[第二話]依頼:落とし物探し
今回、私達の所へ来たのは、一人の看護婦さん。
名前を林さんと名乗りました
「私は虹目です」
「俺、積。」
【こんにちは、私は澄川 玲奈です。私がリーダーみたいなものかな】
↑メモ帳を使ってます。定型文Ver.の中から選んだのだけれど
他人と話す時は見やすさ重視でメモ帳を使ってます。
白ページを2冊と、定型文の書かれた1冊を使い分けてます。
「あの……言葉を話さないんですか?」
【声が出ないので】
このやりとりは、もはや定番。私、飽きました
本題に入る前に、揃子は言いました
「いくら病院から近いからって、ナース服のまま来るのはどうかと思うの……」
同感です、なんでもない建物に入って行くナース服の人が
どれだけ目立つのか分かってるの……?
「そこまで気が回らなくて………話、聞いてくれます?」
職業上のスキルなのか、穏やかな表情で話しているけど、
内心はよほど焦っているのでしょうね 想像にすぎないですが
【いいですよ、私達もできる限り力になります。できる限りですけど】
「ありがとうございます」
そう言うと、林さんはさっそく本題を切り出す
「簡単に言いますと、私がお願いしたいことは……探し物です」
病院から来て依頼が探し物とは、あまり予想してませんでした
「探し物、なのか……?」
「探し物、ですか?」
【もう少し詳しい話を聞かせて下さい】
「はい。……探してほしい物は、お客様が落とした指輪です。
できれば今日中に見つけていただきたい」
本題に入ったところで、ようやく口調に焦りが感じられるようになってきた
【できれば今日中、というのは? どうやら少し焦っているようですけど】
このセリフ(書)で、林さんは少し悲しげな表情も見せた
「お客様が、今日中に見つけるよう、強く言ってきましたから……」
そして林さんの口調に、だんだんと自虐の色が見えてくる
「お恥ずかしい話、お客様がそのように言うのは、私にも原因があったのです。
指輪を失くす前、お客様は、私と私の同僚が会話しているのを聞いたらしいの
ですが、その会話内容が、私達が指輪を盗んだと疑うに充分なものだったのです…」
林さんは一旦言葉を切る。揃子は苦笑いしました
「あちゃー……仕事中に雑談なんかしてるからそうなるのよぉ……
差支えなければ、問題の会話内容、聞いていいですか?」
「……あなた達には話しても大丈夫でしょう。
同僚の一人が先日結婚しまして、そのことをネタについ
話がはずんでしまいまして…」
「おお、めでたい話じゃないか」
ナズマが一旦話をさえぎったけど、林さんは話を続けました
「それで、私の同僚が言った内容がまずくて……
うばいとってでも結婚指輪を手にしたいと……」
そして少しの間、沈黙がありました
「うわ……ビックリするほど状況に合ってやがるな」
「でもその文脈だと、奪うのは指輪じゃなくて………
そんなことはさすがに話せないでしょうね……」
【口は災いの元と言うけど、祝い話で不幸を呼び寄せるとは……】
……ちょっと空気が重くなってしまいましたね
「そういう訳でして……お恥ずかしい限りです……」
ガラガラ…
帽子さんがお茶を持って入って来ました
「まあまあ、お茶でもゆっくり飲んでください」
そう言って林さんにお茶を渡しつつ、気づかれないように
声を出さず私達に話しました
『お客さんにお茶くらいは出しましょうよ』
『そうですね、次からはそうしますか』
私も声を出さずに帽子さんに返事をしました