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水戸部襲来

ピンポーンと家のチャイムが鳴った。

嫌な予感がした。


「はぁーい!どなたですかー?」


美佳がトタトタと玄関へと走る。

僕は美佳を止めようとした。

なぜかはわからないが、なぜかダメな気がした。

インターホンを僕はチラリと見る。


僕は玄関へと駆けた。

ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ…。


ガチャンとドアが開いた音がする。

美佳の声がしないのが気になる。


僕が玄関へたどり着くのと、誰かが倒れるのはほぼ同時だった。

そこに倒れたのは、やはり…。


「水戸部…?」


元カノ、水戸部 紗香だった。

倒れたのは、美佳が殴ったからだろう。

美佳は片手に持ったゴルフクラブでもう一度殴ろうと振り上げていた。


僕は美佳を抱き締める。

妹を殺人犯にしてしまいかねないのだ。


「あはは…。悠君は私を助けてくれるんだね。私ね、悠君に殴って貰おうと思ってきたんだ…。お父さんがしたコト、許されないコトだし、原因は私だし…。」


そっと、水戸部が立ち上がる。

プルプルと震えているのは、頭を殴られた痛みからだろうか?


「水戸部…?」


ユラリと水戸部が僕に近づく。

おでこからダラリと血を流していた。


「ねぇ、悠君。殴って?私を殴って、壊してよ。お父さんが貴方のお母さんにしたみたいに…。」


僕は美佳を放して、そっと押す。


「美佳、部屋に行ってて。少し、話さなきゃいけないんだ。」


美佳はフルフルと首を振る。

僕は美佳の手からゴルフクラブを受け取って美佳に笑いかける。


「少し出よう、水戸部。お前がいると美佳が耐えられない。」


ガシッと美佳が俺の腕をつかむ。


「お兄ちゃん。」


必死にフルフルと首を振る美佳を、そっと撫でる。


「悠君、その、名前で呼んで欲しいな。昔みたいに。」


僕はエプロンのポケットに入れておいたタオルで水戸部の顔を拭く。

さすがに、外に出るのに血が出ていたらマズイだろう。


「水戸部、行くぞ。」


エプロンを外して、玄関に置く。


「美佳、鍋を見ておいてくれ。沸騰したら、火を止めておいてくれればいいから。」


僕はそれだけ言うと、水戸部の手を引いて家を出る。

コイツはなぜ僕の家に尋ねて来たのだろう。


少し歩いて、刀矢と喧嘩した公園についた。


「水戸部、どうして来たんだ?」


僕はブランコへと腰をかける。

水戸部は立ったままだ。


「悠君、水戸部じゃなくて、紗香って呼んでよ。」


下を見たまま、水戸部が言う。

瞳に光がない気がする。


「僕は別れた以上、キチンとすべきだと思うから。だから、水戸部、何しに来たんだ?僕の家に来たら、下手をすれば死ぬかもしれないコトなんてわかってただろ?」


僕の身体に更なる重みが加わった。

水戸部が僕に突進してきた。


「ねぇ、悠君。私ね。今でも、悠君が好きなの。」


服が少しずつ濡れるのがわかる。


「好きで、好きで。大好きで。それに、貴方のお母さんを殺したのは私のお父さんで私じゃないじゃん。言い訳だってわかってるけど、それでも。私は、私は…。」


僕の身体がブランコから落ちる。

一緒に水戸部の身体も僕の上に落ちてくる。


水戸部の手が僕の顔を固定する。

クチャッと僕の唇が奪われる。

チュルリと舌が僕の口の中に入ってくる。

入ってきた舌は僕の舌に絡みつき、僕の歯茎を丁寧に舐め上げる。

水戸部が僕の唾液を吸い上げる。

僕の視界一杯に水戸部の目が見える。

綺麗な睫毛、サラリと落ちてきた髪が僕の頬や耳をくすぐる。

抵抗しようとするが、手が動かない。

いつの間にか、後ろ手に縛られていた。

やっと、唇が離れる。

ヌラヌラと光る唇に唾液が糸を引いていた。


「あのね、悠君。本当はね、家でこうするつもりだったの。でもね、妹さん、いたでしょ?だから、お外でいいから、貴方の子供が欲しいの。子供さえ出来れば、私はそれを支えに生きて行くから。だから、子種を頂戴?」


お腹の上に乗る水戸部の手が僕の股間へと伸びる。


「やめろ、水戸部。」


抵抗しようとするが、マウントが取られているために、どうしようもなかった。


「イヤよ。今日ね、危険日なの。今日したら、絶対に妊娠すると思うの。大丈夫よ。貴方には迷惑かけないわ。一人で育てて行くから。だから、ね?」


再度、唇が重なる。

今度はついばむようなキス。


真っ暗な瞳が、残酷な笑みが、最悪の状況を連想させる。


「ねぇ、悠君。もう、大きくなってるし、いいってコトでしょ?」


水戸部の手が僕の息子をさする度に、ビクビクと僕の身体が震える。


「悠君は、胸、好きでしょ?胸でしてあげよっか?でも、私のじゃ小さいかな。それに、初めてのは私の奥にだして?」


股間が弄られ、チャックがチリチリとゆっくり開いていく。


水戸部のもう片方の手は自分の股間へと伸びていた。

クチャクチャと音を立てていた。


もう、終わる。

そう思った。


しかし、唐突に終わりを迎えるコトになった。


ズルリと水戸部が横に倒れる。


「大丈夫か?」


見上げれば、刀矢の姿があった。

公園の端には優の姿もある。


「ありがとう。助かったよ。」


ホッと息をつく。

しかし、それどころではない。

ごろりと俺は地面を転がる。


「刀矢、この手のやつを外してくれ。」


刀矢が持っていたカッターナイフで留め具のような物を切ってくれた。

そして、横を見る。

そこには、気絶している水戸部がいる。

逆を見れば、優が呆然と立っていた。

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