我が家にて
「ただいま。」
家の中に、僕の声が虚しく響いていた。
いつもならば。
抱いていた猫が「ミャー」と答えるように鳴いた。
「優、申し訳ないけど、こいつを風呂にいれてくるから、僕の部屋に行っててくれないか?」
「うん、わかった。先に勉強して、わかんないところ洗い出しておくね。」
風呂場についた瞬間に、猫が跳ねるようにして僕の腕の中から逃げる。
「逃げられると思うなよ?もう、戸も閉めてあるから、出られないぞ?」
脱衣所の戸をカリカリと削っていた猫を捕まえる。
「じゃあ、シャワー浴びて綺麗にしような。すぐ終わるから。」
イヤだとでも言うように、「ミャーミャー」と鳴くが、僕も放すつもりはない。
だが、猫が騒ぐ度に、僕の服は濡れていった。
猫が綺麗になった頃には、僕の服は水を猛烈に吸い上げ、ポタポタと水を落とす程になっていた。
「これなら、風呂に入った方が早いかもしれん…。でも、優の勉強みてやんなきゃダメだし…。」
とりあえず、と、僕は着ていた服を脱ぎ捨て、洗濯機の中にぶち込んだ。
ブルっと体が震える。
「ったく、真冬に裸とかキチガイだな…。」
僕もまた、シャワーを身体にかける。
熱いシャワーが、僕の身体を温める。
サッパリとした身体と猫を連れて、風呂場を出る。
猫と僕の身体を拭いて一息つく。
いくつか置いてあるスウェットの中から適当に手に取った。
僕は急いで、自分の部屋に行った。
優が待っているからだ。
コンコンと自分の部屋をノックする。
……………………。
部屋から返ってきたのは、沈黙だけだった。
「おい、優?入るぞ?」
ゆっくりと扉を開ける。
瞬間、目に入ったのは、なんの変哲もない我が部屋だった。
いや、良く見てみれば、違いはあった。
ベッドがこんもりと膨らんでいた。
読んでくれている方は、いるのでしょうか?いつか、誰かが見つけて下さると信じています。