猫との出会い
「暇だ。」
僕の口が言葉を紡いだ。
何かしたいわけではない。
しかし、何かをしなければならない気がする。
数分の間、僕は思考を巡らせた。
「出かけよう。」
どこに?
どこかに。
とりあえず、上着を羽織り、冬へと急降下している季節の中を歩き出した。
もう少し暖かい上着を着てくれば良かったとすぐに後悔したが、面倒くさいので家には帰らなかった。
「仕方がない。カイロでも買おう。」
少し前までは、僕はこんな風ではなかった。
半年前、彼女ができた。
半年前、幼馴染を泣かせた。
半年前、親友と喧嘩した。
半年前、母が死んだ。
半年前、母の後を父が追いかけた。
半年前、妹が自殺をはかった。
半年前、半年前、半年前...。
半年前に全てが変わった。
親友は他者という漢字に変わり果てたし。幼馴染とは会話すらしなくなった。妹はもう家にはおらず、病院で厄介になっていた。
彼女とはその後に、すぐに別れた。
俺がフった。
ふと、公園に足を止めた。
足下でミィーミィーと泣いている子猫に自分を重ねた。
「お前も、一人なのか?
少し待ってろ。今、餌を買って来てやるから。」
すぐ近くのコンビニへと足を向けた。
コンビニの中は、少しばかり混んでいた。
餌とカイロとホットドリンクをもって、僕はレジに並んだ。
前に並んでいたのは、幼馴染だった。
だが、僕からは話しかけない。
話しかける理由も無ければ、話しかけたところで、話が弾む筈がないのだ。
しかし、幼馴染は僕に気付いた。
「カイロと飲み物と餌?餌は何に使うの?」
幼馴染は心底疑問そうだった。
「お前は、餌を買ったとしたら何に使うんだ?自分で食べるのか?」
自分でも、嫌な奴だと思った。
昔はこんな風にコイツを貶しはしなかった。
でも、あの日から俺は変わり、コイツは俺を受け容れなかった。
「そうだよね...。猫、飼い始めたの?見てみたいなぁー。」
コイツにあの時の事を後悔しているか?と聞けば、後悔していると答えるだろう。
「見たいなら、ペットショップにでも行け。そこなら、お前の大好きな猫がわんさかいるぞ。」
コイツも、今では僕を受け容れようとしている。あの時の事を清算しはじめている。
しかし、僕は許さなかった。
「ごめん、あの日の事怒ってる?」
あの日の出来事、それが僕の人生を変えた一端であると、僕もコイツも思っていた。
だからどうだというわけでもない。
「怒ってるのかもしれないし、怒っていないのかもしれない。僕にはわからないんだ。僕自身がどう思っているのかを。」
僕の初恋はコイツで、コイツの初恋は僕であった。これは、コイツから聞いたので間違いないだろう。
話しているうちに、僕もコイツもレジを済ませていた。
「そういえば…、猫、見たいならついて来い。公園で捨てられてたから、拾おうかと思ったんだ。」
僕の口から出た言葉は、優しかった。
怒っていると言われたからではない。多分、自分もまた、一歩踏み出したかったのだ。
コイツの隣へと。
気付けば雪が降っていた。
以降のこの作品の投稿は、遅いかもしれません…。週に一度は、投稿…したいなぁ。遅くても…見捨てないで、待っててくれると嬉しいです…。
まだ、一話目だけどね!!