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打撃高騰チーム、シールズ・シールバック!  作者: 孤独
VS十文字カイン編
12/45

弱者虐待

向こうのプロ野球同様。1カード、3試合である。

開幕戦からまたしばらく時が経ってから、カインとの四回戦が始まった。



「このカードはラッキーだろ?」


ベテラン木野内は、前節で負け越しを喰らったカインを相手に余裕な発言を出す。勝負は分からないじゃないかと思うだろうが、違っている。



「なにせカインは前カードで、上滋と井ノ口を使っている。このカードじゃまず投げてこない。投手陣の弱さはリーグ一だからな」

「それに引き換え、こっちは第五回戦を川北さん。次に神里。勝ちをもらわないとダメですね」




表ローテと裏ローテ。

雨の関係でカイン側はローテションがズレ、シールバックを相手に裏ローテで望むことになったこのカード。


「とはいっても、このカードの初戦は絶対に落としたくない。ここを勝って勢いに乗ろう!」

「3連勝するぞ!」


鬼門は4回戦だ。こちらの先発は海槻。カインの重量打線を抑えられる投手ではない。また、中継ぎ陣もここのところ連投が多く疲弊している。カイン戦の後は移動日であり、肩を少しは休ませることができる。



ここで3連勝できれば、次のカードはリーグ最弱のチーム。勢いよく勝利が嵩めば、この月。一位でいける。


「阪東さん。カイン打線を抑える秘策とかはないんですか?」

「そんなのがあればとっくに教えている。あるわけがない」



そう弱気なことを言う阪東であるが、まだ4月と考えて手を明かすつもりはなかった。現在のリーグは1チームを除き、混戦状態である。

今は選手達の力と勢いで順位が決められているだけで過ぎない。監督の本当の実力が試されるのは中盤からだろう。

もうすぐ、試合が始まる頃。一本の電話が津甲斐にやってきた。


「和光GMからだ、はい!津甲斐でーす!……うん。うん。ええっ!?本当か!?凄いな!一気に2人も来るのか!分かった!阪東さんに伝える」

「和光からなんの連絡だ?」

「良いニュースです!阪東さんが求めていた、投手をまずは2名確保したそうです!来週には入団が決まるそうですよ!」



1人は他球団で投手を務めていた選手。一対一のトレードが球団内で成立。もう1人は外国人。外国人スカウトの目が留まり、即加入させたそうだ。


「一度、実力を見てみたかったが。今はその時期ではないからな。入団を楽しみにしよう」

「そうですね!きっと良い投手なんだろうなー」


中継ぎ陣の負担は大きい。2人の加入で少しでも負担が減れば……。とはいっても、試合を指揮するのは監督。扱い方を調べる時間も余裕もない。こっちのサン連戦の方が大事だ。



「今日のスタメンはこれだ」


1番.センター、友田

2番.ライト、尾波

3番.セカンド、新藤

4番.キャッチャー、河合

5番.レフト、地花

6番.ショート、日向

7番.ファースト、嵐出琉

8番.サード、林

9番.ピッチャー、海槻




「向こうの投手が万全じゃないのは分かっているだろう!今日も攻めて攻めて、相手の中継ぎ陣まで打ちまくること!」



春先不調の嵐出琉は7番という楽な打順にさせる。上位での凡退は避けたいリスクであった。


「相手の打線を超える打線で勝てばいい!今日もそれだけだ!なぁっ!?リーグ最強の打線は俺達だろ!?」




投手陣が充実していないチームが嫌がるのは乱打戦、ワンサイドゲーム。カインの見える弱点は投手の弱さ。ここを突きこめば、5回戦、6回戦を乗り切れる可能性も上がってくる。

また、カインを連敗に追い込めば早々にペナントレースでの争いを一歩遠ざけられる。野手陣が強力なチームだからこそ、早めに落としたい。




そして、第4回戦は始まった。

阪東の檄と先発投手のレベルが低いせいもあって、初回から4得点。新藤のスリーランと河合のソロホームランが飛び出す。


カインも、4月好調の杉上を中心とした攻撃パターンで着実に得点を重ねていくが……。



カーーーーンッ



「河合!この試合、2本目のホームラン!!ツーランホームランでさらに突き放した!!」



四番、河合。弱い者虐めと死体蹴りの力を発動。

この日の河合は止まらなかった。6打数5安打、2本塁打。文句なしで今日のヒーローに選ばれる。一方で打たれながらも海槻を7回まで好リードしてみせた。

11-3でシールバックの勝利。前のカードと合わせると2連勝。



さらに五回戦。

阪東は左打ちを多く並べる打線を組み込んだ。カインの先発が右であることと、左の中継ぎが不足していることを見抜いてのオーダーだった。

河合を中心とした打線は今日も止まらない。

唯一スタメンで打てなかったのは本城だけで、あとは全員安打。


ベテラン木野内のタイムリーヒット。外人のマルセドのソロホームラン。主力の打者以外にも光が当たった試合であった。また、神里がカインを相手に1失点完投勝ち。




続く六回戦。

シールバックのような打線重視のチームに一度流れが来るともう止めることは難しかった。

カインは要所要所で、高崎やパトリック、新潟がファインプレイを魅せて守備から流れを作ろうとしたが……



キーーーーーンッ


「つ、ついに嵐出琉のバットが火を吹いた!待望の1号!!ツーランホームランだー!」


スランプ脱出の兆しか。嵐出琉の一発から、鉄壁の守備すら無力化する本塁打攻勢で押していく。7回まで5点を挙げてみせる。

先発川北は6回1/3を4失点とまずまずの成績。ここで昨日、神里が完投したことを機に中継ぎ陣をガンガン投入していく阪東。川北が杉上を走者として出して降板しても、沼田が新潟を打ち取り。曽我部を植木が打ち取った。見事な継投であった。



トドメに。



「また河合だーー!三戦連発!!ダメ押しのソロホームラン!!弱い者虐め、本領発揮だー!」



9回表。河合の一発で2点差。

最終回を井梁がキッチリと締めて3連戦を全て勝利。ものの見事に勢いを掴み取ったシールバック達であった。



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