02-繰り返しの内側
昼休みの教室。
机に突っ伏したままの白石拓海が、
誰にも干渉されずにその空間に溶けていた。
俺は紙パックのコーヒー牛乳を手にして、
一瞬だけ迷って──
そっと、あいつの机の上に置いた。
「……なんか、甘いもんでも飲んどけよ」
自分でも驚くほど、自然に言葉が出た。
別に理由なんてなかった。
でも──ほんの少しだけ、“孤独に気づいている奴”に見えたんだ。
あいつが顔を上げる。
目が合う直前、俺はもう席に戻っていた。
「お前、第一希望どこにした?」
誰かが言う。
「適当」
誰かが笑う。
──その流れ、昨日も見た。
その前も、きっと見た。
本当は“会話”じゃない。
これは“再生”だ。
決められたタイミングで、決められた言葉を、
決められたキャラが口にしてるだけ。
(じゃあ俺は……?)
あいつに話しかけたのは、
シナリオか? ノイズか?
俺にもわからなかった。
ただ、あの一瞬だけ“繰り返し”が止まった気がした。
放課後。
拓海と歩く帰り道。
いつもと同じ雑踏。
いつもと同じ空気。
だけど、歩幅も呼吸も自然と合う不思議。
俺たちはまだ、“同じリズム”の中にいた。
でも、俺の耳には、
すでに別のテンポが聞こえ始めていた。
──世界の外から届く、微かなノイズ。