賢者たちのファンタジア 〜教師と教え子〜
『長く生きたら賢者に成れる』
そんな世界ならば
言葉で誰かを救えただろうか?
憧れた教師というジョブには
『おしえる』コマンドはなく
小鹿のように震える教え子ひとり
救えなかったな
…指先に宿る『やすらぎの風』なんて
ただの幻
幼い頃のファンタジア
なんとなくオトナになって
なんとなく仕事をこなして
嫌なことは回避して
ごはんはなるべく食べて
ベッドで就寝しても
回復なんてしなくて
時計の針を睨んでは
四角い液晶の前で誰かへの呪詛をばら撒く
イジメなんて無かった
私は何も見なかった
無難にやり過ごしていこう
教師なんて
魔法も、本で攻撃も
放つことは出来ないのだよ
言葉や生き方で人の心を動かすなんて
とんだ勘違いのファンタジア
そうだ
夢や希望なんて
はじめから無かった
だから
おしえなくていい
無くせばいい
決めた次の昼
1人で空想を語る教え子に放つ
「だから独りに成るのだ」
『想像することはむなしい、非効率だ。
今だけを見て歩け』
本を取り上げようとした手を
教え子は何も言わずに叩いた
…そんな真っ直ぐに見るな
私は教師だ、魔王じゃない
「惨めになるだろ」
諦めない瞳をねじ伏せたくなる
現実を見ろと、殴りたくなる
…それでもああ、君はそうだね
バカだから、潰したくなる
周りもそんなとこだろう
この苦しみを君は知らないんだな
わかるよ
気持ちいいもんな
正義のヒーローは
「…長く生きたら賢者に成れると思うかい?」
問いかけて
本を守る教え子の
頭を──
そっと撫でた
「頼りない先生で、ごめんな」
困った顔をするな
惨めすぎて涙が止まらない
あんなに欲しかった
憧れのファンタジア
失ってしまったかなしみを
君に託すことは出来なくて
脈打つこの悔しさは
言葉以上のぬくもりに変わるだろうか
…指先に宿る『やすらぎの風』なんて
ただの幻
幼い頃のファンタジア
『長く生きたら賢者に成れる』
そんな世界ならば
言葉で誰かを救えただろうか?
解らない
…解らない
悩めるオトナに
教え子は放った
「自分の言葉を信じてあげられる人は、
みんな賢者だと思います。
僕のために泣いてくれてありがとう」
優しい言葉
答えはそうか
君が持っていたんだね
未来の賢者はだいぶ真っ直ぐで
折れてしまいそうだから
オトナのずる賢さを
コソッと『おしえる』
君は、私のコマンドに満面の笑みを返してくれた
その日から取り戻した
私のファンタジア
自分の言葉を信じ、賢く『おしえる』
それが、今の私にできること
私にだってある
優しい囁きが
誰にだってある
優しい風を
起こすのだ
…起こすのだ!
最後までお読みくださりありがとうございます。
おふざけもシリアスも、どの詩も本気で書いています。
興味が湧きましたらシリーズから辿って読んでくださいね!(もちろん読んでくれるだけで嬉しいです!!!)




