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打撃高騰チーム、シールズ・シールバック!  作者: 孤独
VS十文字カイン編
11/45

電光石火

150試合ある。

6チームの中でもっとも勝率を高くしたチームが一位となる。


開幕戦を落としたからといって、カインの監督である渥美に焦りはなかった。

前の試合は阪東という人間の本質を探っていた。特別な奇襲ばかりを仕掛ける監督だったらやりやすかったが、これといって普通な戦い方をするのだ。



「どーいう人か分からないけど、この短期間でよくここまで自分の選手達を信じられるわね」



調子の良い選手の見極めの良さ。

開幕戦では友田と新藤が共に2安打を放ち、2人の攻撃をきっかけに得点を挙げている。最良の得点パターンだと理解している。



「はいはい!さすがに昨日の私達は良いところがなかったから!今日くらいは良いとこ見せてファンに期待させてもらいましょ!!敵地にも乗り込んでくれるファンもいるんだから!!」



渥美はファンを意識した鼓舞の仕方でチームの士気を盛り立てる。女性監督という立場からか、周りの雰囲気をよく大事にしている。人気監督の1人として注目もされていた。


「普通にやっていいのよ!セーフティなんていらないから!杉上くん!」

「うっ。まぁー、任せてください」



昨日はノーヒットの杉上。攻撃の基点が働かなければ得点力は大幅に落ちる。


「今年は友田に負けられない。アレを認めてたまるか」


完全な才能の塊。ただ1人だけに宿ったものだ。それを遊んでいる使い方が許せなかった。昨日は友田が、今日は杉上が動く。



セーフティバントは何十試合と重ねてから成立してくる攻撃パターン。まず、内野陣が警戒しないこと、次に相手投手が逃げに回っていること。初戦の初打席は確かに奇襲かもしれないが、サードがちゃんと読んでいた。

しばらくはバットのみでいくしかない。



お互い、投手以外は同じオーダーで第二回戦を始めた。

シールバックはエースの神里。カインは上滋。二番手エース対決は初戦と違って、投手戦の様相を漂わせた。


神里は新潟と魚住のヒットのみで打者一巡を凌ぐ。

一方で、上滋も河合の二塁打のみで打者一巡を凌ぐ快投。打撃力が高い両チームにしては珍しい兆し。


「今日の上滋のフォークはヤバイな。キレッキレだ」

「見逃せば大抵ボールだ。しっかりとボールを見極めよう」


様々な球種を持つ神里に対し、上滋は脅威の落差があるフォークに、スライダーも一級品。さらにストレートはMAX150キロと厄介な投手だ。

攻略するきっかけも掴めそうにない。俺が打ち砕こうと皆が打席に立っているが、気持ちだけでは崩せない一流投手。

5回まで未だに河合の二塁打のみ。一方で、6回表。平凡とも思える打球となってしまった当たりを。



「セーフ!!セーーーフ!!」



1アウト、1塁。驚異的な足による内野安打でようやく出塁する杉上。彼ならばツーベースを打ったも同然。



「よーやく、突破口が開いたかな?」


渥美監督も今まで不甲斐ない打線の光明に笑顔がこぼれた。すぐさま、サインを飛ばして仕掛けにいった。



「あわわわわ。よりによって杉上が塁に出ちゃいましたよー!」

「ただのセカンドゴロでセーフにされちゃ、相手を褒めるしかないさ」


データでも杉上の盗塁シーンを何度も確認している阪東。しかし、生でその盗塁を見られれば情報がより鮮明になる。

ともかく、杉上を二塁に置かれたら一気に持っていかれる。神里も河合も、杉上を警戒する。しかし、2番の野尻を歩かせたら強力なクリーンナップだ。大量失点は免れない。



パァンッ



「ボール!1ストライク、2ボール!」



牽制を何度入れてもあのリードかよ。嫌な走者だぜ、走りたがりな奴は。それとこの野尻も、ボールにまったく反応していない。8割方、杉上の盗塁待ちだな。

しかし、歩かせたら意味がない。ともかくここはストライクしかねぇ。なおかつ、杉上の盗塁を刺せるボール。

ストレートしかない。



杉上が走者として存在しているだけで、バッテリーの選択は狭まる。特に神里のような軟投派の投手にとって、ストレートが多用となるのは辛いことだ。



「それが狙い球!」



盗塁と刺そうと思えば、投げてくるコースも球種も限定されやすい。打者である野尻、監督の渥美もそれを理解しており。最初からクリーンナップに回さずに杉上を返す狙い。



カーーーーーーンッ



「サードの頭上を越えるライナー!!長打コースだ!!」

「本城!急げ!杉上はもう二塁を蹴っている!」



エンドランなんて博打は不要。守備を崩さずとも、杉上の電光石火に等しい足は長打コースに打球が飛べば試合を決められる。快足のまま、ホームにまで駆け抜ける。



「ついに試合の均衡が破れた!!野尻のタイムリーツーベース!」

「杉上!速すぎだろ!!ようやく今、サードにボールの中継がいったところだぞ!エンドランじゃないのにあの足は反則だろ!」

「カッコイイー杉上くーん!」


長打を放った野尻もそうだが、まだ1アウトであるというのにホームに突っ込む決断力。相当な自信があることが分かるし、チームもそれを理解している。



「レフトが地花なら防げたかもしれませんね」

「可能性があるだけだがな。まともな守備をするレフトでこれじゃ、盗塁しなくてもホームに行かれる」



俺も含めた全員が盗塁をすると読んでいた。しかし、出していたサインは強攻か。確かに盗塁を警戒していれば投げる球は絞れる。神里のストレートはそこまで怖くない。

だが、先制点が欲しい場面で確率の低い得点の挙げ方。選手全員を信頼していなきゃ、できない攻撃パターンだ。これは勝負が決まったな。




阪東の予想通り。この一打で神里は崩れ去った。

1アウト2塁で強力クリーンナップ。動揺している投手からミスショットをする3人ではない。完璧に捉える。



「新潟、曽我部、魚住も続いたーー!5者連続安打!!」



さらに6番、パトリックにも安打が飛び出し、この回で4失点。神里はノックアウトされた。こちらも自慢の攻撃力で反撃したいところだが、7回まで上滋に良いように抑えられる。8回、ようやく疲れから見せたフォークの抜け球を、尾波が逃さずスタンドに放り込んだソロホームランで返すのが精一杯。

9回は辻という投手がマウンドに上がり、3アウトをとってゲームセット。


試合は5-1。シールバックの初黒星だ。



「良い勝ち方をされた」

「そ、そうですね。相手の持ち味を活かされました」


お互いリーグで争う攻撃的な打線であるが、その質はまったく違っていた。

こっちは長距離砲が多い。決まれば強力だが、空砲も多い。一方でカインは好打者揃いで足も速いという、機動力重視の攻撃打線。走者がこれほど怖くなる打線もないだろう。



「おまけに守備も向こうの方が上手だからな。攻略しようにも、向こうから崩れるとしたら投手が自滅してくれることだけ」



打線の質が違っている。このチームを相手に、これからどう戦っていくか。阪東は改めて思い考えさせられる。



そして、第三回戦。

2番を木野内。7番を日向に入れ替える阪東。

シールバックの先発は戸田。カインの先発はみつる。前、2試合と比べれば投手としての力量は低い。お互いに走者を出しながらの展開。


初回、河合のツーランで鮮やかに2得点を挙げる。しかし、3回表。カインの主砲、曽我部にも一発が飛び出し、1点差。

さらに4回表、1アウト2塁で打席に杉上。ようやく、綺麗なセンター返しを放って、追いつかれる。この後、さらに盗塁を決める。走者として戸田にプレッシャーをかけつつ、



「ああっ!ワイルドピッチだ!!」


戸田の得意なフォークがあらぬところにいき、これを河合が止められず、杉上が三塁まで進む。さらに野尻を四球で歩かせてしまう。



キーーーーーーンッ



3番、新潟。ボールを置きにいったその初球を一撃で仕留め、あっという間に三点差をつける。


「ば、阪東さん!良いようにやられてますよ!何か、何かないんですか!?」

「俺はドラえもんじゃない。これ以上は何もできない。監督のお前が騒ぐな」



同点にされたところで伝令を出し、間をとったが。やはりそれでも杉上の存在を気にしてしまった。現時点で分かった事は杉上を止める方法がないこと。


「打たれたら、打ち返す。それしかこのチームにはないんだ。知っているだろ?」


強気な言葉を使っても、果たしてそれが成立するかどうか。相手の先発、満は川北と似た典型的なイニングイーター。調子に乗ると球は良くなっていく。それと阪東は相手の守備陣を何度も確認していた。



ニール。外人捕手なのに言語の壁を感じさせない。河合よりも断然良いリードをする。向こうじゃ滅多にないことだから侮っていた。

セカンドの高崎の守備、旗野上と争えるほど広い守備範囲だ。これだけ内野が硬ければ投手の実力が低くても、精神的に追い詰めにくい。



6回裏。新藤が塁に出て、4番の河合。一発が出れば1点差に迫るが、結果は最悪の4,6,3のダブルプレイ。攻撃の流れをここで完全に失った。

7回表、ピンチを逸したカインは魚住のソロホームランが飛び出し、さらにリードを広げる。クリーンナップの3人が本塁打を放つという打線の厚さを見せ付ける。一方で、シールバックは河合の一発と、7回裏の友田のタイムリーで返すのが精一杯。



8-3。シールバックは成す統べなく、連敗。初カードを落としてしまった。



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