国民基盤役務制度 設定資料集
この度は、拙作『国民基盤役務制度』をお読みいただき、誠にありがとうございます。
本作の舞台となった2025年から2046年に至る世界を、より深くお楽しみいただくための設定資料集です。
1. 制度概要:国民基盤役務制度(略称:NBSS National Basic Service System)
物語の根幹をなす社会システム。時期によってその性質が大きく異なります。
- ① 2025年・研究所原案(本来の制度)
- 立案: 令和総力戦研究所(有馬、奥田ら)
- 目的: 少子高齢化と財政破綻による「緩やかな衰退」の克服。
- 内容: 年金・生活保護を廃止し、国家が国民に「尊厳ある働く機会」を保障する。
- 参加: 任意(自由意志)。国民が「行使可能な権利」として設計されていた。
- ② 2037年・占領期(経綸計画)
- 導入: 東亜連邦(日本の原案をコピーし、2027年に自国で導入したものを日本に逆輸入して導入)
- 目的: 震災復興支援の名目による、日本の労働力の完全な管理・支配。
- 内容: 東亜連邦が日本の労働力を管理し、インフラ復旧などに充てる。
- 参加: 強制(義務)。震災被害に対応するため国民投票により僅差で導入後、日本国民に選択の余地はなかった。
- ③ 2042年以降・独立後(体制)
- 導入: 有馬征四郎政権
- 目的: 国家の再建、軍備の再編、そして社会秩序の恒久的な維持。
- 内容: 「経綸計画」の強制モデルをそのまま引き継ぎ、AI(奥田怜奈のシステム)によって国民の適性・才能をデータベース化。労働力、ひいては兵力(国防役務)として最適配置する。
- 参加: 強制(義務)。最終的に2046年の国民投票で国民自身の圧倒的賛成で「追認」され、体制として確立した。
【補足:民間企業と市民生活について】
②、③の場合でも、民間企業は存在しています。そして、役務制度以上の給料を求めて民間企業で働く人々の方が多数を占めています。しかし、失業した場合や国が求めた場合(国防役務等)は義務的に役務への参加が要求されます。②の場合は震災の影響で民間企業の活動が低下したため、役務参加者が増加しました。ユウトのように、すでに定年も近いため、震災後もそのまま役務を続けている人々もそれなりに居ます。また、震災時代の名残か、役務参加者には配給などもあるようです。
②、③の場合には、教育や進路の最適化も進めています。人口減少下で基盤役務に必要な人員を確保する必要があるためです。そのことが、若者の反発を呼ぶ部分でもありました。また、根本的な少子化問題解決のため、子育てにも役務としての報酬が支給されます。
2. 主要時系列
2025年
「国民基盤役務制度」PDFがネットに流出。政治スキャンダルとなり頓挫。 奥田怜奈、東亜連邦へもデータを意図的にリーク。
2027年
東亜連邦、「経綸計画」として同制度を導入。国力を急速に増強。
2037年
南海トラフ巨大地震発生。日本は壊滅状態に。
東亜連邦、人道支援の名目で日本に「経綸計画」を導入。事実上の占領統治が開始。
2038年
有馬征四郎、東亜連邦の傀儡として首相に就任。奥田怜奈を確保し、『明石計画』を始動。
2039年
列車転覆事件(有馬による謀略)。佐藤ユウトが指名手配され、独立派へ。
新国鉄・大村総裁謀殺。有馬、鉄道網を完全掌握。
2040年
市ヶ谷クーデター(倉田陸佐)。有馬、これを鎮圧し自衛隊を完全掌握(浄化)。
2041年
「タチバナ研究所」汚職リーク(有馬による情報操作)。 第二次朝鮮戦争勃発。日本は東亜連邦の兵站基地としてフル稼働。
2042年
台湾侵攻勃発。
有馬、『撃発(明石計画)』を発動。東亜連邦の主力部隊を無力化。
有馬、日本の独立を宣言。「国防役務」を発動。
東亜連邦の核恫喝に対し、合衆国の「核の傘」を外交ブラフで引き出す。
2045年
「灰色の豊穣」時代。有馬、体制の是非を問う国民投票の実施を告示。
2046年
国民投票の3日前、有馬征四郎、暗殺される。
後継の白洲二郎政権下で国民投票が実施され、「国民基盤役務制度」の継続が圧倒的多数(賛成92.1%)で可決。体制が確立する。
3. 主要登場人物
- 有馬 征四郎
本作の設計者にして「灰色の宰相」。元財務事務次官。日本の「生存」のため、謀略の限りを尽くし、自らの名誉さえ「盾」として使い捨てた冷徹な合理主義者。独立を達成するが、国民投票直前に暗殺される。
- 奥田 怜奈
天才データサイエンティスト。有馬の「剣」。日本の自滅を回避するため東亜連邦に情報をリーク。有馬政権下でAIシステムを構築し、『明石計画』を実行する。独立後は「国民基盤役務体制」そのものを管理する、国家中枢の歯車となる。
- 佐藤 ユウト
本作の視点人物の一人。平凡なフリーランスだったが、流出したPDFを発見した。有馬の謀略の「贄」としてテロリストに仕立て上げられ、独立派に合流。台湾防衛戦を生き延び、独立後は体制下のデータセンターで「正常」に機能する一市民となる。
- 飯田 熊治
元陸自・特殊作戦群出身。「令和総力戦研究所」の元メンバー。有馬の体制に反発し、抵抗組織「独立派」を率いた「バグ」。独立後は、新国軍の「特別顧問」として体制に組み込まれる。
- 湯川 道彦
元厚労省官僚。「令和総力戦研究所」の元メンバー。理想を求め合衆国へ亡命するが、米国の「駒」として利用される。最終的には有馬の代理人として、日米交渉を担うことになる。
- 白洲 二郎
有馬の腹心であり、後継者。官房長官として有馬の謀略を忠実に実行。有馬の死後、その「遺志」を利用して国民投票を圧勝に導き、「国民基盤役務体制」を継承する。激務の合間を縫って、ラーメンジロー永田町店に出没するという目撃情報がある。
- 東山 史郎
歴史学者。「令和総力戦研究所」の元メンバー。物語の語り部の一人であり、有馬体制の記録者。体制の是非について、最後まで問い続けた。
4. 重要用語・計画
- 令和総力戦研究所
2025年、日本の「生存」のための唯一解を導き出すために設立された極秘シンクタンク。
- 明石計画
有馬と奥田怜奈が推進した、日本独立のための非対称戦争計画。コードネームは日露戦争でロシアを内部攪乱した諜報員「明石元二郎」に由来する。
- タチバナ総合科学研究所
『明石計画』の核心。表向きは有馬の「汚職利権」のための全固体電池工場。その実態は、奥田怜奈が「国民役務」データベースで日本中の天才技術者を集め、「ナノアンテナ内蔵型バッテリーセル(=遠隔起爆信管)」を製造させた兵器工場。 ※技術補足: 通常時は極めて高性能な民生用バッテリーとして機能するが、特定の暗号化周波数を受信するとナノ素材が絶縁破壊を起こし、高密度のエネルギーを一気に開放して爆発する。
- 撃発
『明石計画』の発動コード。奥田怜奈が衛星経由でキルシグナルを送信し、東亜連邦軍の兵器を一斉に機能不全・爆発させた。
- 灰色の豊穣
独立後(2046年)の日本社会の比喩。国民は飢えや失業、インフラ崩壊の恐怖からは解放された(豊穣)が、その代償として、AIシステムに人生の全てを管理される、自由も色彩もない(灰色)社会。
- 国防役務
独立と同時に発動された、事実上の徴兵制。「国民基盤役務制度」の一環として、適格な国民を新国軍の兵士として徴集する。
- 懲罰役務
体制への反逆者やその家族に課せられる、過酷な強制労働(原発廃炉作業など)。真相は不明だが、有馬暗殺の犯人の動機となったとされる。
「国民基盤役務制度」と表裏一体の物語、「不良債権世代」を連載しています。こちらもぜひご覧ください。
「続編1 不良債権世代」投稿済 こちらは、個人レベルの少子高齢化対策を書いた作品となります。
https://ncode.syosetu.com/n3962li/
「続編2 ????」投稿予定
https://ncode.syosetu.com/n2120lj/




