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幽霊が見えるからって慣れてるわけじゃない!! 2  ~進み始めるもの~  作者: 武 頼庵(藤谷 K介)


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第1話 番組とユーツベ

本編スタート





 数え切れないほどの人々の生活の後に、今の自分達の生活が成り立っている。

 当たり前に今の便利な生活を送っているけど、それ以前はほんとうに不便な生活をしいられていたわけで――。


 箔の高さで生活環境が変わるのは当たり前、医療なんて高額過ぎて普通に暮らしているだけじゃ一生――いや、一生どころか自分たちの子供や孫、その先の子孫たちですらまともに受けることが出来ない世界。


 そもそもが高位医療技術じゃないのだから、稀にそれらを受信できたとして、いったいどれほどの人達がその恩恵にあずかることが出来たのか――。



 ようやく医学が進歩をし始め、現在では安心して受信できる世界線に立っている自分達でさえも、未知の病と隣併せに生きている今、()()()()の事を思うと、どうしようも無かったのかもしれない。


 いつでも人を想う、子供を想うという心は変わらない。

 いや……。むしろその頃の方が……。





 冬の寒さがようやく体にも慣れ始めて来たこの頃ではあるが、実の所子供の頃程現在は雪が降り積もるということが無くなって久しい。積もっても1メートルも積もる事が無く、毎日雪片しをしないと玄関から先に進むことが出来ないなんて事は無い。


 それでも寒い事は寒い。小さい頃のように雪が積もってはしゃぎまわるなんて無くなってしまっているが、今でも雪が深々と降ってくるところを静かに見ているのは好きだ。


「お義兄(にい)ちゃん?」

「ん? どうした?」


 自宅のリビングで窓のそばに立ち、静かに降り続いている雪を何もぼぉ~っと眺めていると、後ろから静かに近づいて来ていた伊織に声を掛けられ、ハッとなりつつもその声の方へと顔を向ける。



「ようやく決まったって連絡が来たよ」

「決まった? 何の?」

「もう!! 忘れてるでしょ? カレンさんと話をしたでしょう?」

「え? あれって冗談じゃなかったのか?」

「冗談で、あのアイドル日比野カレンが誘ってくるはずないじゃない。もう。しっかりしてよ。お正月は一月前に終わってるんだよ?」

「いやいや正月気分が抜けて無い訳じゃないぞ?」

「まぁいいけど。じゃぁカレンさんからの連絡事項を伝えるからね」

 少しだけ頬を膨らます伊織の頭を一撫でしてやると、キッと俺の事を見あげながらも流し目で見てくる伊織だが、「はぁ~」と大きなため息を一つ吐くと自分のスマホの画面をタップして、画面の内容を俺に話し始めた。




 大社にて研究会メンバーと共に柏木様の周囲を片づけたあの日から既に数か月の時間が経ち、その間に正月などの行事も入った事で俺はすっかりあの後にカレンから話を振られていたことを失念していた。


 雪が降り積もるので、大社に行けなくなったとはいえ、伊織は毎週末には婆ちゃんの所へ行っていたし、それに時々俺もお供していた。


 そして正月には巫女としての御勤めをしなければならず、あの日暮さんの所で来た巫女衣装ではない、巫家の伝統衣装を身に纏い、所作を習いつつその業務を全うする伊織の姿は――。


なんというか小さい頃に見ていた婆ちゃんの姿を思い出すというか、凛としたその顔を見ると、どこか現実ではない様な感覚がするというか、自分でもよく分からない状態となってしまうので、俺は俺で爺ちゃん達男衆に交じり、正月から祈祷などをお願いしてきてくださる方々に向け、お餅などを用意する作業を手伝う。


――どうしても日暮さんの所で巫女になった伊織は、ちょっと背伸びした女の子だったというか、コスプレした感じがして、微笑ましいという感じが強かった気がするけど、今回の巫女姿は……。


 時折その姿を思い出して、独り頭を左右に振り脳裏に浮かんだそのイメージを振り払う。


 そういう事を毎日の様に続けていると、正月なんてあっという間に過ぎていってしまう。


 それまで、昨年までの正月は父さんも義母(かあ)さんも休日出勤や、休日当番医になっていたりと、家の中には伊織と二人しかいない正月を過ごす事が当たり前になっていて、こうして多くの人達が周囲に居る中で過ごす正月は初めての事。


 特に今年は婆ちゃんの声掛けによって、元柏木様の村の人達にも伊織という『新たな柏木様』の存在が公開宣言されたものだから、数年――いや、もしかしたら十数年ぶりかもしれない新たな導き手の存在を一目でも見たい、目に焼き付けておきたいと、巫家は正月になる前から人達の襲来が絶えず、1週間という約束で手伝った俺たち二人は、毎日へとへとになって布団へと潜り、気が付くと既に朝という日を繰り返した。


――いや、まぁ手伝った分はしっかりと『バイト代』として手元に頂いたのでそれはそれでおいしかったからいいのだけど……。





 とまぁ、俺がカレンの話を忘れていた理由をというか言い訳をしてみたところで、忘れてしまっていた事実は変わらないのだから、伊織に呆れられても仕方がない。


「え? もうすぐじゃないか」

「うん。来週は準備しないといけないね」

「はぁ……。また先生に休むこと言わなくちゃいけないのかぁ……」

「え? でも平先生なら大体の事情を察してくれるんじゃないかしら?」

「あんまりそういう事に察しが良くなってもらわれても困る」

「……確かにそうかも?」

「だろ?」

 はぁ~っと大きくため息をつくが、決まってしまったという事ならば仕方がない。今回は直前での連絡じゃない事だけは良しとして、学校へと行ったらすぐに先生の所へ向かおうと決意し、俺はまた窓の外、静かに降り続く雪を静かに眺め始める。


 そんな俺の隣で、離れていく事も無く伊織もまた同じように窓の外を眺めていた。




 二十四節季(※1)では既に『春』という事になってはいるけど、現実的には2月の初めである。


 雪が降り積もる地方では春になったという様な季節を感じる事はできないのだが、行事は行事として行われる。豆まき事『節分』もまたその行事の一つだが、俺はというと、隣りに伊織、その隣にカレンというフォーメーションで車の後部座席へと座っており、既に2時間もの間、カレンのマネージャーである水野優紀さん運転の車に揺られている。


「はぁ……」

「なにため息ついてんのよ?」

「いやだってさ……」

「お義兄ちゃんここまで来ちゃったら諦めるしかないと思う」

「いやまぁそうなんだろうけど……」

「なに? このアイドルカレン様の出る番組に何か文句でもあるの?」

「ないない。天下のアイドルカレン様には全く、これっぽっちも文句はないない」

 手を左右に振って、カレンの言葉に反論する。


「じゃぁ何が気に入らないのよ?」

「番組? というか……」

「???」

「カレンが全く分からないという風に頭を傾げる。


「今回の番組ってさ。要は『本当に居るのか検証』みたいなものなんだろ?」

「そうよ? 確か……町の中に小さな女の子が出るとか何とか……」

「それにどうして俺達の動向が必要なんだ?」

「それはね――」

「それは私の方から説明するわ。カレン」

 カレンが説明をしようとすると、水野さんがバックミラー越しに俺達へと視線を向けつつ話しかけてくる。


「今夏の番組はね、()()()の事を考えられて、通常のテレビ放送版と、そのテレビ番組公式のユーツベっていう動画コンテンツ版を作成することになっているのよ。ユーツベは知ってるかしら?」

「えぇまぁ一応、情報を調べたり収拾する時に見たりはしてますね」

 俺の隣で伊織も何故かカレンもウンウンと頷く。


「そう。なら話は早いわね。テレビってね、真司君や伊織ちゃんが思っているほど華やかな世界ってわけじゃなくて、色々な柵がある中で制作されて皆様の眼に映るようになっているのね。で、テレビでは今現在はかなりコンプライアンスっていうめんどうくさいものが重視されていて、説明できないものや、現実的では無いものなんかはご法度なのよ」

「そうなのよ!! 本当にメンドクサイの!!」

フンスと鼻息が聞こえるくらい、カレンが声を上げて憤る。水野さんもそんなカレンの姿に苦笑いをしつつも、更に俺達に視線を向けると、説明の続きを話し始める。


「で、そんなところにコンプライアンスを気にしないで好きなように映像を皆様に提供できるコンテンツがあるのなら、そちらにも出す方が見てくださる方も増える可能性があるでしょう? だから今回は二つの政策が同時に行われるのよ」

「そうなんですね。まぁテレビってCMとかのスポンサーが有って成り立ってますからね。いう事をある程度は聞かないと――という事は何となくですけど理解できます」

「それが良い方に繋がるとは限らないけどね……」

 水野さんがまた苦笑する。


「今回はその二つを同時進行で制作するために、カメラの数も多く用意されているし、画面映えするようにって出演者も割と名が通っている方達が出演するのね。前からこの番組は通称『アイドル枠』っていうのが有って、その時々の旬なアイドルがでることが多いんだけど、今回はウチの会社にオファーが来たのよ」

「へぇ~それは凄い……んですよね?」

「どうかしらね……」

「と、いうと?」

「ウチは確かに大手とは言えないけど、それなりに所属するタレント数も多いし、バラエティーが得意としている子もいるのよね。でも……」

「でも?」

「今回はセカストのカレンにとオファーが来たのよ」

「でもよくある事ですよね?」

 水野さんの声が少しだけ困惑しているようなニュアンスのアクセントに聞こえた俺は、今迄もあったでしょう? というような意味合いで返事を返した。


「あるにはあるけど……。今回はウチの会社がある意味でマークしている子も出るのよ」

椚兜太(くぬぎとうた)ね!!」

「椚?」

「椚……兜太……あれ? この人って……」

 カレンがそのマークしているという人の名を出すと、伊織がすぐにスマホでその人の事を検索し始め、ちょっとだけ顔を曇らせた。


「……あまり良いうわさを聞かない子なのよね……」

 水野さんの声色が格段と下がる。



「『椚兜太、23歳。男性俳優。新人賞を受賞後色々なテレビドラマ、映画に出演。その演技力には定評がある。近年は音楽活動も開始し、彼が加入しているグループの『デンジャラス ウェイ』通称『デンウェイ』は若い女子を中心にトレンドに乗るほどの人気を博す』って書いてありますが……」

「どうした?」

 伊織がその椚の事が書かれている記事を読みつつ、更に怪訝な表情をした。


「かなり問題児のようですね」

「問題児?」

「ほっっっっっんとうに!! 女好きで有名なのよ!!」

「女好きって……まさか……」

 水野さんが暗い表情のまま俺達に視線を向け無言のままで運転をする。


「カレンか……」

「かもしれない!!」

「かもしれないってお前……」

「だって分からないでしょう? この番組に出る女の子って私だけじゃないし……」

「それはそうだけど。でももしそうだとすると良くこのオファーを受けたな」

「そりゃぁだって……許せないじゃないそんな奴。だから私が正体を暴いてやろうかと思って」

「そらまた無茶な事を……」

 俺が大きなため息をつきつつも、それならば――という考えがふと浮かんだ。



「それと俺達と何か関係があるのか?」

「ありありの大ありなのよ。コイツ、()()()らしいのよ」

「視える……ねぇ……。でもそれなら今回の検証はその椚って人だけでいいんじゃ?」

「そうね。もしも()()()()……ね」

「まさか……俺に()()()()をしろって事じゃないよな?」

「さぁ? どうかしらね」

 フフフっと笑うカレン。




 俺達が乗る車は、雪が降り続く道をゆっくりとでも確実に走り続けて


お読みいただいた皆様に感謝を!!


 幽慣れの続編を開始します。

 ほかのこともあるのでのんびり進行ですが、楽しんでいただけたら嬉しいな(*^-^*)

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