておらず、メジャーリーガーではこの変化球を磨き上げて何年もエースとして君臨している選手もいる。

ちなみにエースの神里もエセであるが、ナックルを投げることができる。



「どこにいくか分からないから、俺でも捕球するのに苦労した」


つまり、阪東はナックルを捕球できるってことか?


「捕球しにくい球はストライクになりにくいが、同時に打者から打たれる球でもない。好きなところに投げて来い」



160キロの直球。これを正確に打ち返すとしたら、どこにボールがやってきやすいか読むことが、攻略の一つだろう。

しかし、投げる本人ですらそこにいくか分からずに投げていたら、打者にとっては脅威だろう。



ドパアァァンッ



「もっと力を込めて良い。俺は逸らさない」

「YEAH SIR!」


本当に逸らしていない。どこにボールがいくか分からないはずなのに、なんで余裕で捕球できるの?


「フォームからある程度予測はつく。予想が当たらずとも、経験で止められる」

「河合が聞いたら卒倒するレベルにいる」


阪東が成しえる技であるが、パリッシュの直球は荒れるといってもまだ手が届く範囲内だ。



ドパアァァンッ



「なるほど」



抑え経験者にしては随分と球の威力を維持できる能力がある。

荒れているが、2,3試合はごまかしごまかしで使えるかもしれないな。ストレート重視なら河合とも相性が良いだろう。

吉沢に変わって敗戦処理を任せる考えもありだな。



「ケントと併用としていこう」

「ケ、ケントと!?あれは火消しの役割ですよ!」

「それの代役は沼田がいる。ケントには球数制限がある。外国人登録枠も考えると、ケントとの併用で運用するしかない」



それにケントもここのところ連投が続いている。球数制限もある投手で、四球も増えてきているとあっては身体に疲れは見えてきている。


「来週のカイン戦でケントと入れ替えだ」

「ええっ!?早くないですか!?」

「普通だ」


植木とケントを少し休めれば、後の沼田と井梁、安藤の休みを作れる。完投ができる投手が少ないこのチームでしくじれないのが、中継ぎの運用だ。

ひとまず、植木とケント。沼田と吉沢。井梁と安藤。そして、須見とパリッシュの二組をローテションして、調整させていく。



「須見もパリッシュの様子を見てあげることにしよう」



選手の力で成績が決まる4月は終わった。ここからだ。




「ピッチャー、戸田に代わりまして、パリッシュ」




そして、カイン戦はやってきた。

ケントを2軍に落とし、再来週に合わせて調整させる。じっくりと肩の疲労を抜いて欲しいと労った。彼の代わりは新加入のパリッシュ。


「あいつが噂の剛速球投手かい。こりゃ真剣勝負だな」


この驚異の豪腕に、対する打者は



「5番、サード、魚住」



日本人とは思えない超巨漢スラッガー。魚住 鋼!

6回表、ノーアウト、ランナー無し。

現在、カインが2点リードしている状況だ。これ以上の失点は避けたいシールバック面々。魚住は怖い打者であるが、この後はクリーンナップと比べれば格が大分下がる。



「ともかく、魚住に打たれなきゃいい。四球でも勝ちだ」


超巨漢なだけあって、足は鈍足。二塁打も少ない。怖いのは本塁打だけ。



「河合同様、速球系に強そうですよね。あの魚住は」

「ガタイだけ見ればな。だが、河合よりも変化球の対応には良い」



なんて、魚住を評価する阪東であるが……。パリッシュはほぼ直球のみ。二流の変化球を読まれでもしたら、一発喰らう可能性は高い。

ここは腹括って強気の直球しかない。頼むぞ、河合。お前の力押しのリードで攻めていけ!



「おーっし。良い球を投げるじゃねぇか!」


今日、初めてパリッシュの球を受けた河合。

同じ中継ぎである井梁の方が球が速い。しかし、重さはこっちのパリッシュの方がある。荒れている具合は同じだ。


変化球はチェンジアップとSFF。だが、どれも使えるレベルじゃねぇって阪東は言っていた。力押しで良いんだよな?



パリッシュ VS 魚住。

これが彼の来日初登板にして、初対戦となる。この磨き上げた豪腕がどこまで通じるか。



「ボール!」



いきなり、ストレートが155キロ。ストライクゾーンに掠めもしなかったが、その威力は受ける河合も、打者として立つ魚住も感じ取る。



「ボール!!」



インハイ。それも打者に当たりそうな胸元に行く直球。魚住も少し仰け反った。



「怪我は勘弁して欲しいんだな。病院食マズかったし」


狙ったところにいっていない気がする。緊張ともとれるが、ストレートの威力に加減が感じられない。ノーコンの可能性もある?考えて打とうとすると、打ち損じやすい投手か?甘いところにボールを絞るとするか。



「しっかりストライク投げろや!パリッシュ!(日本語わかんねぇだろうが)」


思った以上の荒れ球だな。こいつ、ストライクをとれるんだろうな?俺は直球しか要求しねぇぞ。



しかし、3球目もボール。ストライクがまったく入らないパリッシュの直球。


「ど、どうするんですかー!ストライクが入ってませんよー!」

「別に歩かせてもいいっての」

「ええっ!?」

「魚住に盗塁はない。代走を出してくれるならありがたいさ」


変化球は投げさせるなよ。

魚住の打ち気は消えていない。甘い球は打ってくる。こいつをストレート一本で抑えられれば、十分通じる。



「ストライク!」


奇跡に似た何かを感じた。直球がストライクゾーンを通過。これでようやく1ストライクだ。だが、これで魚住の打ち気は益々高まっただろう。

手が出しやすくなったカウントだ。四球なんてケチなことは考えなくなった。


5球目。相変わらずの荒れ球。インコースに来たボールを魚住は狙った。



「ファール!」


タイミングが合っているキャッチャー後方へのファール。157キロの直球をよく合わせられる。

フルカウントとなっても、魚住の頭にも、河合の頭にも、もちろんパリッシュの頭にも変化球という選択はなかった。

あるのは、在り来たりな力勝負!



キーーーーーンッ



154キロの直球。先ほど同じインコースのボール。魚住はやや振り遅れながらも、芯で捉えてみせた。当たり方でいえば、魚住の勝利。



パアァッン



しかし、打球はライナー性。サードの左側に強く流れていった打球。



「アウト!」

「った~~。そりゃないだろ」

「林さん!ナイスキャッチだ!!」

「ほぼ真正面だったぞ、河合」


悔しがる魚住。ヒット一本を損したとも言える。飛んだ方向が良かった。

ひとまず欲しい1アウトをもらったパリッシュ。ここから勢いに任せた投球が続いた。

6番、パトリックをファーストフライ。7番、キャッチャー、秋元を四球で歩かせるも、8番の高崎を三振。


7回表。

代打、佐久をショートゴロに打ち取る。さらに1番の杉上までもファーストゴロに仕留める。テンポ良く2アウトをゲット。

しかし、2番、野尻、3番、新潟と四球で歩かせてしまう。



ギィィンッ


「鈍い音!打ち取ったか!?……いや、センター前か!!」



4番、曽我部にセンターの前に落ちるポテンヒットで野尻が生還。続く魚住はセンターフライで抑える。

7回裏。パリッシュのところで代打の木野内が送られ、ここでパリッシュは降板が決まった。


2回、四死球、3つ。1安打。1失点。球数、45球。

まだまだパリッシュの活躍はこれからであった。



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